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定年非延長の院教授58人はすべて自己都合と証明
浅野教授の地位確認訴訟・12回弁論――次回は6月7日

浅野健一・同志社大学社会学研究科メディア学専攻博士後期課程教授が、学校法人同志社(水谷誠理事長)を相手取り、2014年2月3日に提訴した地位確認訴訟の第12回口頭弁論が、2016年4月12日午後1時20分から、京都地裁第6民事部208号法廷で開かれました。傍聴した支援者らの報告をもとに支援会事務局から報告します。

担当裁判官は堀内照美判事=第6民事部総括判事、髙松みどり判事、渡邊毅裕判事補。原告代理人の武村二三夫、平方かおる、小原健司各弁護士が出席しました。被告側は代理人の小國隆輔(同志社大学法科大学院嘱託講師)、多田真央両弁護士が出廷しました。

この口頭弁論は、安倍晋三首相の盟友、同志社大学の村田晃嗣学長が15年11月の学長選で完敗し、松岡敬学長に交代してから初めての期日でした。

12日午後1時10分から京都地裁208号法廷で第12回口頭弁論がありました。今回も現役同大教員、元学生(16年3月、文学部卒)、京大生、元ゼミ生の父親らが傍聴に来てくれました。

被告側の傍聴者はいつものように、冨田安信・元社会学研究科長兼社会学部長(現在、産業関係学専攻教授)と松隈佳之・社会学研究科事務長の2人だけでした。浅野教授と被告の学校法人同志社(水谷誠理事長)との定年延長などの労働契約問題に無関係の2人しか裁判に来ないのは理解しがたいことです。研究科長・学部長の仕事は、学部の教員の権利と、学部生の教育環境を守ることです。同僚教授の業績審査や雇用問題に口出しすることは許されません。ましてや、定年延長を拒否する権限などあるはずがありません。就業規則で、定年延長は「学校法人が必要と認める大学院教授」に認められるわけで、一研究科長が判断することはできません。また、たった4人の専攻教員の密室の有志会議の決定を、専攻決定と偽り、怪文書を配って、浅野教授の定年延長反対決議を主導したのは手続きの不正義です。本来は、学校法人の事務部長あるいは、大学の事務局長が被告席に座るか、傍聴するべきです。

冨田氏と松隈氏は、火曜日の午後という勤務時間内に、本来業務ではない本裁判の傍聴をしているわけで、コンプライアンスに違反しているのではないでしょうか。

口頭弁論では、被告側が準備書面(5)、乙76~81(いずれも写し)、証拠説明書を提出、原告の浅野教授側は第10準備書面(1976年以降、70歳まで定年延長しなかった大学院教授58人はすべて自己都合と証明)を提出しました。この書面には別表として、70歳まで定年延長せずに65~69歳で退職した58人の定年不延長の理由を調べた結果を明らかにしました。

〔被告は、乙59号証を提出して、1971年(昭和46年)3月~2008年(平成20年)3月に65歳に達した同志社大学及び同大学大学院教授の実退職年月日などを明らかにした。原告は、被告の同志社大学大学院教授については、65歳を越えても教授自身が辞退するとか、大学院教授を続けることが適当でない重大な事情があるなど、特段の事情がなければ70歳までは実質的には自動的に定年延長がなされることになっていると主張してきた。

被告の乙59号証の提出と、それに基づいて原告において行った調査の結果、この原告の主張が事実であることが明らかになった。

乙59号証には、1976年(昭和51年)3月末~2013年(平成25年)3月末の期間に同志社大学、同大学院を退職した教授の氏名とその退職年月日などが記載されており、その内訳は以下のとおりである。
総人数 445名
総人数のうち大学院教授 285名
大学院教授のうち定年延長の対象とならない者合計 38名
(内訳)理工学研究所教授 4名
教養科目教員   2名
期間雇用 1名
65歳の年度末になる前に退職(死亡退職含む)31名
大学院教授のうち定年延長の対象となる者合計 247名
(285-38=247)
(内訳)70歳まで定年延長された者 185名
一度も定年延長されずに退職した者 17名
一度以上定年延長されたが70歳まではされなかった者
45名
うち死亡退職者 9名
うち年度途中での退職者など 5名

以上より、被告同志社大学大学院教授のうち定年延長の対象となった者のうち、74.9%が70歳まで定年延長されており(185名÷247名×100≒74.9)、93.1%が一度以上定年延長されている((185名+45名)÷247名×100≒93.1)。一度も定年延長されなかった者は、わずか6.9%に過ぎない(17名÷247名×100≒6.9)。被告においては、同志社大学大学院教授については自動的に、例外なく、延長される運用がなされていたことが明らかになったのである。

別表は、乙59号証から抽出した①一度も定年延長されずに退職した教授17名及び②一度以上定年延長されたが定年延長の上限(70歳)に達するまでの間に退職した教授のうち死亡退職者を除く36名の退職理由を原告において元同僚ら(現役・退職の教職員)の協力を得て調査した結果である。

その結果、乙59号証の期間に70歳に達するまでに退職した教授の退職事由は、いずれも教授自身の都合で、教授自身が自発的に退職を決めたものであったことがわかった。

すなわち、このことによって被告においては同志社大学大学院教授は自らの意思によって退職を希望するとか、定年延長を辞退するなどの事情がなければ例外なく70歳まで定年延長がなされてきたことが明らかになった。

被告は、被告が必要と認めた場合にはじめて定年延長がなされると主張する。しかしながら、乙59号証に記載のある1976年(昭和51年)~2013年(平成25年)という実に40年弱もの長期間にわたって、教授自身が退職を希望したり、定年延長を辞退したわずかの事例を除くすべての教授について、例外なく被告が積極的に必要と認めたなどということは、現実的にはあり得ない。
やはり、被告同志社大学大学院教授についての定年延長制度は、原告が繰り返し主張しているとおり、特段の事由がない限り70歳まで定年延長するという運用がなされてきたのである。実際に行われてきた実態は、かかる運用がなされてきたことを物語っている。

被告は準備書面(5)において、「研究科長が教授会(研究科委員会のことであろうと思われる)に定年延長の議案を上程したが審議の結果否決された事例は、2014年度(2015年度の定年延長事案)に文化情報学研究科において1件あるのみである。(同書面p3)」と述べて、少なくとも2013年(平成25年)11月13日の社会学研究科委員会で原告の定年延長が否決されるまでは研究科委員会で否決された事例がないことを認めている。この事実からも、同志社大学大学院教授については特段の事由がない限り70歳まで定年延長されることになっているという原告の主張が裏付けられたものである。〕

この書面で、原告側は「同志社大学大学院教授70歳定年制」が確立していることを立証しました。58人の中には、理工学研究所(15年3月末に廃止され、「ハリス理化学研究所」に改組)の教授4人も含まれているが、同研究所の教授はもともと一般教養科目の物理、化学、数学などを教えるために採用された教員で、その中には大学院前期課程教授に任用されたり、院で授業をしたりしていた教授もいたが、論文指導の院生はおらず、原則として、定年延長対象者ではなかったので、54人を調査の対象としました。
原告側は、教員の個人的な事情にまで及ぶ問題でもあり、情報提供者の匿名性を守るなどの慎重な配慮をしながら聞き取り調査を行いました。調査期間は2016年2月4日から3月30日。

調査したのは原告、同志社大学法科大学院嘱託講師を務める代理人の小原健司弁護士(同志社中学校から大学まで同志社)、同志社大学人文科学研究所の庄司俊作教授(原告側が証人申請)らです。同志社大学の元教員、現職教員、職員、元職員、組合関係者、卒業生らが協力してくれました。原則は面談での調査としましたが、郵便、電子メールで問い合わせたケースもあります。

原告側は「次回までに追加の書証を提出する」と表明。

堀内裁判長は被告側に「原告の第10準備書面に対する反論はするか」と質問。小國弁護士は小声で、「たいしてはしないが、少し反論する」と回答しました。

裁判長は「これまでの主張、立証をふまえて人証での立証計画を見直すかどうか(証人、立証趣旨、尋問事項)、双方検討されたい」と述べました。

次回期日は 2016年6月7日(火)午後1時30分です。
「裁判は時間はかかっているが、非常に順調に進んでいる」(浅野教授)。6月7日の次回期日で証人の採否が決まり、本裁判のハイライトである証人尋問の日程も決まると思われます。

原告側は、浅野教授を「不良教授」と攻撃する被告側の主張に反論するため研究者らの陳述書などを5月末までに提出する予定です。証人尋問は8月か9月になりそうです。一審判決が出るのは年末か来年初めにずれ込みそうです。「2年以内の判決」を求めた裁判迅速化法の趣旨に沿わない展開ですが、被告の主張のウソと矛盾を追いつめていることは事実です。

本裁判を担当している京都地裁民事6部の堀内照美裁判長は4月12日、仁和寺(京都市右京区)の付属施設・御室会館で料理長だった男性従業員が、長時間労働で精神疾患を発症したとして、同寺に対し、未払いの時間外手当や慰謝料など計約4700万円を求めた訴訟で、約4200万円の支払いを命じました。浅野教授の裁判と同じ日に同じ法廷で判決が言い渡され、テレビや新聞で大きく報道されました。

〔 仁和寺側は、男性従業員は管理監督者で時間外手当は発生しないと主張したが、判決は「男性はタイムカードを押すよう求められていた」として退けた。過労死ラインとされる月80時間残業を超えた月240時間の場合を含め、1年3カ月分の時間外手当約1千万円の支払いを命じた。また精神疾患発症について「349日連続勤務など、過重な業務だった」と指摘した。

仁和寺は「主張がほとんど認められず残念。今後の対応は判決文を精査して判断する」とコメントした。 〕(京都新聞)

この裁判は、全国一般・きょうとユニオンが支援していました。きょうとユニオンの役員は浅野教授の裁判にも協力してくれると表明しています。

請求額4700万円に対し、約4200万円の賠償を命じたのは画期的です。労働者の側にしっかり寄り添った判決だと思います。
(以上)