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支援会ニュース SUBJECT |
掲載日 |
メディア学者の倫理を問う
・・・関東のある大学院生からのメッセージ |
2007年4月12日 |
2007年3月20日、ある関東の大学院生から《「浅野支援会」サイトの記事を読んで》と題するメールが支援会に届いた。大学名、姓名、専攻分野も明記しているが、支援会の判断で匿名にして掲載する。院生に対するハラスメント、脅迫が懸念されるからだ。ご本人の了解を得て紹介したい。
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私は関東で研究している大学院生です。浅野先生のゼミのサイトはずいぶん以前から時々見ていて、三年ほど前に一度だけメールを送らせていただいた事もあります(麻原氏死刑判決についての浅野さんの批判に対する意見、あの時はお返事ありがとうございました)。
今回メールを出したのは、「浅野教授の文春裁判を支援する会」のサイトをはじめて見て、驚いてしまったからです。渡辺武達という人は、こんなにとんでもない人だったのですか!?
文春・新潮が、05年に続けて渡辺氏と浅野さんの「セクハラ事件」について書きたてた時、私はまた右翼の汚いやり口だと思いました。彼らは、「セクハラ」の本質である女性と男性の間にある根本的な不平等な権力構造について全く触れる事もないくせに、性差別を是正する動きを「ジェンダーフリー」などとあげつらい糾弾するからです。ゆえに私は「似非ジャーナリズムから、同志社大学の立派なジャーナリズム研究総体が攻撃されている」と解釈していました。胡乱なネット情報で渡辺氏と浅野さんが攻撃対象になっているのを腹立たしく思いながらも、逆にこの事は両方が信頼に値する人物である事を立証するものであると信じていたのです(英語やイタリア語のサイトで調べものを度々していて嘆息した事ですが、ネット情報のレベルはその国の紙媒体のジャーナリズムに完全に正比例しています)。それを、自分がオモテでは攻撃している連中と内通し研究の同輩を陥れるとは!
私の大学の図書館は、学生による本の購入リクエストを受け付けていま す。私は自分の研究に必要な新刊がないときには、自分以外の人にも役立つようにと、図書館が自分ではあまり入れていない人文科学や社会科学の分野の本を注文する事にしていました。ジャーナリズム論もその一つで、そこで私は今まで何も知らずに、浅野さんの本とともに渡辺氏の本も注文し、書棚に納めさせていたのです。私の大学は国立なので、そんな厚顔無恥な人物の本を国費で買わせてしまったことになる。自分が自分で嫌になる。本当に眩暈がしています。
何よりも同志社大学でジャーナリズムを学ぶ学生が不幸だと思います。渡辺氏に教わる学生もそうですが、研究(もちろんその根底には「平和」と「人民主権」がある)に何よりも忠実であるべき大学で、このような下らない抗争が起こること自体が不幸です。私の大学でも、(中略)意見や方法論がしばしば衝突します。それでも両者は、現政府の掲げる「美しい日本」なる虚像に対抗する批判的な著述を目指すと言う点で一致し、同じ学科を構成しています(正直「支援会」のサイトを見ていて怖くなりましたが……私の仲間は、学問的ディシプリンにのみ忠実であると断言したい)。思えば、彼がサイトで挙げる「参考文献」において、浅野さんの本が一切挙げられていない所で「異常」に気づくべきだったかも知れませんが。
浅野さんも、どうかお体にお気をつけてご執筆の程を。
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支援会から以下のような返事を出した。
先日は貴重なご意見と、原告である浅野健一氏への励ましをありがとうございます。
渡辺氏は、浅野氏が彼のAV画像上映のことを新潮社に《売り込んだ》《垂れ込んだ》と思い込み、その仕返しに、文春に猛アタックをかけて、書かせたようです。これは裁判であきらかになるはずです。
まさに「自分がオモテでは攻撃 している連中と内通し研究の同輩を陥れる」ことを彼はやってしまいました。
彼は新潮裁判に一審で勝訴して、まるで確定したかのように喜び、また浅野氏や支援者への攻撃を強化しています。
私たちは文春裁判を地道にやります。そして浅野氏のジャーナリスト活動、教育研究活動を応援します。
またご意見を聞かせてください。
3月26日に再びメールが送られてきた。 |
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今回の二つの裁判では、渡辺氏が文春に情報を提供した事が明らかになった一方、浅野さんが新潮に情報を提供したという証拠はあがっていません。渡辺氏が仮にいかがわしいAVを学生に見せてなかったにしても、彼は浅野さんに関する誤った情報を流した件について謝罪する必要があるでしょう。彼がいまだに「浅野リーク説」を強調するのは、単に「引っ込みがつかない」だけと私には思われました。
組織の内部でウヤムヤにされそうな問題を、匿名の発表者が「内部告発」の形で公衆に問うというのは、大学ではあってはならない、とは思いません。しかし「セクハラ問題」は学内で民主的に討議がされていたわけだし、その段階で、ましてや自分が批判しているメディアに情報を流すというのは、自身の学問に対する裏切りである。また、一方的に浅野さんが「セクハラ問題」をもみつぶせる権力を学内で維持していたわけでもない(大変失礼とは存じますが、一応良心的と目されている『世界』などでヘゲモニーを握っているのが桂敬一氏や田島康彦氏ですから、その風当たりが学内にも及んでいると推察します)。むしろ学内で院専攻教務主任・メディア・コミュニケーション研究センター所長までやっている渡辺氏は、学内外で複数の講師や研究者に影響力を行使できる立場にこそあれ、浅野さんに抑圧されてなどいない。この「告発」には道理がない。ただの「闇討ち」です。
同志社大学の学生の皆さんによい研究環境を!
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以上が院生からのメールである。
(了) |