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『救援』第448号 2006年8月10日発行
※注)『救援』紙上では、A・D両氏の実名が記載されていますが、本HPでは「浅野支援会HPの顕名基準」に従って、「A」「D」(文春記事の表現)と表記します。本HP上の顕名基準につきましては、「HP上での“闇打ち”グループの顕名・匿名基準について」をご覧ください。

渡辺同大教授が情報源 守秘義務違反の文書流用 ・・・浅野教授文春裁判

 初めて渡辺武達教授の名前出す

 「週刊文春」記事で名誉を毀損されたとして、浅野健一・同志社大学教授が文藝春秋などに損害賠償一億円と謝罪広告を請求した訴訟の第三回口頭弁論が、七月五日午後、京都地裁(中村哲裁判長)で開かれた。「松本サリン事件」報道被害者の河野義行さんらが傍聴に駆けつけた。

 文春代理人の喜田村洋一、藤原家康両弁護士は、六月二十三日付被告準備書面、七月五日付「証拠説明書」を提出した。喜田村弁護士は第2回口頭弁論(五月十日)に示した証拠の原本の一部も提示し、「真実相当性を証明するための書証はすべて出した」と述べた。

 文春側は書面で、《「週刊文春」編集部で本件記事を担当したのは、石井謙一郎デスクと被告石垣篤志記者、被告名村さえ記者であり、取材は主として石垣、名村両記者が行った》《両記者は、同志社大学社会学部メディア学の渡辺武達(たけさと)教授(当時・大学院新聞学専攻教務主任。本件記事の「B教授」)に取材し》、記事に書かれた様々な内容について《説明を受け》《その説明の裏づけとなる資料の提供を受けた》ことを明らかにした。

 書面は、両記者がA氏とD氏から《説明を受け》《資料の提供を受けた》ことも明らかにした。A氏は渡辺教授が指導する元院生で、〇四年四月から同志社大学社会学部で非常勤講師、B氏も〇四年四月から今年三月まで同講師を務めた。

 書面はさらに、記事中の《E子さんが所属したゼミの教授》の大学名と姓名を明記し、《取材した》と指摘。両記者が取材した《同志社大学の大学院博士課程に九八年に入った》男性(渡辺教授の元院生で現在、大学助教授)の大学名と姓名も明らかにした。
 これにより、文春の直接取材を受けたのは、この5人であることがはっきりした。

 一方、書面は記事の中で最もインパクトの強い「C子さん」に関する記述で登場する「教員」を始め、「同志社大関係者」「ある教授」の取材過程・人物特定を全くしていない。しかし、総合的に判断すると、これらの人物が渡辺教授であることも確実になった。

 さらに、文春側代理人は今回の弁論で、大学のセクハラ委員会が昨年5月にA、D両氏に郵送した私的な手紙の「原本現物」2通(封筒付)を示した。

 この裁判では、文春側に公益性、真実性などの立証責任がある。今後の証人申請について喜田村弁護士は、「(文春)記者(二人)は当然出すが、第三者(渡辺教授・D氏・A氏ら)については、連絡をとるための時間が必要」と述べた。しかし、記事は主に渡辺教授・D氏・A氏への取材をもとに書かれており、彼らが証人として出廷することは避けられないと思われる。


 「学内文書」流用の責任

 文春側が今回提出した証拠書類で、同志社大学教員であるA・D・渡辺の三氏が、学内文書を文春に渡したこと、すなわち教職員の守秘義務に違反したことがはっきりした。

 同志社大学内ではA、D両氏の申立に基づくセクハラ委員会の審議が継続中であり、たとえ結論が出た後でも学内事案をメディアにリークすることはルール違反も甚だしい。両氏と渡辺教授は、セクハラ委に提出した資料やセクハラ委から受領した書面を、セクハラ委や被申立人(浅野教授)らに無断で文春記者たちに渡すか見せたうえで、内容を説明していたのだ。

 文春記事は「同志社NAVI」「2ちゃんねる」、「Wikipedia」、渡辺教授のゼミなど各種インターネット掲示板やホームページ記事等の上で引用され、名誉毀損横行は凄まじい。

 浅野教授の代理人は七月末、セクハラ委に対し、早急な潔白報告を求める意見書を出した。意見書は、「決定遅延や申立人ら宛への中間での文書送付が、委員会の存在意義を根底から損なうような情報漏洩・守秘義務違反の横行を招いている」と指摘した。


 京都で支援会

 第3回弁論翌日の七月六日夜、京都市内で、浅野教授の『戦争報道の犯罪』(社会評論社)出版を祝い、文春裁判闘争を励ます会が開かれ、約五十人が参加した。主催は、「浅野教授の文春裁判を支援する会」(連絡先:〒604−0971 京都市中京区富小路通丸太町下る 富友ビル3階 堀和幸法律事務所気付 電子メール:on-sk@hotmail.co.jp FAX:075―231―5752)。

 会では、ニューヨーク市立大学経営大学院の霍見芳浩教授が記念講演、「大学教授ほど嫉妬心の強い人間はいない」などと記事掲載の背景を分析し、適正手続きを無視した文春と文春に情報を垂れ込んだ大学教員たちを批判した。また、「人権と報道・連絡会」事務局長の山際永三氏が「マスメディアを根源的に批判する浅野氏に対する攻撃は前からあった。連絡会への挑戦と受け止め、今回の攻撃を仕掛けた連中を叩きのめすまで闘う」と決意表明。支援会事務局長の山口正紀氏は、「今回の弁論で、文春記事の中心部分が浅野氏の職場の同僚である渡辺武達教授からの取材で書かれたものであることを、文春が事実上認めた。渡辺教授はメディアリテラシーの専門家として、このような読者をたぶらかす記述構造を何とも思わないのだろうか」と批判した。

 「甲山事件」冤罪・報道被害者の山田悦子さん、河野義行さんらも本訴訟の重要性を訴え、米紙の通信員であるジャーナリストは「浅野教授は国際的なレベルで通用する数少ない研究者だ。メディアの真実を語る学者が少ない中で、浅野教授は例外的。これからも支援したい」と述べた。同志社大の学生・教授らは「同志社でなぜこういうことが起きるのか。メディア学の研究者たちが文春に虚偽情報を垂れ込むのは信じられない。この裁判は大学改革闘争でもある」などと、支援を表明した。


 次回口頭弁論は九月

 次回四回目の弁論は、九月十三日(水)午後一時十分から京都地裁二〇八号法廷で開かれる。原告側は八月末までに、文春側の主張に対して反論する書面を提出する。

 証人調べの開始は年末から来春の見通し。文春の出版活動を著書などで激しく批判し、自らの対「週刊新潮」裁判では原告として「書かれる側の人権」を主張する渡辺教授や、メディア学の研究教育者であるD氏・A氏の法廷における発言が注目される。

 (三津奈悟)
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