地位保全裁判の概要 - 「人権と報道・連絡会ニュース」2014年3月号より
人権と報道・連絡会の世話人である浅野健一さん(同志社大学大学院社会学研究科メディア学専攻教授)に対する定年延長妨害問題について、ニュース1月号以降の状況を報告する。
◆浅野さんが本裁判も提起
浅野さんは昨年12月27日、学校法人同志社(水谷誠理事長)を相手に、「従業員地位保全等仮処分命令申立書」を京都地裁に提出したが、その第1回審尋が2月3日、開かれた。その審尋開始直前に、浅野さんの代理人は本裁判の従業員地位確認等請求訴訟も京都地裁へ起こした。
それに先立ち、大学側は浅野さんの申立てに対して1月30日付で答弁書を提出、「債権者の申立ては、被保全権利、保全の必要性のいずれも認められない」と申立ての却下を求めた。
第1回審尋で大島眞一裁判官は、双方の書面提出を確認。浅野さんの代理人が同志社大学側の答弁書に反論したいと述べ、2月26日に反論書を出した。
大学側は3月1日に新たな書面を提出した。この書面は、浅野さんの名誉を著しく毀損する「研究科委員会」配布文書(10月30日)を正当な審議資料と主張。浅野ゼミの学生たちが定年延長の要望書を出したことについて、「自分の雇用問題で学生を巻き込んだ」などと一方的に非難した。浅野さんは「『学生を巻き込んでいる』という私への非難は言語道断だ」と憤っている。
仮処分申立ての第2回審尋は3月2日に行われた。浅野さんの代理人は新年度新学期を間近に控えていることから早期決定を求めたが、大島裁判官は転勤を理由に「早期決定は無理」と述べ、3回目の審尋を4月11日午後1時に行うと決めた。この結果、浅野さんは新年度4月から講義・ゼミ指導を行うことが、事実上不可能となった。
大島裁判官は「非常に難しい事案なのでそう簡単に結論を出せない」と強調した。浅野さんの申立ては簡単に却下できないという認識でもある。浅野さんは「後任の新しい裁判官が、合議の本訴も含め、きちんと対応してほしい。次年度の講義・ゼミすべて抹殺されて悲しいが、裁判で勝って復職したいという気持ちがいっそう強くなった。私がまるで犯罪者のように追われ、3年ゼミが不当に解散、院生の指導もできなくなるのを許すことはできない」と話した。
大学側は浅野さんに「研究室の明け渡し」も要求してきた。しかし、浅野さんの代理人は「浅野教授の地位が仮処分申立裁判や本案訴訟で認められることになれば、当然、研究室の使用も認められる」として、研究室の継続使用を認めるよう要請した。
◆浅野ゼミが特別企画
こうした状況下で、浅野健一ゼミおよび浅野ゼミOBG会は3月31日(月)午後2時30分から、シンポジウム「浅野健一同志社大学教授就任20周年記念特別企画 『犯罪報道の犯罪』から30年~日本のジャーナリズムを再考する」を開くことになった(会場は、同志社大学今出川キャンパス クラーク礼拝堂)。その呼びかけ文を紹介する。
《浅野教授は学内における不条理な定年延長否認によって、3月末に同志社大学を「退職」に追い込まれようとしております。教授のもとで学びたいと希望している大学院生や学部3年生および4年生の声も無視されました。(中略)裁判の結果次第では、教授が同志社大学教授として行う最後の講義となるかもしれません。本シンポジウムが、教授の現役記者時代を含めた30年間にわたるジャーナリズム改革活動を振り返りながら、報道界・法曹界のみならず市民社会にインパクトをもたらす有意義な学術シンポジウムとなることを願っております》
今後の裁判予定は、仮処分の第3回期日(審尋、非公開)が4月11日(金)午後1時から、また本裁判の第1回期日(口頭弁論、公開)が4月16日(水)午前10時半から京都地裁208号法廷(終了後、報告集会を開催)。ご都合のつく方の傍聴・支援をお願いします(山口正紀)。