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冨田社会学研究科長が「浅野追放問題」で取材への回答拒絶

 支援会事務局長の山口正紀(元読売新聞記者でジャーナリスト)は2014年3月7日、同志社大学企画部広報室広報課を通じて、冨田安信・大学院社会学研究科長(社会学部長兼任、社会学部産業関係学科教授)に以下のような質問書を出しました。これに対して同志社大学広報課から3月11日、「取材には応じられない」というメール返信が届きました。冨田氏の指示でしょうが、自分で何も返事しないのは情けないと思います。

 山口は「週刊金曜日」(3月21日号)の「人権とメディア」に「学生を無視して浅野教授を追放」と題した記事を書き、最後に、「(なお、この件で冨田研究科長に質問書を添え、取材を申し入れたが、回答を拒否された)」として、経過を明らかにしました(注)。

 冨田氏への質問内容は、浅野教授の定年延長妨害問題を考えるうえで、本質的な内容を含んでいると思います。日本で2番目に古い私立大学の教授は公人中の公人です。冨田氏は浅野教授が定年延長拒否で起こした二つの民事訴訟で毎回傍聴席にいます。また、冨田氏は専門が労働問題とのこと。冨田氏は、今からでも、山口の取材に応じ、回答すべきです。「裁判中だから」と称して取材から逃げるのは、公人・研究者としてふさわしくないと考えます。

 皆さんに、この問題を理解していた書くための一助として、以下に質問書(3月7日)の全文を公表します。(支援会事務局・山口)

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同志社大学社会学研究科長・冨田安信様

浅野健一教授の定年延長問題について

ジャーナリスト 山口正紀

 メールにて取材をお願いする失礼、お許しください。

 私は、元読売新聞記者で、現在は「週刊金曜日」などのメディアに記事を書いているジャーナリストの山口正紀と申します。取材活動の傍ら、報道被害者の人権を守ることを主な目的とした市民ネットワーク「人権と報道・連絡会」の世話人として活動しています。

 突然のお願いで恐縮ですが、同志社大学社会学研究科メディア学専攻・浅野健一教授が京都地裁に起こした「従業員地位保全等仮処分命令申し立て」及び「地位確認」請求訴訟に関して、いくつかお伺いしたいことがあり、本メールを差し上げる次第です。

 年度末で何かとご多忙のことと思いますが、以下の点について、ぜひご回答いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

1 同志社大学社会学研究科の定年延長制度などについて

①浅野教授の訴状、申立書などによると、この定年延長制度のもとで、これまで延長を希望したほとんどの方が定年延長されてきたとのことですが、社会学研究科では過去、何人が延長を希望され、そのうち何人が延長されなかったか、教えてください。

②2013年7月に行われた次年度の開講科目調査に基づき、浅野教授は2014年度も開講することになっていたとのことですが、それは事実ですか。事実とすれば、その調査及び開講科目決定は浅野教授の定年延長を前提としたものではなかったのですか。

③全国の受験生に配られている2014年度版大学案内には、浅野教授と浅野ゼミ出身でメディアに就職した卒業生の写真などが掲載されているそうですが、事実ですか。事実とすれば、これも浅野教授の定年延長を前提としたものではなかったのですか。

2 社会学研究科委員会の審議について

①訴状などによると、2013年10月30日に開かれた社会学研究科委員会で、「浅野教授 定年延長の件 検討事項」と題する文書が配布されたとのことですが、その作成者、作成日時を教えてください。

②前記のような文書は、定年延長問題を審議する際、これまでも個々の定年延長対象者ごとに作成され、配布されてきたのかどうか、教えてください。

③前記文書は、研究面、教育面、学内業務面、職場環境面の全般にわたって浅野教授を著しく非難する内容になっているようですが、そうした文書を当事者の浅野教授に事前に示すことなく、当事者には何ら反論機会もない30日の社会学研究科委員会で配布したことは、手続きとして公正を欠いているとは思われないでしょうか。ご見解を聞かせてください。

④訴状などによると、11月13日に開かれた社会学研究科委員会で浅野教授の定年延長について投票が行われた際、「過半数の出席、出席者の3分の2の賛成票で可決する」との可決要件が科長である冨田様の提案で決められたとのことですが、その可決要件は何らかの根拠、または前例があったのかどうか、教えてください。

⑤そうした可決要件を決めるにあたって、当事者である浅野教授に発言機会を与えなかったことは、手続きとして公正を欠いていると思われますが、ご見解を聞かせてください。

⑥人事を決定する重大な投票に際しては、その公正を保障するために「投票管理委員会」のような機関を設け、その管理のもとに厳格な投票を実施し、その結果を当事者・投票者全員に公表することが不可欠だと思いますが、11月13日の投票において、そのような「投票管理委員会」は選出されたのか、投票結果は公表されたのかどうか、教えてください。

3 渡辺武達教授の定年延長に関して

①訴訟などによると、浅野教授の同僚である社会学研究科メディア学専攻・渡辺武達教授の定年延長は今回、「承認事項」として、社会学研究科委員会で特段の審議もなく、投票もなされなかったとのことですが、事実ですか。

②渡辺教授は、2005年11月に発行された『週刊文春』記事において、「浅野教授がセクシャル・ハラスメントを行なった」とする虚偽の情報を文春に提供したことが、浅野教授が提訴し、2009年9月に文春側の全面敗訴が確定した名誉毀損訴訟で認定されています。

 さらに、前記のような渡辺教授の不当な攻撃に対し、浅野教授が提訴した名誉毀損訴訟でも、渡辺教授の不法行為を認定した判決が2013年11月、確定しました。

 また、前記の「セクシャル・ハラスメント」に関して渡辺教授らが2003年、学内のハラスメント委員会に行なった「申し立て」により、浅野教授は10年以上も「セクハラ案件の被申立人」という不名誉な立場を強制されてきたようですが、これについても2013年8月、ハラスメント委員会は「申し立てのような事実はなかった」と認定したとのことです。

 前記のように、同僚の浅野教授に対し、その名誉を著しく毀損する行動を繰り返してきた渡辺教授に関して、これまで5回の定年延長が認められ、今回も「承認」されたとのことですが、2度の裁判・判決で認定され、学内のハラスメント委員会でも明白になった渡辺教授の浅野教授に対する不当な攻撃は、定年延長の「承認」に際して、問題にならなかったのかどうか、教えてください。問題にならなかったとすれば、その理由について、冨田様のご見解を聞かせてください。

③訴状などによると、今回、浅野教授の定年延長を「承認」しなかったメディア学専攻の教授4人のうち、2人は渡辺教授の「ハラスメント委員会への申し立て」に同調してきたとのことです。そうした「渡辺教授による浅野攻撃」に加わった教授たちが、浅野教授の定年延長問題を審議し、定年延長を認めないという事実上の決定を行なうこと、その一方では、渡辺教授の定年延長を承認・決定するのは、手続きの公正を著しく欠いていると思われますが、ご見解を聞かせてください。

 以上、長々と質問させていただきましたが、ご検討の上、ぜひお答えいただくよう、お願い申し上げます。また、ご返事いただく際は、勝手なお願いで恐縮ですが、3月12日までに、本メールへの返信、または、下記住所への文書郵送にてお願いします。(略)

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(注)山口が「週刊金曜日」の「人権とメディア」(2014年3月21日号)に書いた記事は次のとおり。

《学生を無視した浅野教授追放/同志社大学》

 本欄の執筆者でもある浅野健一・同志社大学教授(院社会学研究科メディア学専攻)が、新年度から教壇に立てなくなった。大学院教授にはほぼ自動的に認められてきた65歳以降の定年延長を、「浅野には認めない」と「メディア学専攻」教授らが決め、大学が容認したためだ。

 浅野さんは昨年末、京都地裁に地位保全の仮処分を申し立てた。だが、3月中に仮処分の決定が出る見通しがなくなり、4月からの講義は絶望的になった。

 仮処分申立書などによると、同志社大学では大学院教授について、65歳を超えても70歳まで1年ごとに定年を延長する制度がある。この制度が導入された73年以降、文系で延長を希望して認められなかった例はない。

 浅野さんは昨年7月に65歳になった。10月に決まった14年度開講科目には「浅野教授の講義」が明記されていた。全国の受験生に配られた14年度版大学案内には、浅野さんと浅野ゼミ出身でメディアに就職した卒業生の写真が掲載されていた。これらはいずれも、「浅野教授の定年延長」を前提としたものだ。

 ところが10月29日、浅野研究室に「浅野教授の定年延長を提案しない。渡辺武達教授 の定年延長は提案する」旨の文書が投函されていた。「メディア学専攻」6人のうち、浅野、渡辺教授を除く4人で決めたという。

 翌30日、「社会学研究科委員会」(教授会)が開かれ、浅野さん以外の5人(渡辺教授を含む)の定年延長が各専攻から提案されて承認された。浅野さんは自ら自身の定年延長を提案した。

浅野さんの退席後、メディア学専攻の教授たちがA4判2枚の印刷物を配布した。根拠を示さない一方的な非難・中傷を列記した文書だ。「研究者としての能力に問題」「学生本位の教育がなされていない」……。「専攻科の教員がストレスにさらされ帯状疱疹を発症」などという非科学的言いがかりさえあった。

 11月13日、研究科委員会で浅野さんの定年延長が審議された。定年延長は承認事項だったため可決要件の規定がなく、冨田安信研究科長が「3分の2の賛成で可決」と提案し投票、「否決された」と浅野さんに通知した。

 私は本誌で何度もレポートしてきたが、渡辺教授とそのグループは過去、「浅野教授がセクハラをした」と学内の委員会に申し立てたり、それを『週刊文春』に「情報提供」して書かせたりしてきた。それが全部虚偽だったことは、浅野さんが起こした対文春、対渡辺教授の名誉毀損訴訟2件で浅野さんが全面勝訴したことにより、証明された。

 今回の定年延長妨害も「渡辺グループ」が画策したものだ。「メディア学専攻」が定年延長を提案しなければ、目障りな浅野を排除できる。名誉毀損の被害者を追放し、加害者を〝延命〟させる卑劣極まりない工作。

 被害者は浅野さんだけではない。浅野ゼミの院生・学生が新年度から希望のゼミを失った。12月27日、仮処分申し立て記者会見には浅野ゼミ生が同席し、学生100人以上の嘆願書を見せて「大学は学生のことを考えているのですか」と訴えた。

 浅野さんは仮処分申し立ての陳述書で、こう書いている。

《私の研究の原点は、「声なき声」、少数者、被抑圧者の立場に立つことです。生きた学問に忠実で、象牙の塔に籠らない学者、学生たちと真に人間的につきあう教授、何よりも人間として今何が必要なことかを教える人になろうと努力してきました》

 同志社は、こんな研究者・教育者を追放する大学なのか。

(なお、この件で冨田研究科長に質問書を添え、取材を申し入れたが、回答を拒否された)