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控訴審第2回口頭弁論 |
2008年9月17日 |
被告・文春側は、控訴立証を事実上放棄
――文春裁判・控訴審(大阪高裁)第2回口頭弁論
●裁判長が交代、松本哲泓(てつおう)判事が新しい裁判長に
浅野教授が「週刊文春」記事を名誉毀損で訴えた損害賠償訴訟の控訴審・第2回口頭弁論が、9月9日午前11時から大阪高等裁判所(第9民事部ハロ係)別館72号法廷で開かれた。
第1回口頭弁論(7月3日)の後、大阪高裁の人事異動があり、控訴審裁判長が中路義彦判事から松本哲泓(てつおう)判事に交代した。この日は、松本裁判長は都合がつかず欠席、白石研二・右陪席裁判官が臨時で裁判長席に座り、原告側が9月1日に提出した準備書面、新たに申請した証拠などを確認した後、今後の日程を決めて終わった。
次回(第3回口頭弁論)は、10月30日(木)午後4時から、同じ別館72号法廷で開かれる。次回の弁論からは松本裁判長が出廷し、右・左の陪席裁判官は本来の席に戻る。
この日、72号法廷には浅野教授と代理人弁護士6人のうち、若松芳也、堀和幸、小原健司、池田良太の4人が出廷したほか、浅野教授の支援者5人が傍聴に駆けつけた。
一方、文春側の代理人は喜田村洋一弁護士一人。また、第1回弁論では姿を見せなかった文春記事の「ネタ元」中谷聡氏、三井愛子氏と、被告の名村さえ文春契約記者が傍聴した。
原告側は、被告側が第1回弁論ぎりぎりに出した控訴理由書に反論する準備書面(9月1日提出)、控訴審で新たに4人の証人尋問を求めることを記した証拠申出書、原告陳述書、山田悦子さんの上申書、大住良太さんの陳述書などの証拠説明書などについて説明した。
被告・文春側は、何も証拠を提出せず、証人申請もしなかった。被告側としては、第1回弁論に出した「C子さん」の大学院同期・S氏の陳述書以外、何も立証活動をしないことになる。S氏は渡辺武達教授の門下生で、その陳述書は「C子さんからのメール」などについて述べているが、陳述書にはその「メール」コピーも添付されていない。しかも、被告側はS氏の証人申請もしていない。控訴審に提出した唯一の陳述書の証人尋問さえ求めないのは、一審で敗訴し、控訴した被告側としては極めて異例だ。
次回・第3回弁論では、原告側が証拠申出書で申請した証人4人の採用、同志社大学と立命館大学のセクハラ委員会に対する調査嘱託、原告の当事者尋問について、裁判所側が採否の判断を示す予定。新たに就任した松本裁判長が、これら原告の証拠・証人申請にどのような判断を示すか、今後の裁判の展開を大きく左右するものとして注目される。
●津田正夫・立命館大学教授らを証人申請
今回、原告側が証人として申請したのは、①山田悦子さん②津田正夫・立命館大学産業社会学部情報メディア学科教授③鈴木直人・同志社大学セクハラ委員会元委員長④生田勝義・立命館大学セクハラ委員会元委員長の4人。
山田さんについては、《本件記事に記載されている中谷氏に対する行為はアカハラ行為ではない。中谷氏は原告が指導教授であった期間、1974年に兵庫県西宮市で起きた甲山事件とマスメディア報道について卒業論文、修士論文を書いた。山田氏は原告の紹介で1993年ころに中谷氏と知り合い、以後、中谷氏の調査研究の対象者となり、個人的にもアドバイスする関係にある。山田氏は2007年、中谷氏から、原告との関係が悪化したのはティーチング・アシスタント(TA)問題をめぐる紛争が原因で、原告と渡辺教授らとの板挟みになって苦悩しているという趣旨の手紙を受け取っている》ことなどを立証する。
津田教授については、《本件記事に記載されている原告のE子に対する『セクハラ』行為は事実ではないこと》を、尋問を通じて立証する。
鈴木氏については、《同志社大学セクハラ委員会に、本件記事に記載されているC子による申立はなかったこと。委員会の正式な案件となっておらず、委員会による正式な事情聴取などの事実もないこと》。また、生田氏については、《立命館大学セクハラ委員会に、本件記事に記載されているE子自身による申立は一度もなかったこと。委員会の正式な案件となっておらず、委員会による事情聴取などの事実もないこと》をそれぞれ立証する。
調査嘱託は、同志社大学と立命館大学に対して、それぞれのセクハラ委員会における本件関連の申立・処理状況などの調査・回答を、裁判所として求めるもの。
嘱託事項は、同志社大学には、①大学セクハラ委員会に、本件記事に記載されているC子による申立はあったか②あったとすれば、委員会での処理状況、結論などはどうであったか③セクハラ委員会に、本件記事に記載されているA子(三井氏)及びD(中谷氏)の事案を持ち込んだのは誰か④上記について、三井氏,中谷氏は申立人であるか⑤セクハラ委員会は、原告への事情聴取を要請した際、申立人の姓名・申し立て内容の概要すら明らかにしなかったが、その理由は何か。申立人が渡辺教授であったからではないか⑥大学当局が原告のアカハラ・セクハラを認定したことはあるか⑦記事中に大学当局の認定文書として登場する文書は、どのような意味を有するのか。大学当局による認定を意味するのか⑧セクハラ委員会で原告に関する申立ては現在どのような扱いになっているか――の8点。
立命館大学については、①貴大学セクハラ委員会に、本件記事に記載されているE子による申立はあったか②あったとすれば、委員会での処理状況、結論などはどうであったか――の2点の調査・回答を求める。
また、原告側が新たに提出した証拠とその立証趣旨は、次の7点。
① 辺教授の週刊新潮に対する損害賠償請求訴訟の控訴審(大阪高裁)判決書写し
渡辺教授が講義でビデ倫広報ビデオのアダルトビデオを上映したことが認定され、渡辺教授が敗訴したこと。渡辺教授が原告に敵意を抱いた原因のひとつは、週刊新潮記事が原告のタレコミによるものと渡辺教授が勘違いしたことにあると思われ、本訴訟と渡辺・新潮訴訟とは無関係でない。この判決の中で、新潮に情報を提供したのは同志社大学OBのA氏であること、すなわち原告ではないことが認定されている。新潮の記事が原告によるタレコミが原因であるとの渡辺教授の思いこみが、誤った事実認識に基づく勘違いであることが分かる。
②同訴訟の上告審(最高裁)判決調書写し
渡辺・新潮訴訟の上告審が棄却され、渡辺教授の敗訴が確定したこと。
③「渡辺ゼミ掲示板!!!」と題する渡辺ゼミの掲示板のトップページ
この中で渡辺教授は、渡辺・新潮訴訟の一審判決では渡辺教授が勝訴したこと、2008年3月現在は控訴審係属中であることを記述し、追記として週刊新潮の記事は「同志社大学の某男性教授がニセ学生などを使い、週刊誌にデマ情報を垂れ込んだものであ(る)」と述べている。その後、渡辺教授は控訴審、上告審で敗訴し、敗訴が確定しているが、2008年8月末日現在、敗訴を報告する記事は同掲示板に一切掲載されていない。
④「渡辺ゼミ掲示板!!!」にS氏(証拠原文では実名)が書き込んだ内容
S氏は,渡辺教授の言い分を代弁するかのような記事を書き込んで、週刊新潮及び週刊新潮の記者を激しく批難、後に判決で真実であったと認定された記事について「ガセネタ」と決めつけている。また、「渡辺先生、がんばってください!」などと渡辺教授を激励しており、単なる元門下生というだけでなく、密接な関係を有する人物であることが分かる。
⑤渡辺武達研究室の公式ホームページのトップページの内容
トップページ末尾に「管理者:S・D」(原文は実名)と明記されている。既に卒業し現役のゼミ生ではないS氏が2008年8月26日現在も大学公式ホームページ内の渡辺研究室のページを管理しており、S氏が渡辺教授と密接な関係を有する人物であることが分かる。
⑥山田悦子さんの上申書
中谷聡氏と山田悦子さんとの関係、山田さんが中谷氏から手紙をもらい、中谷氏のいう「アカデミックハラスメント」とは、ティーチング・アシスタント(TA)が期限まで決まらなかったことによる原告との確執であり、「アカデミックハラスメント」とは考えられないこと。
⑦大住良太さんの陳述書
一審判決後も、原告はインターネット上の被害を受けていること。
●準備書面で被告の控訴理由書に全面的反論
原告側が9月1日付で提出した準備書面は、被告側が提出期限を大幅にオーバーして出した控訴理由書に対して全面的に反論したもの。
被告控訴理由書は、一審判決が明確に「名誉毀損」を認定した①「C子に対するハラスメント」に関する記述②「三井に対するハラスメント」に関する記述③RA報酬に関する記述④セクハラ委員会報告に関する記述――の4点について、それぞれ控訴理由を述べた。
これに対し、原告側準備書面は、一審認定の正しさを再確認するとともに、被告側主張には根拠がないこと、その誤り・詭弁を徹底的に批判した。特に、文春記事の中核であり、それゆえに原告の名誉を最も著しく毀損した「C子に対するハラスメント」に関する記述については、被告側が控訴審で出した「S陳述書」を中心に、詳細な反論を行っている。
①この陳述書には、「S・D」(原文実名)なる署名はあるものの住所など本人を特定する事項は記載されておらず、体裁からして「S・D」なる人物が作成したものか疑問
②被告は陳述書作成者の証人申請も行う意思のないことを表明した。成立の真正にも内容の真正にも疑義が出されることが予想される陳述書について、陳述書作成者の証人尋問を行う予定すらないのに証拠として提出すること自体、極めて不適切
③被告はこの陳述書に基づき、C子は渡辺武達・同志社大学教授に乙30号証の添付資料5を送付する前に、これと基本的に同一のメールを「S・D」に送付していた旨主張するが、この陳述書によっても「オリジナルメール」の存在を裏付ける客観的証拠は皆無
④「S・D」は卒業後も「恩師」渡辺に強い忠誠心を持ち、渡辺を擁護する主張をホームページ等で行っている。原告に「敵意」を持つ渡辺に強い忠誠心を持つ元門下生で,しかも現に渡辺を擁護する行動を取る人物の作成だとされる陳述書には信用性が全くない
一審判決は、文春記事の中核をなす「C子に対するハラスメント」記述が、原告に「敵意」を抱く渡辺教授の「情報」を鵜呑みにしたものであって信用できないこと、しかも渡辺教授が「C子からのメール」として文春に提供した「オリジナルメール」なるものが、改ざんの可能性・痕跡をうかがわせるものであることを認定した。
「S陳述書」は、その認定を覆そうとして出してきたもののようだが、あらかじめ証人尋問で反対尋問にさらされることを回避するような陳述書しか出せないこと自体、被告側の控訴審に対する投げやりな姿勢、「自信のなさ」をうかがわせるものだ。
●一審判決認定の誤った部分を解明した原告陳述書
第2回弁論には、浅野教授による全文59ページの詳細な陳述書も提出された。原告は一審でも3回にわたって陳述書を出しているが、今回の陳述書は一審判決認定の誤った部分を詳細に検討し、説得力のある批判・反論を展開、裁判官たちにはなかなか想像しにくいと思われる大学の事情なども詳しく説明している。ここでは、その全文を掲載することはできないので、目次と「はじめに」の一部を紹介しておきたい。
〈原告陳述書の目次〉
はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3頁
Ⅰ 2年後の今振り返る文春記事とその後の影響 ・・・・・・・・・・・ 4頁
1 特異な学内事情を無視した記事 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 4頁
2 今も続く深刻な報道被害 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6頁
3 確定判決まで「静観」の大学セクハラ委 ・・・・・・・・・・・・ 6頁
4 同志社・新聞学スタッフであることの誇り ・・・・・・・・・・・ 7頁
5 文春は控訴審でも渡辺教授頼り ・・・・・・・・・・・・・・・・ 11頁
Ⅱ 記事主要部分で妥当な一審判決 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11頁
1 中谷氏の指導教授を渡辺教授と認定 ・・・・・・・・・・・・・・ 12頁
2 渡辺教授の証拠改ざんの可能性・痕跡の認定 ・・・・・・・・・・ 12頁
Ⅲ E子さん記述に関する一審判決は誤認 ・・・・・・・・・・・・・・ 13頁
1 ハラスメントの定義なし ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13頁
2 セクハラ委員会の手続は複雑 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14頁
3 C子さんは申し立てをしていない ・・・・・・・・・・・・・・・ 15頁
4 E子さん文書は津田教授らの捏造 ・・・・・・・・・・・・・・・ 18頁
5 信用できない津田陳述書 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19頁
6 私には抗議はなかった ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22頁
7 E子さん関連での文春側主張の矛盾 ・・・・・・・・・・・・・・ 24頁
8 E子さんとの実際のやりとり ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28頁
9 津田教授は中立ではなく渡辺教授派 ・・・・・・・・・・・・・・ 31頁
10 津田教授は渡辺教授の“使い走り”をした ・・・・・・・・・・・ 32頁
11 「元NHKですから分かる」と言う傲慢 ・・・・・・・・・・・・ 36頁
Ⅳ 中谷氏へのハラスメントは事実無根 ・・・・・・・・・・・・・・・ 40頁
1 TA問題の真実 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40頁
2 言葉の出た背景を吟味すべき ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 42頁
3 同志社メディア学専攻の論文審査のユニークさ ・・・・・・・・・ 44頁
Ⅴ 一審判決に対するその他の見解と本審への期待 ・・・・・・・・・・ 44頁
1 謝罪広告を認めないのは不当 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44頁
2 RA報酬の「いったん受領」は誤認 ・・・・・・・・・・・・・・ 45頁
3 文春弁護団の利害相反 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45頁
4 判決を悪用した一部メディア ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46頁
5 渡辺派の行動を契機に改革進む大学の手続き ・・・・・・・・・・ 48頁
6 ゼミ学生・OBGたちの支援 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49頁
おわりに~文春など雑誌の社会的責任と本裁判の意義~ ・・・・・・・・ 50頁
注 52~59頁
〈原告陳述書・はじめにの一部〉
本件裁判は日本最大の発行部数を持つ総合週刊雑誌「週刊文春」が2005年11月24日号で《「人権擁護派」浅野健一同志社大教授 「学内セクハラ」を被害者が告発!》との見出しを掲げ、《浅野教授の学内セクハラを、大学当局が認定した》と断定する4ページにわたる不当な記事を掲載したことに対し、私が「セクハラ、アカハラをしたとする記事のすべてが事実無根で、悪質な捏造記事だ」として、損害賠償などを求めた訴訟である。
文春記事の見出しと同じ文章が、日本を代表する読売新聞と朝日新聞の東京本社版に印刷された文春広告欄のほぼ中央に記載され、同じ見出しがインターネット上の文春HPにもアップされた。さらに、文春記事掲載直後から、ネット上の多数の掲示板などで記事の全文や要約が流れ、月刊誌「サイゾー」(インフォバーン発行)でも引用された。このため、私は「セクハラ疑惑教授」として事実無根の不当なレッテルを貼られた。その後、影響力の大きいWikipedia、同志社ナビ(同志社大学学友団公認団体)などにも文春記事がすべて真実という前提で私を中傷、侮辱する論評が展開されてきた。現在も不当な名誉毀損行為を反省もせずに、「記事はすべて真実」と居直って主張しているのが、被告の株式会社文藝春秋、鈴木洋嗣「文春」編集長、石垣篤志・名村さえ両契約記者である。
一審の京都地裁は、大学当局がセクハラを認定したという記事の主要部分(見出し)を完全に事実誤認と認定して275万円の賠償命令を言い渡した。判決は印刷された記事だけでなく、文春HP(ネット上)・新聞広告などでも名誉毀損による被害が及んでいることを繰り返し書いている。大筋では私の主張を認めてくれたと思う。しかし、残念ながら一部の認定に誤りがある。また、275万円の賠償を文春側に命令したのに、謝罪・訂正命令が出なかったのは理解できない。また、判決が一部の記述について「アカハラ」「セクハラ」があったと認めたと書いているため、一部報道機関やネットで、私がハラスメントをしたと非難する悪質な書き込みが急増した。
一審判決は文春記事について、《渡辺教授が記事に関するほとんどの情報、材料を文春に提供した》と判断した。まさに、渡辺教授が「すべてのキーパーソン」(中村裁判長の弁論期日での発言)であると明確に認定した。また、渡辺教授が《原告に対して敵意に近い感情を抱いていたことを窺わせ、原告と渡辺教授はこのような関係にあったことは、渡辺教授およびその周辺から取材した被告らは認識できたことが推認される》とし、《渡辺教授自身及び同教授から紹介を受けた人物から入手した情報の信用性について、被告らは、慎重に検討することが必要であった》のに、その裏付け取材を欠いた、と厳しく断罪した。
判決は、渡辺教授が私に対して「敵意」を抱き、自分が指導する院生たちを使って、他の同僚教授と共に「セクハラ」「アカハラ」を問題にして、文春記事に1人4役で現れた構造を完全に認めた。判決は、渡辺教授が海外で「セクハラ被害」を受けたとする元院生(記事ではC子さん)から届いたと供述するメールの添付ファイルについて、渡辺教授による改ざんの可能性・痕跡(「事後に手を加えた」との断定)を認めた。
大学の中で私がハラスメントをしたという“告発”が渡辺教授から持ち込まれ、私が学内の調査委員会の「被申立人」となっていることは事実である。本来、誰がどういう調査の対象になっているかは、何人も公開してはならないのだが、私のケースでは、同僚教授が委員会の調査が終結もしていない段階で、「社会問題化」するために週刊誌に持ち込んだ。文春はそうした経緯を百も承知で、同僚教授のウソに乗っかり、記事にしたのであった。
甲山冤罪事件で25年間も被疑者・被告人とされた経験を持つ山田悦子さんは、08年7月3日の本審第1回口頭弁論後、大阪弁護士会で開かれた浅野文春裁判支援会主催の裁判報告集会で行った講演「文春裁判控訴審にあたって」で、《文春は、活字で人権侵害を社会的に図ったのですから、活字でもって責任をとっていく、これは活字を媒体にして社会に情報提供しているジャーナリズムの社会的マナーだと、私は考えています。この裁判でいちばん必要とされるのは、賠償金などではなく、きちんと社会に向けて謝り、浅野さんの名誉の回復を図らなければならない、ということです》と語った。
文春記事は大学の自治を破壊し、私の人権を侵害しているのである。私は本裁判で、文春の報道犯罪の実態を明らかにしていきたい。一審裁判所に提出した三つの陳述書と重なる部分もあるが、以下、文春記事についての今の私の見解と、記事によるその後の深刻な被害、影響について述べたうえで、一審判決の正しい点と誤りを指摘していくこととする。
●弁論終了後、報告集会
第2回弁論の後、高裁別館8階の弁護士控室で、この日の弁論の説明と今後の訴訟方針の打ち合わせを兼ねた報告集会が開かれ、原告、4人の代理人、支援者5人が参加した。
今回、初めて文春裁判を傍聴した大学講師・藤井幸之助さん(同志社大学などで朝鮮語を担当)は、「大学のセクハラ委員会は、ある意味で聖域になっていて、問題が多い。調査委員が十分な研修も受けていない。被害者のケアも不十分で、深い傷を受けたままになっている人もいる。最善は予防することだと思う。同志社のラグビー部の問題でも、大学の対応はおかしかった。二度と繰り返さないための対策・対応が必要なのに、処分で済ませようとした。浅野さんの裁判を見守っていきたい」などと話した。
この日の弁論では中谷氏が姿を見せ、法廷内外で「プライバシー侵害が……」とつぶやいていた。浅野教授は「かつての研究調査対象で、世話になった山田悦子さんが上申書を提出し、証人としても申請したことが、気になったのだろう」と話した。中谷氏は甲山事件報道を研究しているが、山田さんは、中谷氏と浅野教授の“紛争”がアカハラとは無縁であることを中谷氏からの手紙などをもとに明らかにしている。浅野教授は「中谷氏は、それがプライバシー侵害だと騒ぎたいのだろう。自分自身は、私の私信、メール、電話録音を渡辺教授、大学、報道機関へ大量にばらまいておいて、何がプライバシー侵害かと思う。私は中谷氏らの協力で文春が行った名誉毀損を司法の場で究明しているのであり、そのために必要最低限の主張をしているだけだ」と話した。
報告集会では、一審判決の誤った部分を二審で改めさせるため、今後さらにいくつかの陳述書などを提出していくことなどを確認。最後に浅野教授が「控訴審で一審認定の誤りの部分を正し、全国紙の文春広告欄などでの謝罪広告の掲載を命じるよう高裁に求めていきます。どうぞご支援ください」と訴えた。(了)
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