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弁論準備手続きが深化
浅野教授の対渡辺教授裁判のその後

 浅野健一教授が2009年9月2日、文春記事の情報源だった渡辺武達・同志社大学社会学部メディア学科教授を被告として東京地裁民事第7部に起こした損害賠償訴訟(以下、渡辺教授裁判)などについて、その後の動きをお知らせします。これまでの裁判の経過については本HPの「渡辺教授裁判速報・進捗」のコーナーをご覧ください。

1. 渡辺教授が“反訴”

 本訴の渡辺裁判について、渡辺教授は2011年1月11日で反訴を提起し、損害賠償1100万を浅野教授に求めた。

 渡辺教授は反訴状で、文春裁判で既に決着がついた「C子問題」「TA問題」をぶり返した上で、文春に情報を提供したのは、「セクハラ,アカハラ行為を事前に防止するという公共の利害に関する事項を公益目的で実現しようとするものであって,正当なものである」と述べた。

 しかし、渡辺教授の本来の目的が、〈虚偽のハラスメントでっち上げ情報で浅野教授を社会的に抹殺し、同志社大学から放逐すること〉だったことは、文春裁判などから明らかだ。たとえば、学内のCH委員会に委員長(当時)との個人的関係を利用して「浅野事案」をCH委でとりあげるように仕向け、さらにCH委に取り上げられたという事実ができると、その関連情報を大学関係者、報道機関、研究者、市民運動家らに漏洩し、最終的に文春と毎日新聞(浅野教授を仮名にした)が報道するに至った。

 渡辺教授は、反訴状の「4.損害 (1)精神的損害」の部分で以下のように書いている。

 《反訴原告は,同志社大学及び大学院の教授の職にある者であるが,反訴原告が大学院生らを利用して虚偽の情報・資料を捏造ないし改ざんしたと主張され,民事訴訟まで提起され,記者会見でその旨大々的に公表されたこと,そして反訴被告が同志社大学社会学研究科委員会(大学院担当者教授会)等において本訴提起及び虚偽の情報の捏造等につき執拗に発言したこと等により,反訴原告の人格は傷つけられ,教育者としての社会的な信用・評価を著しく低下させられた。》

 渡辺教授による情報・資料の捏造ないし改ざんの疑いを認定したのは「文春訴訟」の1審京都地裁および控訴審大阪高裁(最高裁で確定)である。また、同志社大学社会学研究科委員会(大学院担当者教授会)等において本訴提起などを報告したのは、渡辺教授の定年延長の審議中であり、渡辺教授が定年延長に値する人物かどうかを議論するためである(同志社大学では、定年延長の条件を「余人をもって代えがたい」人物としている)。教授会は学内の特定メンバー(20数名)による会議であり、そもそも「反訴原告の人格は傷つけられ,教育者としての社会的な信用・評価を著しく低下させられた」ことと関係はない。

 渡辺教授および「渡辺グループ」(中谷聡氏・三井愛子氏らを含む、確定判決によると2004年形成)による浅野教授のプライバシーの暴露は、浅野教授による本件提訴と比べるべくもなく重大な問題を含んでおり、名誉毀損・人権侵害・反倫理的であると思われる。

 また、渡辺教授は反訴状において《「浅野教授の文春裁判を支援する会」のホームページにおいて,本訴事件の経過を掲載しているが,かかる経過説明の中でも,「渡辺教授が,敵対意識を抱いていた浅野教授に対して,虚偽の“ハラスメント”事実をでっちあげて浅野教授を攻撃したことや,渡辺教授が元院生・三井愛子氏(現同志社大学嘱託講師)らと「渡辺グループ」を形成した上で,「渡辺グループ」の人間を利用して,浅野教授を攻撃したことなどを具体的かつ詳細な書証をもとに展開した」等の記述を行うなどして,本訴事件における主張内容を大々的に公表している。かかるホームページ掲載により,本訴事件提起の事実及びその主張内容が広く知られるに至った。》と書いている。

 浅野支援会ホームページは、裁判で認定された事実および事実に基づいた論評活動をしているだけである。渡辺教授も「事実に基づいた論評は自由」と授業等で常々主張している(渡辺教授は、自らが新潮社を相手取って行った裁判で、事実に基づかない論評もしていたが)。

 また、渡辺教授は、反訴状の中で浅野ゼミが毎年3月に刊行しているゼミ紀要『DECENCY』も次のように非難している。

 《反訴被告は,同人のゼミ生,ゼミ卒業生用の冊子『DECENCY』に反訴原告に対する同様の誹謗中傷を掲載し,ゼミ生等に配布するとともに,外部マスコミ関係者にまで販売,配布している。加えて,反訴原告が,同じ大学,同じ学部の同僚教授である反訴被告から,反訴被告のセクハラ行為等に関する資料等を捏造ないし改ざんしたとして訴訟提起されたことは,反訴被告による大々的なプロパガンダ行為によって同志社大学内にとどまらず,全国のメディア学研究者及びメディア企業従事者・フリージャーナリスト等にも広く知られており,反訴原告の大学内での教育及び研究情動はもとより,外部での社会活動にも支障を来している。》

 『DECENCY』も、浅野教授の裁判闘争について、事実と事実に基づく論評を載せているだけである。『DECENCY』は、作成協力者やOBGには配布されており、浅野ゼミ主催の講演会などでも印刷実費で希望者に渡しているので、外部の人の目に触れないわけではない。しかし、渡辺教授には進呈してないし、浅野ゼミの元OBGで、浅野ゼミ13期生に「浅野ゼミOBG除籍」を文書で強く要求してきた中谷氏にも、本人の意向を受けて送付していない。また、『DECENCY』は、浅野研究室で配布しているだけで外部の販売ルートでは手に入らない。渡辺教授はどこから『DECNCY』を手に入れているのであろうか。

 また、『DECENCY』が名誉毀損になるのであれば、渡辺教授自らが行っている浅野教授のプライバシー侵害(文春への虚偽情報提供、多数の人への虚偽情報通知、掲示板などにおける名誉毀損の書き込みなど)はどのように位置づけられるのであろうか。

2. 渡辺裁判第8回期日・第9回期日・第10回期日

 第8回期日(弁論準備手続き)は1月18日午後1時30分から、東京地裁民事7部準備室(13階)で開かれた。原告側は、浅野教授・原告代理人の弘中弁護士・山縣弁護士・小原弁護士が出席した。被告側は代理人の池上弁護士が京都の事務所から電話会議方式で参加した。

 原告側は、原告準備書面(7)と証拠説明書(6)、甲39号・40号証を提出した。対して被告側は、被告第7準備書面および書証(乙46、48、49、51)を提出した。渡辺教授側の出すこのような「証拠」のほとんどが、大学教職員の守秘義務違反であり、もちろん当事者の了解がない。浅野教授のプライバシーも侵害している。

 また、渡辺教授が1月11日に提出した反訴状についてやりとりがあった。渡辺教授は、浅野教授の対渡辺教授提訴行為そのものが「訴権の濫用」であり、名誉毀損だという主張をしてきた。この反訴状主張に対しては、裁判所から被告に対し「訴権の濫用」と「名誉毀損」との関係に疑問が呈された(一般論で言うと、提訴が「訴権の濫用」だという主張はありえなくはないが、それは不法行為としては「名誉毀損」と別概念・類型ではないのかという指摘)。そこで被告側は、その箇所の主張を整理した書面を出すことになった。そのため、浅野教授側も、被告側の上記の主張整理書面が出されてからさらに反論をすることになり、第8回期日は終わった。

 第9回期日は(弁論準備手続き)は、2月25日午後1時15分から、東京地裁民事7部準備室で行われた。原告側は、浅野教授・原告代理人の山縣弁護士・小原弁護士が出席した。被告側は代理人の池上弁護士が前回同様に電話会議方式で参加した。原告の浅野教授側は、「準備書面(8)」を陳述し、反訴答弁書を陳述した。被告側は「第8準備書面」を陳述した。

 裁判所とのやり取りの結果、被告である渡辺教授側が大量に出してきた「証拠」(ほとんどが大学の内部文書=守秘義務違反や、当人=C子さんの許諾を得ていないプライバシーの文書)について、原告側が反論することになった。あと数回弁論準備手続きを行い、その後に証拠調べに入ると予想される。

 第10回期日(弁論準備手続)は、4月15日(金)午前10時30分から、東京地裁民事7部準備室で行われた。原告側は、浅野教授・原告代理人の山縣弁護士・小原弁護士が出席し、さらに浅野教授の支援者2名が傍聴した。被告側は代理人の池上弁護士がこれまでと同様に京都の事務所から電話会議方式で参加した。

 原告の浅野教授側は、「準備書面(9)」を陳述し、被告側は「第9準備書面」を提出し、①前回期日で被告側が出した証拠は、C子本人が作成・送信したものではなく、被告=渡辺教授ないし渡辺グループの人間の手により作成・送信された、いわゆる捏造文書が多く含まれている疑いが濃厚であること②渡辺教授がC子さんに対し送信されたはずの電子メールがないことやC子メールといわれるものは、メールの形式や文体などが極めて不自然であること ③C子が原告=浅野教授と正常な関係を維持していた反面、被告=渡辺教授との接触をさけていたことなどを、具体的な証拠を提出しつつ指摘した。

 これら原告側の主張を受けて裁判官は、被告側に対し「(証拠として出ている)C子さんの渡辺教授宛てのメール(とされるもの)の前後に渡辺教授がC子さん宛に出したメールを開示してほしい」などと指示した。被告側は「“被告からC子に送信されたメール”というと幅があるが、検証の対象となっているメールに対応するメールという限定があれば、開示する方向で検討する。被告本人の意向も確認した上で、次回までに開示したいと考えている」と答えた。

 次回の第11回期日は、6月10日(金)午前11時から東京地裁民事7部準備室で行われる予定である。

3. 浅野教授が京都弁護士会へ人権救済の申し立て

 浅野教授は2010年11月5日、渡辺裁判の代理人でもある若松芳也、小原健司両弁護士を代理人として、京都弁護士会に人権救済の申立を行った。被申立人は八田英二・同志社大学長と石川健次郎・同志社大学キャンパス・ハラスメント防止に関する委員会(以下、CH委)委員長である。
申立の趣旨は、(1)2003年9月から現在まで浅野教授を被申立人として係属しているCH委の案件について、CH委がすみやかに審理し、結論を出すこと(そもそもCH委への申立自体が虚偽なので調査打ち切りが妥当)、(2)CH委の審理過程において石川委員長が“ハラスメント被害者”の三井氏及び中谷氏に発した文書等の関係資料多数が報道機関等に流出・公表されたことに関し、事実経過及び原因を調査し、適切な措置を採るべきこと――の2点について、京都弁護士会として、八田学長と石川委員長に警告・勧告をするよう要請したものだ。

 浅野教授はこれまで代理人を通じて何度も結論=調査の打ち切り等を出すように求めているが、CH委は「静観」を続けてきた。浅野教授は、約7年に達する「放置」を人権侵害だと考え、京都弁護士会にこの救済の申立を行った。

4.大学における正常なプロセスを求める学内の動き

学部長が石川CH委員長へ浅野教授事案の説明を公式に要請

 沖田行司・同志社大学社会学部長兼同志社大学大学院社会学研究科長(当時・2010年度まで)が2010年11月17日、CH委の石川健次郎委員長(商学部教授)に、浅野教授が2003年9月27日から被申立人にされて審理が今も続いている事案について、詳しい状況説明などを要請した。12月3日(金)午後、沖田部長が浅野教授に明らかにした。

 沖田学部長によると、同志社大学社会学部・社会学研究科事務室の柳澤政宏事務長が、CH委員会を所管する同志社大学倫理審査室へ電話で「学部長が今から行く」と公式に通知した上で、今出川校地・有終館にある倫理審査室に出向き、志子喜武・倫理審査室事務長ら二人と面談して要請した。

 沖田部長は「社会学部長として公式に来た」と述べ、「学部所属の教員にかかわることであり、現状を知りたい」と強調した。その上で、①社会学部の浅野健一教授が委員会の被申立人となってから7年以上が過ぎたが、この事案は今どうなっているのか②早急に結論を出し、浅野教授へ結果を伝えてほしい―と申し入れた。沖田学部長は「①については、可及的速やかに、石川委員長が沖田部長に会って報告、回答してほしい」と強調した。

 志子事務長は「石川委員長と相談して対処する」「②については、確かに承りました」と答え、沖田学部長は「石川委員長と対面の上、委員長から直接回答を聞きたい」と重ねて要請した。

 また、浅野教授は11月10日の社会学研究科委員会(大学院の教授会)で、メディア学専攻の渡辺教授にかかわる次年度の定年延長に関し、「渡辺教授が余人に代え難い院教授ではない」として、反対演説を行った。約15分間の演説の際、「なぜ延長に反対するか」と題した資料を回覧した。渡辺教授は、“ハラスメント被害者”に代わって同委員会(当時は、セクシュアル・ハラスメント防止に関する委員会)に浅野教授事案を持ち込み、文春、毎日新聞などを使って浅野教授事案に関する大量の情報を流失させていた。浅野教授は「委員会の結論次第では、処分などの不利益が予想される事案で、7年以上も“被疑者”のような扱いを受けており、教育研究上だけでなく社会生活にも影響が出ている。研究科、学部として当該委員会へ、早急に結論を出すように要望してほしい」と発言した。浅野教授は2009年11月11日の研究科委員会でも、渡辺教授の次年度の定年延長に反対する同様の演説を約20分間行っている。

 沖田研究科長は浅野教授の発言を受けて、「大学長らに浅野先生の提起されたことについて、対応するようあらゆる機会で要請する」と表明していた。沖田学部長は09年11月にも、石川委員長へ同様の要請を行っている。

 沖田学部長は体育会ラグビー部の監督を務めている。石川委員長は体育会会長である。

 浅野教授が09年11月に渡辺教授の定年延長に反対する演説を行った後も、一部の社会学部教授が沖田学部長に、「どうしてあのような演説をやらせるのか。やめさせるべきだ」と言ってきたという。沖田学部長は「教員には表現の自由があり、演説を止めさせることはできない」と突っぱねたという。

学部長が石川CH委員長へ浅野教授事案の説明を公式に再び要請

 沖田行司学部長は2011年1月21日(金)午前、石川健次郎・キャンパス・ハラスメント防止に関する委員会委員長(商学部教授)に、浅野教授が2003年9月27日から被申立人にされて審理が今も続いている事案について、詳しい状況説明を行うよう二度目の公式要請を行った。沖田部長が浅野教授へ明らかにした。

 柳澤政弘社会学研究科・社会学部事務長(当時)が事前に電話で、CH委員会を所管する倫理審査室の志子喜武事務長に「学部長が今から行く」と連絡して、今出川校地・有終館にある倫理審査室に出向き、志子事務長に要請した。

 沖田部長は「社会学部長として再び公式要請のために来た」と述べ、「学部所属の教員にかかわることであり、現状を知りたい」と強調した。その上で、①社会学部の浅野健一教授が委員会の被申立人となってから7年半が過ぎたが、この事案は今どうなっているのか②早急に結論を出し、浅野教授へ結果を伝えてほしい―と申し入れた。沖田学部長は「石川委員長が私に会って報告、回答してほしい」と強調した。

(了)