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「怪文書5人裁判」第2回弁論準備手続期日のご報告

11月20日午前10時半から約20分、怪文書5人裁判=平成27年(ワ)第2120号損害賠償請求事件=の第2回弁論準備手続期日が京都地方裁判所第3民事部準備室(テレビ会議システムによる弁論準備手続)で開かれました。原告側は東京地裁501号法廷に出頭して、参加しました。

 山縣敦彦弁護士作成の期日報告書に基づき、支援会から簡単に報告します。5人裁判は前回に続き今回もいい流れでした。 

出廷者は裁判所が神山隆一裁判長、阿波野右起左陪席(受命裁判官)。原告側は代理人の弘中惇一郎・山縣敦彦両弁護士と原告本人でした。被告(渡辺武達名誉教授、小黒純・竹内長武・佐伯順子・池田謙一各教授の5人)側は代理人の小國隆輔・多田真央両弁護士が出廷しました。

浅野教授の雇用闘争を支援している鶴見太郎さん(同志社大学文学部哲学科12年卒)が東京地裁の法廷で傍聴しました。

まず、被告側が11月13日付の準備書面(1)を陳述、同日付の証拠説明書2、乙10~19号証の書面を提出しました。被告側はこの書面で、名誉毀損には「マスコミ型」と「非マスコミ型」の2類型があり、問題の「怪文書」(13年10月30日配付資料)は後者の場合にあたり、公共性、公益性、真実性の三要件に関して、差異があるという不可解な主張を展開しています。

弁論では、神山裁判長が主張整理に入り、いきなり、「この準備書面(1)ですが、いささか分かりにくい」と被告側に切り出し次のように述べました。「準備書面には主位的主張と予備的主張とが書かれているが、主位的主張の中にも予備的主張と同じ真実性の主張が混ざってしまっている。これでは予備的主張をする意味が全く無いのではないか。この予備的主張というのはどういう意味合いなのか。抗弁になるのか」。

 小國弁護士は「従来通りの3要件の主張が予備的主張である。主位的主張は内容の真実性を含む様々な要素の総合考慮の主張である。そこでは内容の真実性は必須の要件では

なく、あくまで考慮要素の一つと考えている」と回答しました。

 神山裁判長は「うん?」と疑問を呈し、「分かりにくい。主位的主張と全く同じ話になってくる。その辺りがわかりにくいので整理してほしい。補足していただいて、その上で原告から反論してもらうことにする」と述べました。小國弁護士も了解しました。裁判長は被告の補足説明書面の提出期限を12月15日としました。

裁判長は「原告側には、反論の準備を始めていただきたい。それくらい時間が必要か」と聞き、弘中弁護士は「年末年始もあるので来年1月の最終の週の中ごろにしてもらいたい」と回答。裁判長は1月27日を指定しましたが、小國弁護士が「松山で集中審理があるので差し支える」と述べ、同(原告)は来年1月27日になりました。

また、裁判長は「本件文書(甲9=怪文書)の作成主体、作成名義人と配布者は被告のうち渡辺を除く4人という理解でよいのか」と被告側に質問。小國弁護士は「そのとおりである」と答えました。

次回期日は来年2月12日(金)午前11時00分、第3回弁論準備手続期日(東京地裁でテレビ会議)と決まりました。前述のとおり、書面提出期限(被告)は12月15日、同(原告)は来年1月27日です。

次回までの宿題として、被告準備書面(1)及び12月15日までに出される準備書面(2)に対する反論を準備します。

次回の弁護団会議は12月24日(木)10時、ヒロナカ法律事務所です。

原告側が東京地裁で見たテレビ画面(固定カメラ)には、裁判官2人と被告代理人弁護士2人が映っていたが、顔をよく見えなかったようです。浅野教授は「ラウンドテーブルの片側に横に並んで4人が座っていた。まるで、出来の悪い論文を書いてきた院生を、厳格な指導教授が叱責しながら指導しているようだった」と感想を話しています。

弘中弁護士は「被告は、本件のような教授会、企業の役員会などでの配布資料が名誉毀損に当たるかどうかを非マスコミ型とし、真実性の証明が緩くてもいいような主張をしているが、マスコミによる名誉毀損であろうとなかろうと、真実性の証明は同じはずだ。むしろ、締め切り時間などの制約がある中で報道するマスメディアの場合のほうが、真実性を維持するのが難しい。定年延長のように雇用に係わる重要な会議で配付された文書に真実性が要求されるのは当然で、時間をかけてじっくり作成すべきものだ。配付文書に書かれていることが虚偽であることを論証していきたい」と話しました。

名誉毀損にマスコミ型と非マスコミ型の2つがあるという主張は聞いたことがありません。仙台にそういう判決があるというのですが、よく分かりません。裁判官たちも、小國弁護士の主張に強い違和感を持っているようです。

原告の浅野教授は「刑法でも民法でも、名誉棄損にマスメディア型とか非マスメディア型という区別があるというのは誰が考えたのかさっぱり分からない。屁理屈としか言いようがない。マスメディア以外でも、ネットやSNSなど複雑で多様な情報の流れが現在ある中で、メディア型と非メディア型に分けて論じるのは全く無意味だ。裁判官たちもそれで、『分からない』『意味がない』を連発したのだと思う」と話しています。

5人裁判では、配付文書自体が名誉毀損であることと、浅野教授の定年延長に関し、公正な審査を受ける権利を奪われたという争点があります。同志社大学では、大学院教授は全員、研究科委員会での実質的な審議もなく、自動的に70歳まで定年延長がされることになっている中、浅野教授の定年延長を阻むという悪しき意図をもって、メディア学専攻・学科同僚教員(院は5人、学部学科1人=河崎准教授)によってなされた違法行為であったことが重要です。配付文書は研究科委員会での審議のための資料などではなかったことです。

そのためには、「不良教授・浅野」論を完璧に突き崩すことが必要です。法的には「総合的に判断した結果、65歳でやめていただいた」という論法が通じることのないよう、詰めるべきでしょう。

浅野教授は定年延長を認められなくなった時まで、学内の誰から注意を受けたというようなことは全くありません。解雇などのケースの場合、これは重要なことです。実際、浅野教授は「65歳退職」の際、学校法人同志社から感謝状ももらっています。

仮にメディア学科の「専攻会議」(実際は小黒氏ら4人の密室会議)、そして研究科委員会が定年延長を認めないことを決定できるとしても、事柄の性格上、この場合も解雇と同様、「突然」というのは、法的に行き過ぎだ、ということを主張していくべきでしょう。

支援者の庄司俊作同志社大学人文科学研究所教授は「5人名誉棄損裁判と地位確認裁判とかなり重なる部分があるのではないか。①70歳定年延長が事実上、制度化していることがこの間のやりとりによって明確になったことが同裁判を闘う上で第1の収穫になると思う。②また、5人裁判の中心になっている配付文書は浅野教授の研究業績についてケチをつけているが、これも地位確認裁判でサイニー等の資料により具体的に反論している。③さらに、5人と冨田安信研究科長=当時=の陳述書の「浅野不良教授論」について、この程度の話を持ち出して定年延長を阻もうとした同僚教員の意図自体の悪質さを、地位確認裁判でもさらい強く主張すべきではないか。④学科会議において同僚教員が正当な理由がなく、よってたかって、先生の定年延長の阻止のため動いたことは、明らかに「集団的ハラスメント」である。いずれも、名誉棄損と地位確認の裁判はかなりの部分セットにして闘う必要があることを示すものだと思う」と話しました。

原告側は、この訴訟を東京地裁に提起しました。しかし、被告側が、不法行為の現場が京都であり被告全員が近畿在住であるという理由で、移送請求を行いました。これに対して東京地裁は、被告の中で佐伯氏は東京に住所があると認定しましましたが、残る4人は近畿に居住していると判断し、京都地裁への移送を決定しました。こういう場合は、通常は電話会議で行われますが、神山裁判長は2回目をテレビ会議で行うと前回決めました。今日の弁論の最後に、弘中弁護士が「次回もテレビ会議ですか」と尋ねると、裁判長は「そうです。この件が終わるまでテレビ会議で行います。(京都での)裁判の様子が見えた方がいいでしょう」と話しました。

山縣弁護士が、テレビ会議の傍聴に関して京都地裁の書記官に聞いたところ、「裁判は京都で行われているので、東京で傍聴するのは本来おかしいのだが、1人だけなら認める」ということで、鶴見さん(支援者)の傍聴が認められました。

確かに、裁判官、相手側も見えるので、電話よりテレビによる手続きの方がベターだと思います。東京でのテレビ会議の世話をしてくれた東京地裁民事部の担当者によると、テレビ会議による弁論手続きは前から行っているそうです。弘中、山縣両弁護士は初めての経験だそうです。

神山裁判長は諫早湾の事案で大規模の国家プロジェクトを批判する決定を出し、飲酒運転で懲戒解雇された高校教諭への処分が行き過ぎなどの判決を出した裁判官で、はっきりものを言う裁判官だという印象です。

5人裁判の今後に注目ください。

(了)