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原告が法人主張に反論書面提出、次回から証人決定へ、次回期日は2月19日 ――浅野教授の地位確認訴訟・第5回口頭弁論

 浅野健一・同志社大学大学院社会学研究科メディア学専攻博士後期課程教授が学校法人同志社(水谷誠理事長)を相手取り提訴した「従業員地位確認等請求訴訟」=平成26年(ワ)第310号=の第5回口頭弁論が12月24日午前10時から京都地裁(第6民事部)208号法廷で開かれました(担当裁判官は堀内照美判事=第6民事部総括判事、髙松みどり判事、渡邊毅裕判事補)。傍聴した支援会会員の報告をもとに、支援会事務局から報告します。

 口頭弁論は時刻通りに開廷しましたが、被告側代理人の國隆輔弁護士(大阪の俵法律事務所)は3分遅刻して入廷しました。

  原告側が第4準備書面を提出し、堀内裁判長が被告代理人の多田真央弁護士に反論に要する期間を聞いたところ「1カ月半いただきたい」と回答、裁判長は原告側代理人の意見も聞いた上で、被告側書面提出の締切りを2月13日としました。

  裁判長は「双方の主張が往復した後、人証(証人調べ)に入っていきたい」と述べ、次回期日は2月19日(木)午前10時10分から同じ208号法廷で開かれることになりました。

 原告側の傍聴人は、東京から駆け付けた浅野教授の「新聞学原論」元受講生の介助労働者を含め11名、被告側の傍聴者は今回もゼロで、仮処分の審尋と本裁判第2回期日までは毎回傍聴していた冨田安信社会学研究科長・社会学部長は、今回も姿を見せませんでした。

報告会で浅野教授が「名誉毀損で4教授と渡辺氏提訴」表明

 閉廷後、京都地裁内の弁護士控室で報告会が開かれました。

  小原弁護士から「今日は前回提出した準備書面の反論をし、残した部分を提出しました。2月19日で双方の書面による主張は一応終わり、証人調べの準備へと移っていくでしょう。1月19日午前10時から大阪の武村二三夫事務所で弁護団会議を行うことになったので、そこで更に主張すべきことがあるかどうか検討することになります」と説明がありました。

  次いで原告の浅野教授が次のように話しました。

  ◇           ◇

  今年7月末、病を患い、2回法廷を欠席しました。その間も書面のやり取りだけの、あまり変化のない法廷にもかかわらず、毎回たくさんの方々が傍聴をしてくださり、感謝申し上げます。多くの傍聴者が傍聴席を埋めていることで、裁判官たちには「市民が注目している。しっかりとした判決を書かなければならない」という、良いプレッシャーになっていると思います。今日も法人側は誰も傍聴に来ていませんが、生身の労働者の首を切るという行為をしたのだから、法人側も人事当局者か誰かが傍聴すべきです。

  労働裁判は初めてなので、労働問題の専門家である弁護団にお任せしています。弁護団は「他の大学院教授には全員定年延長が認められているのに、20年間院教授の浅野教授にだけ認められていないのは不当」という一点に絞って闘ってくれています。武村先生から閉廷後、「次回弁護団会議で10・30怪文書についての扱いをどうするか話し合いたい」という前向きの提案がありました。

  被告の法人は、私が院教授のレベルにないと決めつけた上で、「浅野が辞めても学生は一人も困っていない」「13年の10月29日以降浅野が教授の権力を濫用して学生に支援を強制している」と主張していますが、この2点は虚偽で、絶対に許すことができません。実際は13年度博士後期課程2年生だった院生を先頭に、院と学部のゼミ学生たちが、「指導教授が急にいなくなると困る」という危機感を抱いて自主的に行動し、私はむしろ同僚教員との混乱を心配していました。しかし、当時支援してくれていた現役の元ゼミ学生約40人のほとんどは去ってしまいました。同志社PRESS(学内の新聞)の記者が8月に私の解雇問題の取材を始め、メディア学科の学生に、「浅野教授がいなくなってどういう影響があるか」を聞きたいと学生を探しましたが、協力者は2人だけでした。

  現在のメディア学科の教員は、14年4月2月に青木貞茂教授の後任として赴任してきた元サントリー宣伝部の教授以外の6人すべて私を追放した教員ですが、元浅野ゼミ(13年度1~3年)の学生約40人のほとんどが、この6人のゼミに入っています。私を支援していることがわかると、6人にいじめられると怖がっているのだと思います。現在の元ゼミ学生の沈黙は、6人がいかに怖いかを示しています。「浅野先生を追放するような人たちだから、力のない学生に何をするかわからない」と私に言った学生もいます。今の学生は、大学の主体は学生であり、教員が悪いことをしたら糾弾するという構えがありません。長いものに巻かれろというドライな学生が多いんです。本当に情けないと思います。

  昨年度の3年ゼミ(13人)の中心的学生がある大手新聞社に採用内定したことを、11月に別の新聞社幹部からの電話で知らされました。「○○さん良かったですね。△△新聞に決まったのですね」と言われたのですが、私は何も聞いていないのでちんぷんかんぷんでした。すると、この幹部が「浅野ゼミの○○さんですよ。うちの新聞は最後の面接でだめだったのですが」と説明してくれ、それで元浅野ゼミの学生のことだと分かりましたが、このやりとりに、この幹部はきょとんとしたようです。この学生が今どこのゼミにいるかも私は知りません。新聞社側は、この学生を浅野ゼミ生と思い込んで面接したそうですが、それでよいのでしょうか。

  13年10月29日から12月中旬まで、私の支援の先頭に立った院生も、手塚オサム研究者の竹内長武氏の下で「原発とジャーナリズム」の研究を続けているようです。しかし、「ジャーナリズムは専門外で全く分からない」と学生を前に公言する教員たちの下でジャーナリズムの研究をすることが可能でしょうか。共同通信でもいろいろ酷い目に遭いましたが、今回の同志社大学のやり方はこれまで以上に理不尽で冷酷で悲しい。現在の日本社会の反映かと思います。

  このままにはしておけないので、近く怪文書を書いた4人と渡辺武達教授を東京地裁に名誉棄損・損害賠償で提訴するつもりです。

  ◇           ◇

裁判傍聴の支援者が浅野教授を激励

  浅野教授のあいさつを聞いて、裁判を傍聴した支援者から質問、意見が相次ぎました。

  同志社大学文学部哲学卒業生の鶴見太郎さんは、「浅野ゼミ生が関わらなくなったのは、大学から学生にプレッシャーをかけられているからでしょうか」と質問。

  これについて、浅野教授は「たぶんそうでしょう。誰かジャーナリストに取材してほしい。もし教員が圧力をかけているなら、パワハラです。冨田安信研究科長・社会学部長は13年12月初旬から私が指導していた院生7人の自宅へ手紙を送って、「次年度、浅野教授がいなくなるので指導教授の変更のことで相談したい」と連絡している。小黒純教授、河崎吉紀准教授らは今年4月以降、ゼミなどの時間中に、浅野関係の学生署名、裁判、浅野ゼミ主催の7・5小出裕章さん講演会などのイベントにかかわるなと、院生や元浅野ゼミの4年生に威圧しています。学生の公的な研究団体であるメディア学研究会について、河崎准教授は「これまで一部の者が研究会を濫用していた。今後は学科の教員が役員を決める」などと公言しています。これは学生自治への不当な介入です。それらを証明する学生からのメールが複数あります」と答えました。

  また、同志社大学人文科学研究所の庄司俊作教授は「名誉棄損裁判と本裁判を並立させるのは当然だと思います、今後の裁判の予定は」と質問。

  小原弁護士は「余程のことがない限り、一応双方の主張は終えたと考えています。こちらは大原則、特段の事情がない限り定年延長は全員通ってきたと主張しています。それ以上に踏み込むと『大学の自治』で反論されないか考えているところです」と答えました。これに関連して、京都府木津川市の長野博行さんから「大学の自治の問題として同志社は理解しているのですか」との疑問が呈され、定年延長と「大学の自治」について議論がありましたが、ここでは割愛します。

  さらに、近畿のある大学教授は「浅野ゼミ主催のシンポジウムや講演会に何度か参加してきましたが、こんなことになり非常に残念です。私の勤務する大学にも定年延長制度があり、他人ごとではない。裁判では勝っていただきたいので、頑張ってください。協力できることがあれば協力したいと思っています」と浅野教授を激励しました。

  京都市内の私立大学4年の学生は「昨年4月に開かれた浅野ゼミの講演会に参加しました。2年生ゼミにも参加させてもらいましたが、他大学の学生もあたたかく迎えてくれた。浅野ゼミは開かれた場所で、私にとって学ぶことが多かったのに、こんなことになって、びっくりしています」と話しました。同様に、京都市民のAさんは「浅野ゼミ主催の行事に参加していましたが、浅野先生の解雇は知らなかった。フェースブックで鶴見君が浅野先生の裁判に行くと言っていたので飛んできました」と話しました。

  さらに、同志社大学政策学部4年の学生は「朝鮮との日本との関係に関心を持ち、昨年10月から浅野先生の新聞学原論を聴講して、今年も履修しようとしていたら、浅野先生が追放されました。この裁判の傍聴を続け、先生の雇用闘争を応援しています」と発言。京都市のボランティア活動家・山田健造さんも「本当に不合理だと思います。応援していきたい」と述べました。

  東京から駆け付けた映画監督の大道正史さんは「大阪・釜ヶ崎の映画を撮っています。私も大学時代に指導教授が他の教授たちのいじめにあい、自分の意思で別の大学に移ってしまった経験があります。学生はとても惨めでした。浅野ゼミ、浅野研究室は、学生たちが主体になって作り出し、社会問題を取り上げてきた歴史もあるのに、それを大学が潰したのは酷いことと思います。浅野先生を追い出すのは大学の損失です」と発言。さらに鹿砦社の福本高大さんは「去年の11月から経緯を見てきましたが、本当にひどい話です。最初は学生が浅野先生を支えていましたが、大学のプレッシャーで去って行ったのは日本社会の縮図とも見て取れます」と語り、傍聴者の鹿野健一さんは「厳しい戦いだがこれからも支援して行きたい」と話しました。

  報告集会の後、裁判所近くの店で昼食をとりながら懇談。鶴見さんは「同志社の反動体制は酷い。私は苦学生で、入学時から授業料半免の給付奨学金を受給していましたが、3・4年次に大学側の勝手な言い分で奨学金を打ち切られ、60万円を貰えませんでした。大学の経営陣がサブプライムによる資産運用に失敗して、10億円の損失金の穴埋めとして奨学金予算枠を大幅に減らしたというのが原因です。このことが許せず、私は当局への抗議活動を始めることになります。私と同様に本来なら貰えるはずの奨学金を受け取れなかった学生たちも多数います。そのために、貸与奨学金もあり、現在大変厳しい状況です。大学時代、学ぶことの意義が見いだせず、大学をやめようかと真剣に悩んでいたのですが、そんなときに『新聞学原論』の授業を聞いて、ここに大学の意義があると思いました。私が大学をやめなかったのは浅野先生の『新聞学原論』を聞いたからです」と話してくれました。

  庄司教授は「すでに大学院博士後期課程教授である浅野先生について、定年延長の可否の『審査』など言語道断の仕儀です。だったら、何のための大学院教授なのか。業績を云々する資格の全くない4名が勝手に定年延長の審査をした『決定』過程そのものが名誉棄損とハラスメント以外の何物でもない」と憤りを込めて話しました。

  次回期日・2月19日午前10時10分から京都地裁208号法廷に、支援者の皆さんの傍聴をお願いいたします。