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原告が学校法人側「定年延長手続き」書面に反論、監視まがい「警備」は解消、次回期日は12月24日――浅野教授の地位確認訴訟・第4回口頭弁論

浅野健一教授が学校法人同志社(水谷誠理事長)を相手に起こしている「従業員地位確認等請求訴訟」=平成26年(ワ)第310号=の第4回口頭弁論が10月29日(水)午前10時から京都地裁(第6民事部)208号法廷で開かれました(担当裁判官は堀内照美判事=第6民事部総括判事、髙松みどり判事、渡邊毅裕判事補の3人)。

傍聴した支援会メンバーの報告をもとに支援会事務局から報告します。

●原告支援者8人が傍聴、被告側は傍聴ゼロ

堀内裁判長は原告・被告双方が揃ったのを確認し、定刻2分ほど前に開廷しました。

最初に、原告側が10月22日付の第三準備書面を陳述し、甲57~59号証(現役学生・メディア学科卒業生・市民の署名)と証拠説明書を提出。続いて裁判長から「以上でよろしいでしょうか。(被告第1準備書面に対し)追加の主張がおありのようですが」との問い掛けがありました。これについて、原告弁護団が協議したうえで、「1カ月時間をください」と要請、「次回までに被告第1準備書面に対してさらに主張するかどうか検討し、主張があればする」と態度表明しました。

裁判所は「原告側の追加主張と、第三準備書面についての被告の反論は、次回に原告の追加主張が出た後に行ってもらう」と表明。次回期日は12月24日(水)午前10時に決まり、第4回弁論は5分もたたずに閉廷しました。 

今回の口頭弁論には、庄司俊作・同志社大学人文科学研究所教授、ジャーナリストの鹿野健一さん(支援会)、福本高大さん(鹿砦社)、ジャーナリストの平井紀子さん(長岡京市)、長野博行さん(京都府木津川市)、同志社大学政策学部4年生、ボランティア活動家(京都市山科区)、支援者(山口県山口市)の8人が傍聴に駆けつけました。

一方、被告側の傍聴者は今回もゼロ。前回期日に続き、冨田安信・同志社大学大学院社会学研究科長(社会学部長兼任)と松隈佳之社会学研究科・社会学部事務長の姿はなく、被告代理人の俵法律事務所(大阪)の小國隆輔、多田真央両弁護士が出席しただけでした。冨田氏は2回連続の欠席です。法人同志社の総務人事担当者は、仮処分申立事件の審尋も含め、まだ一度も姿を見せていません。

前回の口頭弁論で法廷の内外にいた裁判所職員の警備は、今回はなく、平常に戻りました。これは、支援会が10月22日に裁判官3人に郵送した「浅野氏の地位確認請求訴訟に関する要請書」の効果と思われます(注1)。「原告浅野支援者が裁判所内でビデオ撮影した」というウソを裁判所総務課長へ告げ口した小國弁護士、冨田社会学研究科長らは虚偽申告を撤回・謝罪していません。

●「今年の定年延長者との対比検証」を支援者が提言

弁論終了後、裁判所1階の弁護士控え室で、弁護団を代表して小原健司弁護士が、傍聴した支援者に、今後の裁判の流れや争点を説明しました。小原弁護士と支援者との質疑は1時間ほど続き、午前11時10分に終了しました。

支援者からの「何とかもう少し早く裁判を進められないのか」との問いに対し、「時間の問題ではなく、勝つことが大切。そのためには浅野教授の同僚のメディア学専攻で悪意を持った発議を行った教員たちへの名誉毀損提訴が必要ではないか」「裁判所に同志社の現状を的確に認識してもらうことが重要だ」など、活発な意見が相次ぎました。

庄司教授は次のように発言しました。

「京都大学や大阪大学など、いわゆる一流大学の教授の座を蹴って同志社大学へ移ってくる教授の多くは、国立大学では65歳で定年になるのに、同志社では、70歳までの定年延長が事実上は保証されているからです。65歳から70歳までの報酬は、年間1,700万円、総額約1億円になります。定年延長は『特殊な特権』という認識ではありません。

同志社ではたとえ大した業績がなくても、院生がいなくても定年延長されています。私の計算では97.5%が延長されています。ましてや浅野氏は業績もあり、浅野ゼミに入ることを希望していた院生・学生も多数いました。学生からの署名も多く寄せられました。それらのことを考慮した場合に、同志社の行為は、教授会の裁量権を逸脱した悪質なハラスメントにほかならないという視点で裁判を闘うべきです。

同志社大学大学院社会学研究科では今年、5人の定年延長がありました。この裁判で、その5人の業績(論文数)、指導院生数、素行不良などを浅野さんと具体例として対比してみてはどうか。指導する院生もいない教授が定年延長をされている場合もあるのですから」

この提言について、小原弁護士は、「そのような実例があるなら、是非とも次回期日の準備書面に加えてみたい」と述べました。

このほか、「浅野氏が東京で起こす予定の名誉棄損の裁判と、からめて闘っていくべき」という意見も出されました。

2013年10月29日に始まった「定年延長妨害策動」をリアルタイムで見てきた支援者の鹿野健一さんは「15年度の浅野ゼミの開講も厳しい状況であり、浅野氏は多大な損失を被っている状態にあります。私たちは、一審で必ず勝訴を勝ち取らなければいけない。いずれにしても、このような理不尽なことを野放しにしてはならない、絶対に負けないという気持ちで勝訴を目指して頑張りましょう」話しました。

別の支援者は「今回の浅野おろしは、朝日新聞叩きと同じ構図だと確信しています。ジャーナリズム不在のとても恐ろしい世の中になってしまいました。でも、今回も「浅野先生の応援に来ました。新しい方が2人来てくださったことはとてもうれしいことでした。皆さんとともに、勝利を確信しながら共に闘っていきたいと思います」と話した。

今後の裁判の流れは、次回期日の12月24日に原告側の追加の準備書面を提出し、さらに原告の浅野教授が陳述書を出す予定です。

 

(注1)支援会が裁判官に送付した要請書は以下のとおりです。

【浅野氏の地位確認請求訴訟に関する要請書】

京都地方裁判所第6民事部 

裁判官 堀内照美様、髙松みどり様、渡邊毅裕様

2014年10月22日 浅野教授の文春裁判を支援する会事務局長・山口正紀

拝啓 時下ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。

浅野健一・同志社大学教授が学校法人同志社(水谷誠理事長)を相手に提起している「従業員地位確認等請求訴訟」に関し、原告を支援している「浅野教授の文春裁判を支援する会」事務局長・山口正紀と申す者です。

突然、このような書状を差し上げる無礼、お許しください。

浅野教授は2005年11月、『週刊文春』にありもしない「セクハラ疑惑」を報じられ、重大な報道被害を受けました。これに対して浅野教授は『週刊文春』を発行した文藝春秋社を名誉毀損で提訴し、ほぼ全面的に勝訴、確定しました。

私・山口は1973年から読売新聞記者として取材・報道活動に従事(2003年末退社)する傍ら、1985年に発足した「人権と報道・連絡会」世話人として長年、浅野教授とともに活動しています。その活動を通じ、浅野教授に関する「文春報道」が、いかにでたらめなものであるかを熟知する者として、前記「浅野教授の文春裁判を支援する会」を発足させ、支援活動を続けてきました。

本「従業員地位確認等請求訴訟」についても、浅野教授に対する「定年延長妨害」が「文春報道」以前から続く同志社大学内の「浅野教授バッシング」の一環ととらえ、「文春裁判を支援する会」として支援しているところです。

前置きが長くなりましたが、本件訴訟を担当されている裁判官・堀内照美様、髙松みどり様、渡邊毅裕様に、ぜひご検討・ご対応いただきたいことがあり、以下、要請する次第です。

私たちは9月上旬、下記の質問・申入書を本件訴訟被告代理人に送付しました(申入書が配達されたことは証明済みです)。まずはお目通しください。

◇           ◇

【浅野氏の地位確認請求訴訟に関する質問・申入書】

小國隆輔様、多田真央様

2014年9月11日 浅野教授の文春裁判を支援する会事務局長・山口正紀

拝啓 時下ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。

浅野健一・同志社大学教授が学校法人同志社(水谷誠理事長)を相手に提起している「従業員地位確認等請求訴訟」に関し、「浅野教授の文春裁判を支援する会」事務局長として、被告「学校法人同志社」代理人であられる小國隆輔、多田真央様におうかがいしたいことがあり、以下、質問させていただきます。

本件訴訟の第3回口頭弁論が8月20日午前、京都地方裁判所208号法廷で開かれた際、これまでの弁論期日にはなかったことが起きました。

一つは208号法廷や同法廷近くの廊下に、裁判所職員と思われる人たち(胸に裁判所バッジを付けていた)数人が立ち、本裁判傍聴者の動きを目で追っていたことです。傍聴した原告支援者の中には、「まるで裁判所から監視されているようで気持ち悪かった」と不快感を表明する人が複数いました。

二つ目は、原告代理人の武村二三夫弁護士が、本件弁論が始まる前に208号法廷の傍聴席でパソコンを開いたところ、堀内照美裁判長から「スマホやパソコンは切るように」と注意されたことです。ふだんはないことで、武村弁護士が弁論の際、書記官に「パソコンの使用は禁止ですか?」と聞くと、堀内裁判長が、「代理人の方が使用されていたのですか、失礼しました」と謝りました。

この「ふだんはない」二つの出来事に関して確実に言えるのは、「裁判所が傍聴者の行動に厳しい監視の目を向けるようになった」ということです。

裁判所がそうした行動をとった原因として、私たち支援会では、〈被告ないし被告弁護人による裁判所への「事実に反した不当な通報」があったのではないか〉と考えています。そう推測する根拠は二つあります。

第一に、本件の第2回弁論が行われた6月18日から9日後の6月27日、京都地裁の藤本昌彦総務課長から原告代理人の武村弁護士に、概略以下の内容の電話があった、という事実です。

①6月18日の法廷後、「原告の支援者が被告側関係者をカメラで撮影した」との被告代理人の指摘を受け、書記官が原告代理人に注意した②その後、被告代理人から、「地位保全の仮処分を求めた裁判の審尋期日の際にも同様のこと、カメラによるビデオ撮影があった」と追加して申し入れがあった③裁判所としては申し入れの事実は確認できていないが、庁舎管理上、大きな問題であり、今後、無断で撮影しないよう注意してほしい――。

第二に、ジャーナリスト・中嶋啓明氏が本件「写真撮影問題」に関し、京都地裁に取材したのに対し、藤本総務課長が7月1日、電話で概略以下のように答えた、という事実です。

①6月18日の口頭弁論後、被告側からの申し出を受け、書記官が原告代理人に写真撮影に関して注意したという事実があった②その上で、以前の仮処分の審尋の際にも同様に、ビデオ撮影の事実があったという情報に接したので、仮にそのようなことがあっては困ると考え、今後そのようなことはないようにとの趣旨で武村弁護士に電話で連絡した③その際、武村弁護士からは、原告代理人としては撮影を現認しておらず、被告と原告の支援者が向き合って話しているのを見たなどの話があった④来庁者のプライバシーを保護し、安心して裁判所を利用してもらうために、撮影は原則として禁止しているので、そのような一般的な話として裁判所の考えを伝えた⑤実際に撮影があったかどうかについて、事実認定等をし、注意したというものではなく、武村弁護士への電話連絡について問題があったとは考えていない――。

以上、二つの事実から推認されるのは、貴職ら被告代理人が京都地裁に対して、①6月18日の弁論期日に、原告支援者が被告関係者をカメラで撮影した②それ以前の仮処分の審尋においても、原告支援者が被告関係者をビデオ撮影した――と通報し、それを受けて裁判所側が本件裁判の傍聴者の行動を「監視」するようになった、ということです。

そこで、貴職らにおうかがいします。

第一に、貴職らが、①6月18日の弁論期日に、原告支援者が被告関係者をカメラで撮影した②それ以前の仮処分の審尋においても、原告支援者が被告関係者をビデオ撮影した――と京都地裁に通報されたのは事実ですか。

第二に、上記のうち、「②それ以前の仮処分の審尋においても、原告支援者が被告関係者をビデオ撮影した」と通報されたのが事実としたら、その「ビデオ撮影」は、いつ、だれによって行われ、それをだれが確認したのですか。これについて支援会として調査しましたが、過去の仮処分審尋において、支援会に関係する傍聴者が「被告関係者をビデオ撮影した」事実はありませんでした。

①「6月18日の写真撮影」については、支援会としても、その原因・経緯は別の問題として「撮影の事実」を認めています。6月18日の出来事については、同日夕、書記官から原告代理人に「注意」があり、写真を撮影した支援者は原告代理人から裁判所の「注意」を伝えられて、当該写真を廃棄しました。

ただし、「裁判所内における写真撮影の一律禁止」に関しては、それが一般市民(本件の原告支援者を含めて)に必ずしも周知徹底されていないこと、記者クラブメディアに対する特権的な例外措置(法廷内撮影許可)、庁舎管理規則自体の違憲性の疑いなどさまざまな問題があり、支援会として全面的に受容しているわけではありませんが、ここではその議論は省きます。

問題は、6月18日以後、被告代理人である貴職らが、期日を改めて、あたかも「原告支援者が以前にも裁判所構内でビデオ撮影した」とする虚偽の内容を裁判所に通報された、と推認されること、それによって、裁判所が「原告支援者が常習的に裁判所構内で写真・ビデオ撮影している」と誤認し、支援の傍聴者を監視・威圧するような職員配置を行なったと推認されることです。

この「通報」が事実ならばなぜ、貴職らは何を根拠にそのような「通報」をされたのか、これについて、明確な釈明を求めます。

また、貴職らの事実に反する通報によって、裁判所が「原告支援者が常習的に裁判所構内で写真・ビデオ撮影している」と誤認し、支援者を監視・威圧するような職員配置を行なったことについて、支援会では貴職らの責任を問い、通報内容の撤回並びに真摯な謝罪を求めるものです。

以上、支援会として申し入れるとともに、質問への回答を求めます。回答は、勝手ながら本状到着後1週間以内に、下記までお願いします。                          

なお、ご回答がない場合、本申入書を添えて、京都地方裁判所に事実関係の調査を求め、被告代理人に対する適切な処置を求めることを申し添えます。

敬具

◇           ◇

以上の申入書に対して、送付後1カ月以上たった10月22日現在も、被告代理人からは一切、返答がありません。

このため、申入書で通告した通り、以下、貴裁判所に事実関係の調査を求め、被告代理人に対する適切な処置を求めるとともに、10月29日に予定されている第4回弁論期日における適切な対応を要請する次第です。

1 被告代理人が貴裁判所に「原告支援者が以前にも裁判所構内でビデオ撮影した」などとする虚偽の通報をしたことについて。 

被告代理人の「通報」行為については、藤本昌彦総務課長が認めています。

通報内容が「事実」かどうかについて、被告代理人は回答を回避しました。

被告代理人の「通報」が根拠もなく虚偽であることは、私たちの調査結果及び被告代理人の「無回答」から明らかです。

しかし、藤本総務課長はこの「通報」をもとに、「裁判所としては申し入れの事実は確認できていないが、庁舎管理上、大きな問題であり、今後、無断で撮影しないよう注意してほしい」と原告代理人に「通知」しました。

被告代理人の「通報」に基づいた原告代理人への「通知」は、原告及び支援者に対する不当な警告であり、侮辱に相当します。「申し入れの事実は確認できていないが」ではなく、「事実が確認されてから」通知すべきだったと思います。

つきましては、被告代理人が根拠もなく原告及び支援者を侮辱する「通報」を行なったことについて、裁判所として事実関係を調査したうえで、被告代理人に対し、厳重に警告してください。

2 次回法廷について

被告代理人宛て申入書記載の通り、前回8月20日の第3回弁論で、208号法廷や廊下に裁判所職員数人が立ち、傍聴した原告支援者の中に「裁判所から監視されているようで気持ち悪かった」と不快感を訴える人がいました。

次回10月29日に予定されている第4回口頭弁論においては、裁判所として、このような「監視」まがいの措置はやめてください。

以上、貴裁判所の誠意ある対応をお願いします。