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東京地裁・渡辺教授裁判の期日決定までの経緯について
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2009年12月16日 |
浅野文春裁判支援会事務局より、先にお知らせした東京地裁・渡辺教授裁判の期日決定までの経緯について詳しくお知らせいたします。
●渡辺教授裁判で、東京地裁が京都への移送申立を却下
第1回期日は来年1月18日午前11時
浅野教授が9月2日、文春記事に一人四役で登場した「キーパーソン」の渡辺武達教授を相手取り、3850万円の損害賠償を求め東京地裁(民事第7部、山崎勉裁判長)に起こした訴訟(以下、渡辺裁判)で、第1回期日は来年2010年1月18日(月)午前11時から東京地裁民事7部準備室(ラウンドテーブル)で、弁論準備手続(電話会議)として行われることが決まりました。
公開の法廷ではなく準備室で行われる理由は、被告側への負担を考慮し、電話会議を裁判所が選択したものと言えるでしょう。というのは、@もともと後記のとおり、被告の渡辺教授は京都地裁への移送を求めて争っており、A東京地裁はそれを退けたものの、遠方であることからくる代理人への負担は、電話会議を活用すれば軽減できるという言及もしていたので、Bこれを受けて恐らくは代理人である京都総合法律事務所の池上哲郎、拾井美香両弁護士側から地裁に対し、第1回期日については口頭弁論ではなく、弁論準備手続にしたいとの要請があり、C裁判所も上記理由を挙げていた以上はそれを受け入れたものだと思われるからです。
今回、原告の浅野教授側は地裁の判断に従いますが、民事裁判も公開が原則であり、上記のような移送を巡る事情からとはいえ、結果的に傍聴人が排斥される(正確に言うと、裁判所が許可した者だけとなり、実際の運用としては当事者に準じる事件関係者に制限されてしまうのが実情)点が気になります。対渡辺裁判も文春裁判と同様に、浅野教授を支援する人々が傍聴して、「メディア学者が“セクハラ”をでっちあげ悪徳メディアを利用した罪(sin)を社会的に究明する場としたい」と考えているからです。
●墓穴を掘った移送申立の理由説明
渡辺裁判の第1回期日は、当初、10月26日(月)午前10時15分から東京地裁で行われる予定でした。しかし、地裁が被告である渡辺教授の都内の住所に送った訴状が9月19日まで「不在」(郵便局から通知票が投函されたはずで、この間、ずっと不在だったどうかは不明)のため送達できなかったことが分かり、改めて、地裁は大学の研究室宛に送付しました。訴状は9月23日ごろ、被告の下に届いたようです。
被告・渡辺教授側は、10月8日付で、「移送申立書」を東京地裁に提出し、東京地裁から京都地裁への裁判所変更を求めました。この申立書で、渡辺側の代理人弁護士が池上、拾井両弁護士であることが分かりました。池上弁護士は渡辺教授の対週刊新潮AV訴訟(渡辺教授の完全敗訴が確定)の代理人を務めている弁護士で、現在京都弁護士会副会長です。
渡辺教授側はこの「移送申立書」で、「不法行為」のほとんどが京都で行われたと主張し、同志社大学ホームページからプリントアウトしたキャンパス地図まで添付していました。
これに対し、原告である浅野教授と代理人である弘中惇一郎弁護士らは10月16日に「移送申立てに対する意見書」を東京地裁に提出し、@被告が行った不法行為の中心は文春への情報提供であり、文春は東京に所在するA被告は東京でも活動しているB原告弁護団7人のうち5人は東京在住であること等を主張し、東京地裁での審理が適当だと反論しました。
この原告側「意見書」に対し、被告側は10月20日、「反論書」を提出して、原告をセクハラ加害者と繰り返し非難しました。渡辺教授は反論書の中で、次のような驚くべき主張を展開しました。
《本訴状記載のとおり、原告主張の第2(文春記事コピーの学内配布)乃至第8(原告に関する誹謗中傷メールの送信)の不法行為は京都市内で行われており》《原告も自認するとおり、その他被告を含む関係者への取材はいずれも同志社大学内で行われている》《第2乃至第8の不法行為の関係者は、いずれも同志社大学の教員、学生である》というように、自身が文春と組んで浅野教授に攻撃を加え、その場所が同志社大学であった事実を認めているところです。「原告が不法行為と主張している行為」とは書かずに、単に「不法行為」と書いていることは被告が自らの行為の不法、不当性を認めているも同然のように読めます。
被告側は《文春裁判おいて[注:「文春裁判において」の誤記と思われる]、すでに訴外文藝春秋の記者に対し取材経過等に関する尋問がなされており》《文春裁判で証人になっていないセクハラ・アカハラ被害者の尋問申請も予定しているが、これらの者はいずれも京都市内又はその近郊に居住している》と主張しました。
被告側は反論書で、浅野教授が担当するゼミの開講日のことなどについてとんでもないウソを書いています。《メディア学科教員8名のうち・・・5名が火・水・木曜日に講義とゼミを行っており、これは過去20年以上の慣行》と主張し、金曜日に1・2回生ゼミを開講している浅野教授を《教育的配慮を欠く》《原告の独断的措置》などと虚偽の主張を展開することで批判しています。
03年ごろから、学部全体でゼミを同日時間帯に行う必要性はないという大学教務当局からの指導があり、メディア学専攻・学科の会議で議論を重ねて、ゼミを異なる曜日と時間に行うことができると決定しています。浅野教授のゼミの開講日は専攻・学科会議で承認されており、渡辺教授が異義を唱えたことは一度もありません。
浅野教授は、大学教務や学生などからの要請に応じ、ゼミ希望の学生(1年生は学籍番号で振り分け、2年生以上のゼミは希望選択性)とも相談して、09年度においては1・2年生のゼミの実施日を「金曜日2・1限」に変更したのであり、「自己の都合で」変更したのではありません。専攻・学科会議でも満場一致で承認されました。
また、被告の「反論書」にある《原告のゼミに所属する学生は、講義がない日も登校しなければならず、同学年生との交流も困難で教育的配慮を欠くものである》という文言も虚偽です。社会学部においては、金曜日にも「英語」「英語文化事情」、第二外国語などの必修科目や「放送論」「社会学概論」などの専門分野に関係する「選択科目」のほか、「芸術学」「物質の科学」「経済学」などが設置されていますが、現在、浅野教授のゼミに所属している1・2年生のほぼ全員がこれらの科目のうちのいくつかを履修しており、学生仲間との交流も活発に行っています。
浅野教授の金曜日ゼミ開講が「教育的配慮を欠く」という渡辺教授の主張は誤っているどころか、完全なでっちあげであり、一部事実をすり替えて虚偽事実を捏造する手法は、文春記事と全く同じです。
●浅野教授側は東京地裁での審理が当然と主張
原告側はこの被告「反論書」に対し、10月27日「移送申立てに対する意見書(2)」を提出し、次のように主張しました。
《第1行為が被告による最も中心的かつ重要な不法行為であることは明らかであり、御庁が「不法行為地」を管轄する裁判所に該当することに疑いの余地はない》
《文春裁判においては、取材を担当した石垣篤志記者(契約記者)のみ証人尋問が行われ、それ以外の訴外文藝春秋の正社員記者については一切尋問が行われなかった。これは、訴外文藝春秋がこれらの者に対する証人尋問は不要であるとして証人請求を行わなかったことによる。これに対し、記事を掲載するか否の決定権を有する鈴木洋嗣編集長(同人は文春裁判の被告の一人である)や実際に本件記事を書いた石井謙一郎デスクに至っては、尋問はおろか陳述書すら提出されなかったのである。このような事態はマスメディアに対する名誉毀損訴訟においてはきわめて異例である。本件においては、先に述べたように、被告の訴外文藝春秋に対する情報提供行為の有無が主要な争点となる以上、文春裁判において実施された上記契約記者1名に対する尋問結果を援用するのみでは到底足りず、被告からの情報提供の経緯や情報提供の具体的態様をよく知る上記鈴木洋嗣編集長や石井謙一郎デスクら取材・編集の責任者である正社員を証人として尋問する必要性が、文春裁判におけるよりも増して高いことは明白である》
《原告や「東京に実家のある他の1名の教員」がゼミを金曜日に開講していることが、「教育的配慮を欠く」などといった被告の主張は、本件移送申立ての適否と何ら関係がないばかりか、根拠のない虚偽の主張である》
《以上のように、被告は、本件移送申立てにおいて虚偽の事実主張を繰り返しており、かかる申立てにより、いったんは御庁に係属した本件が他の裁判所に移送されることとなるのは、きわめて不当な事態である》
●地裁が争点整理のため被告に答弁書を要請
このように、被告・渡辺教授から再反論がなされたというプロセスがあったことと、主任裁判官で左陪席裁判官が急病のため出勤できなかったこともあり、決定が遅れていました。
そこで、東京地裁は10月28日、「裁判所としては、移送の判断にあたり、本件における主要な争点が何であるかを確認したい。そのため、被告には、来週中くらいを目処に答弁書を提出してもらうこととした。原告には訴状に引用している書証を提出してほしい」と要請してきました。
浅野教授側は11月2日、証拠説明書と書証(甲1〜甲15)を提出しました。一方、渡辺教授と代理人弁護士は、東京地裁に11月5日訴状に対する「答弁書」を提出しました。
渡辺教授側はこの答弁書で、文春記事のコピーを《社会学部及び政策学部の教員のうち被告と面識のある者(約20名)》の郵便受けに配布したことを認めました。
また、文春裁判で証拠能力を否定された書証コピーを《社会学部の学部長経験者及び学科内の役職者(合計5名)》に配布したことを自白し、《(書証を)訴訟記録として提出したのは文藝春秋であり、被告は一切関与していない》《そもそも訴訟記録につき閲覧請求を行うのは、国民に認められた権利であり、被告はその権利を行使しただけである》と居直っています。
「『評論・社会科学』回収事件(浅野教授が同志社大学社会学会紀要『評論・社会科学』に文春裁判の件を書いたところ、社会学会が「回収」を決定した言論弾圧事件)」についても、渡辺教授は「答弁書」で《全国の関係研究者および研究機関に対し、一旦は送られた紀要が回収相当と判断されたことはよほどのことであるが、社会学会がそうした回収作業を実施したことにつき第1次責任を負うのは学会そのものであり、被告、訴外三井及び訴外中谷が個人的に責任を問われるいわれはない。原告は、回収決定に先立ち意見等を求められたことはなく、回収決定撤回の要請も無視されたと主張するが、これも学会内部の手続の問題であって、被告とは関係がない》と書きましたが、これも虚偽です。
そもそも紀要回収については、中谷氏らが社会学会に申立てて社会学会が形だけの「回収」を決定したのが事実です。文春控訴審判決では、中谷氏は04年から渡辺教授グループの一員として動いてきたと認定されています。
渡辺教授は回収作業が始まる数日前、自分で渓水館1階に平積みされていた紀要を全部「回収」(ある教員が目撃)した上で、京都新聞幹部に電話を掛け、「紀要が回収された」と伝え、記事化を頼んだことが明らかになっています。それを「第1次責任を負うのは学会そのもの」「被告、訴外三井及び訴外中谷が個人的に責任を問われるいわれはない」というのは全くの詭弁です。
●文春判決を無視し、ウソを並べ立てた被告「答弁書」
被告側の「答弁書」は、このほか次のように支離滅裂な論理・学内規則違反・虚偽や間違いを並べ立てました。以下、その中のいくつかを引用します。
《被告と原告とは、社会観、メディア・ジャーナリズム観において共通する部分が多く、被告が原告に対し敵対意識を抱いたことはない》
《文春裁判地裁判決では、@のうちC子に対するセクハラについても真実性の証明があると判断された》
《海外からも原告が訴外中谷に対しアカハラ行為を続けたため、訴外中谷が専攻会議に変更を申し入れたことにより、原告の帰国後、原告が出席している大学院担当者会議(専攻会議)で、指導担当者が山口功二教授に変更された》
《被告が情報提供を行なったのは、文藝春秋から取材の要請があったためであり、提供先は同社及び同じく取材申込みがあった毎日新聞社であり、いずれも他の被害者の意見を聞いたうえであり、他の被害者も別個に取材に応じ資料を独自に提供している。また、被告は、文藝春秋から原告のセクハラ行為等につき取材を求められたことから、同僚の大学教授のセクハラ・アカハラ問題の告発、セクハラ行為等を受けた学生・院生の被害回復、手続が遅滞していた同志社大学のセクハラ防止委員会に対する迅速な処理要求等といった公益目的を図るために、資料・情報の提供を行ったのである。被告が訴外石井デスクらに資料・情報を提供したのは、編集部会議で取材が決定した後の平成17年10月14日である》
《被告は、被害学生・院生の訴えに基づき文藝春秋に対し情報提供を行ったのであり、虚偽の事実を捏造した事実はない》
《被告は、ごく一部の者に対する電子メールにおいて、「原告が新潮社に被告に関する虚偽の情報を提供した疑いが強い」旨記載したことはあるが、それは事実であるか、そのように信じることにつき相当な理由があったからである》
《また、原告が被告に関する情報を新潮社に提供したことは真実であるか、真実であると信じるにつき相当な理由がある。この点は、原告の釈明を待って主張立証を行う》
●“被害者”に責任転嫁する被告・渡辺教授
渡辺教授は《原告とは、社会観、メディア・ジャーナリズム観において共通する部分が多く、被告が原告に対し敵対意識を抱いたことはない》と書いていますが、渡辺教授は1990年代後半以降、京都新聞の紙面審議会委員・関西テレビ番組審議会委員長を務め、産経新聞・日経新聞・毎日放送や大企業(NTT、京セラなど)の幹部に接近し、記者クラブ必要論を説き、関西テレビの「あるある大事典U」の捏造問題に関し「被害者はいないので、たいしたことはない」と繰り返し発言するなど浅野教授のジャーナリズム観とは大きく食い違っています。両者の共通点は現在ではほとんどなくなっていると言えるでしょう。また、渡辺教授が10年前ごろから浅野教授に強い敵意を抱いてきたことは、「渡辺ゼミ掲示板!!!」での渡辺教授自身の投稿文を読むだけで明らかでしょう。
《C子さんへのセクハラ》疑惑は文春記事の中心でしたが、浅野教授がC子さんにセクハラをした事実はなく、文春の記述は虚偽であることが文春裁判の1・2審で明確になっています。京都地裁判決が《C子に対するセクハラについても真実性の証明があると判断された》ことは全くありません。津田正夫立命館大学教授が捏造した《E子さん》ケースで、これも大阪高裁で逆転・取り決され、「セクハラの事実があったとはいえない」と認定されています。
浅野教授が《海外から訴外中谷に対しアカハラ行為を続けた》事実は全くなく、中谷氏が04年から渡辺グループの有力メンバーとなり、浅野教授の私信などを渡辺教授に渡しています。渡辺教授の様々なでっちあげ工作に最も熱心に忠実に参加したのが中谷氏です。
中谷氏が院専攻教務主任に指導教授の変更を申し入れ、院専攻会議で、「指導教授を山口功二教授に変更する」との提案がなされましたが、04年3月末に満期退学した元院生に「指導教授」はつかないと、社会学研究科事務長に的確に指摘され、この提案は承認されず、流れたままになっています。単位取得満期退学した後、3年以内に博士論文を完成させれば、課程博士になります。博士論文を提出する後に、論文審査の主査と副査(2人)が決まります。退学から論文提出までの間は、学籍がなく「指導教授」はいないのです。文春裁判の大阪高裁判決は、03年度の指導教授は渡辺教授と認定しています。
文春に対し情報提供を行ったのは《被害学生・院生》だというのは事実に反しています。また、《事実を捏造した事実はない》というのですが、京都地裁は、各種のメールが改竄された可能性を指摘しています。
浅野教授が被告の大教室でのAV上映に関する情報を新潮社に提供した事実はないことは、渡辺新潮AV裁判(渡辺教授の代理人は池上氏)で確定しています。この点について、《原告の釈明を待って主張立証を行う》という池上弁護士はどういう立証をするというのでしょうか。
被告答弁書はまた、《セクハラ・アカハラ関連以外の問題を外部に伝えたことはない》などと書いています。敵対意識を持たない人間が、本人に事実確認もせず、大学のセクハラ委員会へ事案を持ち込み、その審理が続いている時に、『週刊文春』を使って浅野教授を闇討ちするでしょうか。さらに渡辺教授は、文春裁判での自らの証言(2007年7月10日の一審第9回期日・京都地裁)を忘却しています。
さらに、《情報提供を行なったのは、文藝春秋から取材の要請があったためであり、提供先は同社及び同じく取材申込みがあった毎日新聞社であり、いずれも他の被害者の意見を聞いたうえ》とありますが、これも事実の捏造です。渡辺教授はCH委に、当時の委員長との個人的な関係を利用して持ち込んだことを、文春裁判で自ら証言しました。また、CH委が動かないからと言って、学内で審理中の事案を外部に情報提供するのは、教職員に課せられた守秘義務に違反しています。
渡辺教授は、文春と毎日が“ハラスメント被害者”(渡辺教授グループの三井愛子、中谷聡両氏ら)が両社に取材依頼をして、被害者の取材を終えた後に、自分は取材に応じたというストーリーにしているようです。文春、毎日に垂れ込んだのは自分ではなく“セクハラ・アカハラ”被害者だというのは、被害者とされている人たちへの責任転嫁ではないでしょうか。文春裁判での事実認定に完全に反した主張を展開しています。
この答弁書で、毎日新聞が本件で文春と同じく取材申し込みを渡辺教授にしたということが初めて明らかになりました。渡辺教授の主張が事実なら、毎日記者は一体どこの誰から、浅野教授の同大セクハラ委員会での被申立事案を知ったのでしょうか。文春裁判においては、中谷氏らはマスコミ各社を回ったことを明らかにしています。しかし、渡辺教授は毎日からの「取材依頼」の事実については全く言及していません。毎日新聞は、文春裁判で浅野教授が1・2審とも勝訴したのに、一部のハラスメントを真実と認めたと強調するなど悪意のある見出しを掲げて、偏向した記事を載せてきました。渡辺裁判では毎日記者も証人喚問する必要があるでしょう。
このように、渡辺教授側は大阪高裁判決の事実認定をことごとく批判していますが、司法判断を批判するには、確たる証拠を示す必要があると思います。渡辺教授側がどのような立証活動をしてくるかを注目しましょう。
●東京地裁が原告の主張受け入れ移送を却下
東京地裁は11月19日、原告の浅野教授および代理人の主張にほぼ沿う形の結論を出し、被告の渡辺教授側が求めていた移送申立を却下しました。被告側は却下決定に対する即時抗告(期間は1週間)ができたのですが、なぜか抗告せず、移送却下決定が確定しました。それに伴い、第1回期日が10年1月18日に決まりました。
東京地裁の決定は、原告側が渡辺教授の不法行為として挙げた8項目をそのまま、「本件基本事件」として列挙した上で、京都地裁への移送の可否を検討しました。地裁決定は、《一件記録によれば》と3箇所に書いており、裁判官たちが、相手方(原告)の提出した書証(特に文春高裁判決)を精査していることがうかがわれます。決定は次のように、被告・渡辺教授側の主張をことごとく退けています。「申立人」とは、移送を申し立てた被告・渡辺教授側で、「相手側」は原告・浅野教授側を指します。(決定文の引用部分は支援会が一部を略・編集)
《一件記録によれば、申立人は、東京都内において、文春記者に対し、複数の学生が相手方によるセクハラ行為等による被害を受けていること等を説明し、その資料を交付したことが認められる》
《文春記者の取材に対する説明や資料の写しの交付など不法行為のあった地である東京都内を管轄する東京地裁に管轄が認められる》
《申立人が文春に提供した相手方のセクハラ行為等に関する情報の真実性、文春記者による申立人への取材の態様や本件記事の掲載に関して申立人が果たした役割、相手方が新潮社に対し申立人に関する虚偽の情報を提供したか同か否かが争点になるものと考えられ、セクハラ行為等の被害者とされる者、及び文春記者の証人尋問や、申立人及び相手方の本人尋問が予想される》
《本件基本事件においては、文春の記者に情報提供した申立人の不法行為責任の成否に関して、文春の記者による申立人への取材の態様や本件記事の掲載に関して申立人が果たした役割が争点になり、文春裁判では争点となっていなかった点が争点になると考えられるから、文春の記者の証人尋問を実施する必要性がないとまでみとめることができず、申立人の上記主張は採用できない》
《申立人は、検証や訴訟の資料収集の便宜上も、申立人及び相手方の勤務地、不法行為等地を管轄する裁判所で審理を行うのが相当である旨主張するが、本件基本事実について検証の必要性は認められないし、訴訟の資料収集の便宜のために本件基本事件を京都地裁に移送する必要性も明確でない》
《相手方代理人7名のうち主任弁護士を含む5名は東京都千代田区内にその事務所が存在しており、相手方は東京地裁を選択しており、京都地裁へ移送しても相手方に不利益がないということはできない》
《その他、一件記録を精査しても、訴訟の著しい遅滞を避け、本件基本事件を京都地裁へ移送すべき事由は認められない》
渡辺教授側の主張が完全に裏目に出た形であり、浅野教授側の主張の正当性が認められました。これにより、渡辺裁判は、東京地裁で審議が開始されることになりました。
被告側が出してきた大量の文書は渡辺教授が原案を書いていることは確実と思われます。
原告・浅野教授側は渡辺教授側による、これらの不当な主張を、今後の審理で、客観的な事実に基づいて一つずつきちんと潰していくことがこれから必要になりそうです。
浅野支援会では、浅野教授の対渡辺教授裁判について、今後も裁判の進捗状況をお知らせしていくつもりです。支援者の皆様には是非、継続して支援していただきたいと思います。(以上)
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