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最高裁が渡辺教授側の上告を早くも棄却―浅野教授の対渡辺裁判完全勝訴が確定!

 2009年9月に浅野健一同志社大学大学院教授が同僚の渡辺武達教授を相手取り起こした損害賠償請求事件(渡辺教授も反訴)について、最高裁判所第二小法廷(鬼丸かおる裁判長)は11月22日付で、渡辺教授側からの上告及び上告受理申立について、それぞれ「棄却」「不受理」とすると決定した。これによって、浅野教授が勝訴した控訴審での判決(東京高裁民事七部=市村陽典裁判長、2013年6月13日)が確定した。浅野教授の全面的勝訴である。東京高裁は渡辺氏に71万円の損害賠償の支払いを命じる判決を言い渡していた。

 最高裁の決定は、法律事務所ヒロナカ(弘中惇一郎弁護士)が11月25日に同小法廷からの「調書(決定)」を受領して分かった。

 決定書は「民事事件において最高裁判所に上告することが許されるのは、民訴法12条1項又は2項所定の場合に限られるところ本件上告理由は、理由の不備を言うが、その実質は事実誤認又は単なる法令違反を主張するものであり、明らかに上記各項に規定する事由に該当しない」と断定している。

 渡辺教授は高裁判決を不服として6月25日、最高裁へ「上告兼上告受理申立書」を提出し、「敗訴部分を破棄し、さらに相当の裁判を求める」としていた。渡辺教授の代理人は京都総合法律事務所の池上哲朗、拾井美香、野崎隆各弁護士。上告は「渡辺教授の悪あがき」(元裁判官の大学教員)とみられていた。

 浅野教授は家族・弁護団・支援者と相談した結果、本件の争点はいずれも事実認定上の問題であり、上告(憲法違反や理由不備など)ないし上告受理申立て(最高裁判例との相反や法令の解釈に関する重要な事項を含むとき)の理由はないという判断から、上告期限の6月27日までに上告していなかった。

 確定する高裁判決の賠償額は2012年12月3日の東京地裁判決(堀内明裁判長)より30万円増額になった。渡辺氏側の請求は今回もすべて却下された。高裁判決によると、一審では認められなかった第二行為(文春記事コピーの学内ばらまき)が認定された。また、第四行為(別件の文書のばらまき)について、賠償額を増額した。
判決は、渡辺教授が文春記事をコピーして学内でばらまいたのは、同志社大学の中で浅野教授を知る人たちに読ませることを企図しており悪質な人権侵害と認定した。判決は、事実上、渡辺教授が浅野教授を大学から追放し、社会的にもダメージを与えようと企図したと認定し、同志社大学の名誉も傷つけていると明確に認定した。

 本裁判は、2005年11月17日に「週刊文春」が浅野教授および歴史ある同志社大学の名誉を著しく毀損する4ページ記事を掲載した損害賠償を争った裁判で、浅野教授が完全勝訴(文春に賠償金額550万円の支払い命令)したことを受け、その最大の責任者である渡辺教授が浅野教授に対して悪意を持って行った不法行為を取り上げた。

 両判決が指摘するとおり、渡辺教授は明らかに同志社大学の名誉も傷つけている。2010年3月の文春確定判決と今回の対渡辺裁判控訴審判決を併せ読むと、裁判所も渡辺教授の行動を厳しく叱責していることが分かる(2010年3月の文春確定判決と今回の対渡辺裁判控訴審判決については、本ホームページの該当箇所を参照)。

 支援者からは「秘密保護法の強行採決が懸念される今、うれしいニュースです。浅野さん、支援者のみなさん、ありがとうございます。日本をより公平にする判決ですね」「本当にビッグニュースですね。当然の決定といえばそれまでですが、この意義と波及効果は本当に大きいと思います」などという感想が支援会に寄せられた。

 渡辺教授は「本裁判の結果次第で、浅野教授が大学から処分されると聞いている」という趣旨の書面を裁判所に出している。「同志社大学キャンパス・ハラスメント防止に関する委員会」(委員長名不詳、2003年9月当時は、「セクシュアル・ハラスメント防止に関する委員会」という名称)は「そうした事実はない」と書面で浅野教授に表明している。

 同委員会は8月6日に浅野教授の事案について「ハラスメントを認定するに至らなかった」と明確に結論を出した。委員長は8月7日に村田晃嗣学長へ「結論」を報告したという。

 なお、委員会は浅野教授にシロ決定を出した8月6日に、浅野教授が7月12日にハラスメント相談員・松山隆英教授(法科大学院教授、元公正取引委員会事務総長)に「渡辺武達教授から受けたハラスメント被害についての申し立て」を提出した事案で、委員会として調査を開始すると決定した。浅野教授は2003年以降、渡辺教授から様々なハラスメント被害を受けたことを申立ていた。

 現在、ハラスメント委員会が設置した調査委員会(3人)が文春裁判と対渡辺教授裁判の確定判決を主な証拠にして調査しており、ハラスメント委員会を所管する倫理審査室の事務長は11月27日午後メールで、《CHヒアリング日程調整》という標題のメールで、調査員による浅野教授のヒアリングを12月以降に行いたいと連絡してきた。

 浅野教授は7月12日以降のハラスメント被害について被害の実態を伝える方針だ。

付記:2004年6月に浅野教授の事案でハラスメント委員会(当時はセクシュアル・ハラスメント防止に関する委員会)の鈴木直人委員長(当時)が浅野教授に事情聴取をしたいと自宅に電話がかかって以来、委員会の事務局関係者は「被害を受けたと委員会へ訴えた当事者が、大学が誠実にやってくれないなどと社会やマスメディアに訴えるのは許されるが、当事者でもない指導教授がメディアに垂れ込むのは問題」という立場だった。浅野教授自身は、渡辺氏のハラスメント被害者であり当事者であるため、浅野教授が、委員会による渡辺氏に対する調査が既に開始し、進行中であることを公表することに問題はない。この点について、ハラスメント委員会事務局も、教職員に科せられている守秘義務にも違反しないという考えだという。