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ハラスメント委員会関連の動き

大学組合が大学当局へ審議の遅延を批判

浅野教授が、2012年12月に同志社大学教職員組合書記局からの連絡を受けて支援会に伝えたところによると、大学教職員組合は12年12月6日に行われた大学当局との三役折衝の中で、浅野教授が2003年9月26日から「同志社大学キャンパス・ハラスメント防止に関する委員会」(以下、ハラスメント委員会)の被申立人にされている問題を取り上げた。

 組合側は、「9年以上も結論を出さないのは委員会として問題だ。大学が主体的に判断すべきことで、裁判で係争中というのは遅延の理由にならない。放置しておくのは申立人にとっても被申立人にとってもよくないことだ。本件は、場合によって委員会がこれほど長期に渡って結論を出さないことがあり得るという前例となり、この件のみならず、委員会の存在意義に関わる深刻な問題だ。他の被害者が、そのような委員会なら申し立てても意味がない、と諦めることにつながりかねないからだ。司法判断とは関係なく、早急に結論を出すべきだ。調査した結果分からなかった点があれば、その点も含めた結論を出すということもあり得る。学長ら責任者に伝えてほしい」と強く要請したということである。

 組合側は板垣竜太委員長、小川原宏幸書記長ら三役が参加、大学側は浜吉輝・総務部長、高田芳樹・京田辺校地総務部長、谷本孝彦・人事企画課長らが出席した。大学当局側は個別の件に対する言及を避けたものの、「学長といえども委員会にこのような結論を出すようにとの要請はできないが、組合の要請を学長らに伝える」との旨を回答したという。

霍見芳浩教授が大学側へ要請文

 ニューヨーク市立大学の霍見芳浩(つるみ・よしひろ)教授が2013年1月30日夕、同志社大学新町キャンパス・渓水館にある浅野健一研究室(渓水館401)で、八田英二学長代理の柳井望(やない・のぞむ)庶務課長と面談し、浅野健一教授の「キャンパス・ハラスメント事案」に関する要請文を手渡した。霍見教授は約10分の面談で、学長へのメッセージとして、口頭でも詳しく伝えた。

 霍見教授は同日午後6時半から、新町キャンパス・臨光館207番教室で「『安倍復活政権×続投オバマ政権』――世界から見た安倍復活政権の外交・経済政策」(講演会の主催は同志社大学社会学部メディア学研究会)と題して講演するため来校していた。

 霍見教授は、柳井課長に以下のように述べた。

《浅野教授が被申立人にされている事案がまだ解決されていないということに非常に驚いている。私が知る限り、世界でも稀なケースだ。こういう事件はあるが、大学側がある程度独自の判断をする。しかも申立人の側が大学人としての守秘義務を破っていること自体、訴えられているハラスメントの内容とは別に問題がある。私たちの大学では譴責処分になる。そういうことをやったら申立はたいてい却下される。いずれにしても、申立がなされてから9年以上経っている。東京地裁で、渡辺氏が浅野先生の名誉を棄損したという結論が出ている。『裁判の経過を見守る』という大学の立場もあっただろうが、裁判の経過がここまで出ているのに結論が下されておらず、今も“被疑者”の立場に立たされている。

 相手の申立人の渡辺氏の方が、(大学のCH委で結論が出ず)長引いていることを理由に「浅野教授のハラスメントは事実だ」「“大学側が却下せず今も調査中だ」などといろいろなところで言っている。これは日本の大学の名誉に関わってくる。同志社大学だと、社会学部の問題だということになるのかもしれないが、世間的に公になってくると同志社大学全体、日本の大学自体の名誉に関わってくることになるので、早く結論を出してほしい。

 私たちは最初からハラスメントなんてないということは知っているが、裁判所でいろいろ調べ、プロセスにおいてはっきり事実が分かった結果から、ハラスメント委員会が申立を却下しないと、(浅野教授は)いつまでも被疑者の立場に置かれる。しかも申立人がそれを悪用して方々に浅野が悪いと言っていて、さらに「八田英二学長以下、同志社大学の当局もそれを暗に認めている」というようなことを言っている。渡辺氏が昨年2月に東京地裁に出した陳述書に、私が同志社大学に圧力をかけているみたいなことを書いているが、冗談ではない。こちらはこちらの立場からきちんとした要請をやっている。私がたまたま同志社に不案内だから、学長室に同志社出身の小原健司弁護士が案内してくれた。これを、弁護士を同行して大学当局に不当な圧力をかけた、と言うのは不当だ。

 ここまで放置していると、やっぱり大学の最高責任者として学長の問題になる。大学として司法のプロセスを見守ったうえで、というのはある程度はわかるが、申立人が勝手に守秘義務を破ってマスメディアにいろんな情報、ニュースを流す等々というのは、それ自体が詰問されてしかるべきだ。米国の私たちの大学でこういうことがあったら、司法のプロセスとは別に、それ自体がひとつ問題になる。同志社の場合には、それも放置されている。そのこと自体が、大学当局が、彼らが方々で言っていることを認めているようにみられ、しかも申立人本人たちが「“当局は認めているし、だから結論を出さないと。ましてや浅野というのは前からハラスメントで同志社の中で有名だった」などと言っている》

学生有志が支援会に要望書を提出

 3月8日、浅野教授の指導学生・ゼミ生を中心とする学生(11人)が「浅野健一先生に関する委員会事案の早急な審理再開の要望」をハラスメント委員会に提出した。この要望書の賛同者が増え、計20人(4年生は全員)になり、22日にハラスメント委員会へ提出した。

 学生たちは、浅野教授が「被申立人」となった申立がそもそも適正手続きを全く欠いたもの(浅野教授と同僚の渡辺武達先生が、2003年9月に当時の委員長、鈴木直人先生との個人的な関係を利用して、“被害者”の相談員への訴えなどの手続を全く踏まず、当時の博士後期課程の院生2名の事案を委員会に持ち込んだ)であることを指摘し、このままでは今年9月で約10年もの間「被申立人」として放置されることになる浅野教授について、ハラスメント委員会は浅野教授へのこのような人権侵害行為をすぐにやめ、渡辺氏の指導下にあった元院生2名の手続き違反の「申立」を棄却して名誉回復するように要望した。

 学生たちは要望書の中で、「12年度浅野ゼミ17名全員が本要望書に賛同しています。4年生が卒業する前に、委員会が何の結論も出さなかったことについて残念に思います。(略)私たちは、浅野先生のもとで学び、ゼミなどを通して浅野先生の人となりを知っていますが、浅野先生は学問に対しては情熱的で厳しい一方、指導はきめ細かく的確に行ってくださいます。また、忙しい中でも学生の相談に親身になって応じてくれる、情の深い温かい先生だと思います。浅野先生はハラスメントなど断じて行っていないと私たちも確信を持って言えます」と強調している。

ハラスメント委員会が浅野教授代理人に回答

浅野教授代理人の若松芳也弁護士と小原健司弁護士は2月8日、ハラスメント委員会に、浅野教授が03年9月から「被申立人」に置かれていることの不当性を訴え、早急に結論(調査打ち切り)を出すよう求める要望書を提出していた。渡辺裁判第1審判決(浅野教授の勝訴)を踏まえた上での要望書であった。この要求書では、2003年9月の渡辺氏による「申立」そのものが委員会の手続き違反で、形式的に「申立人」となった2名は「渡辺氏グループ」(文春判決で2004年設立)の構成員として、委員会審理にかかわる文書類(石川健次郎・前委員長が2名に郵送した手紙を含む」)を教職員に課せられた守秘義務に違反して文春、毎日新聞などの報道機関に漏えいするなどの不法行為に加担しており、申立人としての資格を既に失っていることを指摘していた。

 これに対して、ハラスメント委員会委員長(氏名不詳)が3月5日付の「2013年2月8日付要求書について」で、「標記の件、現在訴訟中であるため、委員会としてはその推移を静観している状況にありますが、現在の控訴審が終わった段階で結論を出したいと考えております」と回答している。前回の委員長からの回答には発信者の氏名もなかったが、今回は「キャンパス・ハラスメント委員会の委員名簿は公表しておりません。本文書に関する質問等は以下にお願いします」とあり、問い合わせ先として、委員会の事務局である同志社大学倫理審査室の阿知波宏事務長の電話番号とメールアドレスが書いてあった。これまで浅野教授本人や代理人、支援者や浅野教授ゼミOBGや学生など数多くの人がハラスメント委員会に公正な結論(調査打ち切りが妥当)を求めていたが、ハラスメント委員会は、いままで文春裁判と本裁判を理由に静観するとだけ言ってきた。今回、東京高裁判決後に結論を出すということで、初めて結論を出す時期を明らかにしたことになる。

 ハラスメント委員会は、浅野教授を9年半もハラスメント加害者の“被疑者”(文春記事では“疑惑人”)にしている。「2013年9月で10年になる。人権、労働権にかかわるこの種の委員会に一つのケースが10年も留まり続けているのは前代未聞の大問題だ。これは決して許されることではなく、明白な人権侵害であり、大学は早急に結論(申立棄却、審理打ち切り)をしなければならないと考える。

 同志社大学は4月1日に学長が交代、新しい執行部ができる。ハラスメント委員会の委員長、委員は学長の任命で就任している。委員会は3月末までに公正な判断をすべきである。もし4月以降も審議が続くなら、13年度の委員長と全委員は2003年9月以降の委員会の調査や審議について精査すべきあろう。委員会の浅野教授事案の取り扱い自体が浅野教授へのハラスメントになっていると思われるからだ。