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『救援』2010年5月号
浅野健一同志社大学教授が昨年九月二日、週刊文春による人権侵害記事の・キーパーソン・である渡辺武達教授を相手取り、三八五〇万円の損害賠償を求め東京地裁(民事第七部)に起こした訴訟(以下、渡辺裁判)で、第三回期日(弁論準備手続き)が四月二〇日(火)午後、同部準備室で電話会議によって行われた。山崎勉・前裁判長の異動に伴って、今回から堀内明裁判長に交代した。
原告の浅野教授と、原告代理人である弘中惇一郎・小原健司・山縣敦彦各弁護士が出廷し、被告側は渡辺教授代理人の池上哲朗弁護士が電話で参加した。双方の代理人は、準備書面を期日の一週間前までに提出するよう要請されていたが、被告側は「第二準備書面」を、二〇日当日午前中に、裁判所と原告代理人の事務所にファクスで送ってきた。原告側は一三日に提出している。これでは、原告側は、被告側の書面を充分に吟味できないまま期日に臨むことになる。このような行為はきわめてアンフェアだ。この点を原告側は指摘し、裁判所も「次からは必ず提出期限を守るように」と注意を促した。
被告は書面冒頭で、「乙三号証のとおり、毎日新聞京都広報版二〇〇五年一二月三日『追跡京都二〇〇五 同志社大セクハラ防止委 大学側 不満なら裁判を』の記事は、原告の問題を含め、教授が院生らに行ったセクハラ問題を取り上げた上で、同志社大学セクハラ防止委員会の調査体制の限界と課題を指摘したものである」と書いている。が、毎日新聞に「京都広報版」は存在しない。「地方版」の間違いだ。また、まだ提出していない乙号証について突然「乙三号証のとおり」(実際は乙一号証となるはず)と書くなど、信じられない杜撰さであった。原告側の指摘により、被告側は書面の陳述を留保した。裁判所は被告の書面について、「被告は今週中に乙一号証を直送してほしい。原告は、被告の書面内容を検討の上、釈明及び反論を準備してほしい」と指示した。原告代理人によると、期日終了後、被告代理人から書面の差替版、証拠説明書、乙一号証が送られてきたという。
また、被告は書面で「毎日新聞社の方から取材要請があったもので、しかもその要請は文藝春秋の取材要請前に行われている」と述べ、毎日新聞が文春より前に取材してきたと今回初めて明らかにした。被告側は続けて「マスコミ業界ではすでに原告を含む同志社大学教員が院生らにセクハラ行為を行っていたことが問題となっていたことがわかり、かかる事情は本件記事記載の事実が被告らの捏造によるものではないことを裏付ける間接事実の一つとなる」としているが、とんでもない屁理屈だ。渡辺教授がマスコミ界に原告・セクハラ・被申立事案があること垂れ込んだのだ。
渡辺教授を中心としたグループが浅野教授に「敵意」を持ち、文春を使って浅野教授を虚偽事実で闇討ちし、深刻な社会的ダメージを与えたことは、文春裁判確定(二〇一〇年三月一六日)で明らかになっている。毎日新聞の取材・報道活動は渡辺教授の一連の不法行為の免責には一切ならない。渡辺教授が取材を受けたと主張する毎日新聞記者は京都支局の太田裕之記者らと思われる。太田記者の証人喚問は避けられないだろう。 ちなみに、毎日新聞(東京本社版)は浅野教授の文春裁判勝訴確定後の報道でも、アカハラがあったとする人権侵害記事を書き、文春裁判一審京都地裁判決(〇八年二月二七日)の際も、翌日の西部本社朝刊で「教授のセクハラ 一部真実と認定」というとんでもない見出しをつけた。また、高裁判決(〇九年五月一五日)の際も、「アカハラだけを認定した」と報道した。浅野教授は、これら一連の人権侵害報道に対し抗議を続けている。毎日新聞は渡辺教授と同様に「確信犯」の可能性が高い。
また、裁判所は、原告側の不法行為立証について「報道機関の主体性」(情報提供者の責任)の問題に注目し、「情報提供者(被告)と報道機関(文藝春秋)の関係、記事掲載前に両者の間でどのようなやりとりがあったのか等について、具体的な主張をしてほしい」と原告側に伝えた。これも、文春裁判の過程で、特に〇七年七月一〇日に渡辺教授が文春側の証人として証言したときに明らかになっている。
渡辺裁判の次回期日は六月八日(火)午後二時から、電話会議システムでとなった。被告側は期日をすべて電話会議で済ませており、一度も直接参加していない。原告代理人の一人、小原弁護士(前・京都弁護士会副会長)は、三回とも京都から東京地裁へとんぼ返りで足を運んでいる。被告側も裁判所と原告側に顔を見せるべきではないか。
文春裁判浅野支援会は「浅野教授の文春裁判勝訴確定を祝う会」を五月一三日(木)午後七時から、同志社大学今出川校地・寒梅館七階の「SECOND HOUSE will (セカンドハウス ウィル)で開く。冤罪被害者の菅家利和・西巻糸子・山田悦子・桜井昌司・杉山卓男各氏らが参加する。
(三津奈悟)