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■文春裁判速報・進捗
速 報 SUBJECT 掲載日
控訴審第1回口頭弁論 2008年7月6日

2008年7月6日
文春裁判支援者のみなさまへ
控訴審(大阪高裁)第1回口頭弁論の詳報

 浅野教授が「週刊文春」記事を名誉毀損で訴えた損害賠償訴訟の控訴審・第1回口頭弁論が7月3日午後3時から、大阪高裁(中路義彦裁判長)で開かれた。
 この日、大阪高裁別館72号法廷には、浅野教授の代理人弁護士6人のうち4人が出廷したほか、浅野教授の支援者約10人(学生を含む)が各地から傍聴に駆けつけた。
 一方、文春側出席者は、代理人の喜田村洋一弁護士と文春法務部と思われる五十代の男性一人だけ。一審で文春捏造記事の黒幕であることを自ら「告白」した渡辺武達・同志社大学社会学部メディア学科教授や、一審ではたびたび傍聴席に姿を見せていた文春記事の「ネタ元」中谷聡氏、三井愛子氏、渡辺に全面協力した津田正夫教授(立命館大学)、野原仁(岐阜大学教授、渡辺教授の門下)や文春記事のライターたちは一人も姿を見せなかった。
 一審の京都地裁判決(2月27日)は、文春記事の主要部分が名誉毀損に当たるばかりか、渡辺教授の原告に対する「敵意に近い感情」による捏造情報に基づくものであるとして原告の主張を大筋で認め、被告・文春に275万円の損害賠償を命じた。これに対して文春側は控訴、原告側も一部の認定の誤りや原告が強く求めていた謝罪広告を認めなかった点を不服とし、控訴した。その結果、控訴審ではあらためて原告・被告双方が全面的に争う形になった。
 原告側代理人は4月25日付で、次のような趣旨の控訴理由書を大阪高裁民事第9部に提出し、被告側にも同時にファックスで通知した。
 控訴理由書は第一に、一審判決が、①A子に対するセクハラの記載②C子に対するセクハラの記載③Hに対するRA報酬のピンハネの記載④同志社大学セクシュアル・ハラスメント防止に関する委員会の認定・判断事項の記載――の4点について、「真実性がなく、かつ、真実と信じたことについて相当の理由があったとは認められない」とした点は妥当とし、その認定を控訴審でも維持するよう求めた。
 控訴理由書は第二に、一審判決が、①Dに対するアカハラの記載②E子に対するセクハラの記載――の2点について、その真実性を認めたこと、認定された控訴人の損害額が極めて少額で謝罪広告も認めなかったことは極めて不当とし、この部分については控訴審で取り消し、控訴人の請求を認めるよう求めた。
 控訴理由書は、記事の最大のポイントである「C子」記述について、一審判決が、「セクハラなど人格評価に重大な影響が予想される記事では、慎重で確実な取材、慎重な検証を踏まえた適正な判断をすべき」としたうえで、①記事の作成には渡辺教授が深く関与し、同教授の情報提供がなくては成り立たない状況②渡辺教授が本件記事の取材時に原告に対して敵意に近い感情を抱いていた――などと指摘し、渡辺教授による添付ファイルの改ざんの可能性・痕跡を認定、原告に対する悪意にまで言及したことを高く評価した。
その一方、「D」「E子」記述については、一審判決が、「C子」記述と同様に情報源が原告に「敵意に近い感情を抱いていた」問題を軽視し、「アカハラ」などの解釈・適用を誤った点を批判した。
 損害賠償額については、記事の中核部分を名誉毀損と認めながら、賠償額が低すぎると指摘、謝罪広告に関しては、記事掲載後直ちに提訴しているにもかかわらず、判決が「記事掲載後すでに2年以上期間が経過している」として請求を退けたことを「裁判制度の自殺行為」と批判し、判決を見直すよう求めている。
 一方、被告・文春側の訴訟代理人は、提出期限(控訴後50日)が過ぎた5月になっても控訴理由書を提出しなかった。このため、大阪高裁は5月7日と6月13日、被告代理人に「控訴理由書の提出期限が過ぎていますので、速やかに提出してください」と2度にわたって書面提出を催促したが、被告代理人はそれも無視。最終的に原告側代理人に文書がファックスで届いたのは、第1回口頭弁論前日の7月3日未明という「超異例」の事態になった。
その結果、原告側代理人は被告側の主張を検討することもできないまま、控訴審第1回弁論に臨むことを余儀なくされた。期日を守った原告側の控訴理由書を早々と入手し、訴訟方針を検討しながら、第1回弁論直前まで理由書を出さない被告側のやり方は、きわめてアンフェアであり、傲慢な裁判軽視というほかない。
 民事訴訟規則第182条は「控訴状に第一審判決の取消し又は変更を求める事由の具体的な記載がないときは、控訴人は、控訴の提起後五十日以内に、これらを記載した書面を控訴裁判所に提出しなければならない」と規定しているにもかかわらず、である。
 原告代理人は7月2日、文春側代理人の意見書提出遅延について、次のような意見書を高裁へ提出した。
 [1 控訴人(一審原告)は、民事訴訟規則第182条に従い、控訴の提起後50日以内である4月25日付で控訴理由書を提出したのに対し、被控訴人(一審被告)らは7月2日になってようやく準備書面(控訴理由書)を提出した(それまでは、6月30日に乙53号証を提出したのみであった)のであり、これが前記民事訴訟規則に違反することは明らかである。
 2 しかも、一審被告らは控訴理由書を作成するに際し、一審原告の提出した控訴理由書を子細に検討できたのに対し、一審原告は一審被告らの書面を検討することなく控訴理由書を提出しなければならなかったのであり、この点で、極めてアンフェアといわねばならない。
 3 よって、御庁におかれては、今後、一審被告らが書面や書証の提出期限を厳守し、かつ、訴訟上アンフェアな行為に及ばないよう、一審被告らを厳重に指導されたい。]

 この問題について、原告側代理人は第1回口頭弁論の冒頭、文書・口頭で被告側に抗議した。それを受け、中路裁判長は「当裁判所も2回、被告代理人に文書で理由書を提出するよう通知したが、出なかった。被告側は今後、こういうことのないように注意してほしい」と叱責した。
 これに対し、喜田村弁護士は「お詫びをいたします」とだけ答えた。このおざなりな対応に、原告側代理人の若松芳也弁護士は、「そんな言葉だけではとうてい納得し難い。控訴理由書提出が遅れた理由、期限を守らなかった理由を詳しく説明していただきたい」「弁護士倫理に明確に違反している」などと改めて釈明を求めた。喜田村弁護士は「C子さんに関する記事について、新しい証拠・陳述書を出すべく、原判決後から、C子さんと当時お付き合いしていたS氏と会うなどして接触してきた。その陳述書が私の手元に届いたのが先週末(6月27日ごろ)で、その結果、理由書提出も遅れることになった」と釈明した。
 若松弁護士は「被告代理人は有名・優秀な方と存じ上げているが、今言われたことが、理由書提出が遅れた『正当な理由』になると考えておられるのか」と見解を求めた。喜田村弁護士は「説明書を出せというのなら対応しますが、それが裁判の進行上、意義のあることとは思えません。お詫び申し上げた通り」と半ば開き直った。
 このやりとりは、中路裁判長が再度、被告側に注意する形で終了、続いて今後の審理の進め方について、原告・被告双方が、立証、証人申請の大まかな予定について話し合った。
 原告側代理人は、一審で名誉棄損が認められなかった部分について、甲山事件冤罪被害者・山田悦子さん、同志社大学セクハラ委員会関係者、立命館大学関係者などの証人申請を検討していることを明らかにした。山田さんは、甲山事件の資料集作りなどをめぐって中谷氏(D)が一審証人尋問で述べた証言が事実に反することを明らかにする証人。その他、「E子」記述についても一審で解明されなかった部分について立証するほか、謝罪広告の必要性を否定した一審判決認定について、専門家の鑑定意見書も提出する予定。
 一方、被告・文春側の喜田村洋一弁護士は、文春記事の「C子さん」の大学院同期生S氏の陳述書を提出した。S氏は渡辺武達教授の門下生。渡辺教授は昨年7月10日の証人尋問で、「C子さんが当時付き合っていたボーイフレンドの大学院生」「(C子さんからのメールにある)文章があることを本人からも確認した。4日前にこの文章が実在するということもメールで連絡してきた」などとしてS氏にふれ、「C子さんからのメール」の真実性を補強しようとしていた。しかし、一審判決は渡辺教授が受け取ったと主張する「C子さんからのメール」について改竄の痕跡さえ認め、全面的に信用性を否定した。
 今回提出されたS氏の陳述書は、「C子さんからS氏に宛てたメール」などについて述べているが、その「コピー」が添付されているわけでもない。いわば、渡辺教授の強い支配・影響下にある元院生による、これまでの被告側証言と同レベルの「伝聞の伝聞」に過ぎない。また、S氏は文春記者から取材を受けたわけでもなく、記事に登場したわけでもない。今ごろ、こんな周辺人物の「陳述書」を持ち出しても、記事の「C子さん」記述の信用性を立証するものにならないことは明らかと思われる。
 しかも、喜田村弁護士は、「人証(証人尋問)の予定はしていない」と述べた。つまり「S氏の証人申請は行わない」ことになる。被告側が控訴審に唯一提出した陳述書の作成者の証人尋問も要求しないのは極めて異例だが、S氏の陳述書にはその程度の価値しかないことを、被告代理人も認識しているのではないか。
結局、文春側は、控訴はしたものの具体的には何も立証できない実態をさらけ出した。控訴理由書提出が遅れた真の理由は、「立証することがない」からだったのではないか。とはいえ、文春は控訴審においても渡辺教授を前面に押し出し、「真実相当性」を主張する方針を明らかにした。文春は、渡辺教授と“心中”するという道を選択したと思われる。
 審理は以上で終わり、第2回口頭弁論は、9月9日午前11時から大阪高裁別館72号法廷で開かれることになった。今後、原告側は8月末日までに、証人申請その他の文書を裁判所に提出する。
 第1回口頭弁論終了後、「浅野教授の文春裁判を支援する会(浅野支援会)」は、大阪弁護士会館で裁判報告会を開いた。報告会には約20人が参加、代理人の各弁護士から報告を受けた後、山田悦子さんが「浅野教授の文春名誉毀損訴訟の意義」と題して講演した(その詳細は別途、ご紹介する予定)。
 その後の討論では、参加者の多くが文春側の不誠実な訴訟対応を批判するとともに、控訴審での全面勝利に向け、引き続き支援していくことを誓い合った(支援会事務局)。

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