浅野教授が“怪文書”5人を東京地裁に提訴
浅野健一・同志社大学大学院教授(社会学研究科メディア学専攻博士後期課程)は3月13日、2013年度に教授の雇用の場を奪い、浅野ゼミ20期を解体して同志社から追放した同僚5人を相手取り、1100万円の損害賠償を求める名誉毀損訴訟を東京地裁へ起こしました。支援会から報告します。
浅野教授は「提訴にこぎつけることができ、とてもうれしく思います。学内の支援者もすばらしい訴状だと言ってくれています」と話しています。
被告の5人は同志社大学大学院社会学研究科メディア学専攻の小黒純(ニュース論、前龍谷大学教授・共同通信記者)、竹内長武(児童文学、漫画論)、佐伯順子(日本文学、遊女研究)、池田謙一(社会心理学、前東京大学教授)各教授と、4人に浅野教授の定年延長を認めないよう命じたと推認される渡辺武達教授(メディア倫理、5年間の定年延長を終えて15年3月末退職)です。
浅野教授は14年2月、「従業員地位確認等請求訴訟」を京都地裁民事6部で起こし、学校法人同志社(水谷誠理事長)と法廷闘争を闘っていますが、この裁判とは全く別に、5人を提訴したものです。代理人は法律事務所ヒロナカの弘中惇一郎、山縣敦彦両弁護士と、大阪弁護士会の橋本太地弁護士の3人。2003年9月に始まり、12年余り続く“渡辺グループ”(文春裁判確定判決では2004年設立)との最後の闘いになります。
●研究科委員会での名誉毀損文書配布を追及
①訴えの概要
訴状は〈本件の概要〉で次のように述べています。
〈原告は、同志社大学社会学部及び同大学院社会学研究科において20年にわたり教授として学術研究・指導を行ってきたところ、その同僚である被告ら5名が原告の研究業績や勤務態度等につき多くの虚偽を含む文書を頒布したことにより、これまで本件大学において慣例として否決された例のない定年延長が原告に限って否決され、その結果、原告は本件大学における教授の職を奪われた。/上記被告らによる文書の頒布行為によって、原告は、定年延長に関する公正な審査を受ける権利を侵害され、また、その名誉を著しく毀損された結果、甚大な精神的苦痛を被った。/本件訴訟は、上記被告らによる文書の頒布を不法行為として、原告が被告らに対し、損害賠償請求をする事案である〉
②名誉毀損の「怪文書」配布
訴状は、〈同志社大学においては、初回の定年延長を希望した大学院教授による定年延長の提案が否決された例は本件を除いてこれまでに見当たらない〉と指摘し、〈小黒氏ら4人は13年10月30日に開かれた2013年度第10回研究科委員会において、「浅野教授 定年延長の件 検討事項」と題する文書を検討資料として研究科委員会に出席した教員30名に頒布し、会議において文書の趣旨を説明し、原告の定年延長は認められるべきではない旨の意見を述べた。本件文書は、被告渡辺の発案で、被告らが共同で作成したものである〉と述べています。
訴状はこの配布文書について、〈文書は4つの項目「研究面、教育面、学内業務面及び職場環境面」に分けて、原告につき定年延長を認めるべきではないとする理由を列挙するものだが、少なくとも15カ所に明確な虚偽の記載がある〉と主張しています。「専攻科の各教員は常時強いストレスにさらされている。文書送付等が顕在化しているときは勿論、その後も長く続く恐怖感。これによる突発性難聴や帯状疱疹などの発症」などの記載です。
③著しい名誉毀損
訴状は〈定年延長に関する公正な審査を受ける権利を侵害されたこと〉〈原告の名誉が著しく毀損されたこと〉としてこう述べています。
〈被告らは、上記6の記載を含む本件文書の作成・頒布により、原告は、研究実績が乏しく、研究者としての基本的な素養も欠いており、さらに学生に対する指導や職場における勤務態度においても著しい問題があるとの事実を摘示し、本件文書を読んだ者に、原告は本件大学の教授としての適格性を欠いており、定年延長を認めるべきでないとの印象を与えた〉〈原告に対する人格攻撃に及ぶ記述もあり、原告は、定年延長に関する公正な審査を受ける権利を侵害され、また、その名誉権を侵害された〉
④原告が受けた重大な精神的損害
訴状は最後に、〈原告が被った精神的損害〉として次のように述べています。
〈本件文書が研究科委員会の出席者約30名に頒布されたことによって、その名誉を著しく侵害され、甚大な精神的苦痛を被った。特に、本件文書の頒布対象となった者は、いずれも原告の同僚である本件大学の教員であったことから、面識のない一般の第三者に対して事実摘示がされる場合と比較して、その損害の程度はより重大である〉
〈さらに、被告らによって本件文書が頒布された結果、原告は定年延長に関する公正な審査を受ける権利を侵害され、その結果、原告の定年延長は否決され、本件大学における教授の職を追われることとなった。本件大学における教授の職は、原告にとって単なる学術研究やゼミ・講義を通じた学生に対する指導の場であるにとどまらず、社会に向けた情報発信の拠点であり、本件大学の教授として活動することが原告の生き甲斐であったところ、被告らの不法行為によって突如これを奪われたものである。この点でも原告は更なる甚大な精神的損害を被った〉
●被告5教授の弁護士選びなどの対応に注目
被告5人が代理人弁護士を誰にするのか見ものです。おそらく学校法人同志社は直接この裁判にはかかわらないでしょう。
浅野教授が勝訴した対渡辺教授裁判(渡辺氏も反訴)では、東京地裁は渡辺教授側の京都地裁への移送請求を却下(移送審理に約1カ月)し、東京地裁、東京高裁、最高裁で審理されて、浅野教授が全面勝訴しました。
大学院博士後期課程教授でもない小黒氏が、渡辺氏の指示を受けて主導した定年延長妨害が裁かれます。この裁判では、京都地裁の地位確認裁判と共に、浅野教授の院教授としての適性を審査する権限も資格も能力もない5人による、おぞましいクーデターと魔女狩り・暗黒裁判の真相が次第に明らかになるでしょう。
●提訴を東京、京都の司法記者クラブへ通知
弁護団は提訴後、東京の司法記者クラブの幹事社である産経新聞記者に訴状を渡し、口頭で概要を説明しました。
浅野教授も京都の司法記者クラブ(幹事社は共同通信)へ情報提供しました。
浅野教授の労働裁判についてこれまで報道したマスメディアは京都新聞と産経新聞だけで、朝日・読売・毎日・日経、共同通信、時事通信は一字も報道していません。
これまでの文春訴訟などの経緯を考えれば、少なくとも京都府版では十分ニュースになるし、全国ニュースになってもおかしくないと思います。
21年前の1994年2月の同志社理事会で浅野教授の採用が決まった時には、全国ニュースになっています。以下は共同の配信記事です(書いたのは現在富山支局長の原真さん)。
《1994年02月10日配信 浅野記者が同志社大教授に(京都発)
同志社大の評議会は十日、「犯罪報道の犯罪」などの著者で共同通信社記者の浅野健一氏(45)を四月から文学部教授(新聞学)とすることを決めた。
浅野氏は、権力犯罪を除く一般刑事事件の容疑者は人権擁護のため匿名で報道するべきだという「匿名報道主義」を提唱、マスメディア内外に犯罪報道の在り方をめぐる論議を起こした。同氏は昭和四十七年に共同通信社に入り、千葉支局、ジャカルタ支局などを経て現在、外信部記者。近く共同通信社を退職する。》
教授になった時に報道しているのですから、共同通信は不当解雇、地位確認裁判提訴もニュースにすべきではないでしょうか。
●地位確認裁判の次回弁論は4月9日
浅野教授の「従業員地位確認等請求訴訟」の次回期日、第6回口頭弁論は4月9日(木)午後4時30分、京都地裁208号法廷です。原告代理人は被告の第二準備書面への反論と、証人候補を決めて、期日に臨む予定です。みなさんの傍聴をお願いします。