浅野健一・同志社大学社会学部メディア学科教授による「週刊文春」裁判の上告審で、被告文春側が七月一六日に出した上申受理申立理由書に添付された立命館大学の佐藤春吉・産業社会学部長らの「上申書」で、佐藤氏らは〇四年夏、「E子」らの事案と同類の“浅野セクハラ”事案が同志社大学のセクハラ委員会に係属していると聞いたので、同委員会の推移を見守ることとして立命館大学のセクハラ委員会では審理されなかったという趣旨のことを述べている。
浅野教授側は一〇月七日と一一月一〇日、同大の八田英二学長らに対し、「同大の誰かが浅野事案を立命館大学学部長らへ漏洩したことは明白で、最も慎重に扱わなければならない守秘義務のある事項の一つであるセクハラ委関連の情報が、学外に漏れていたことは大問題であり、漏洩したのが渡辺教授グループであることは、ほぼ疑いの余地がない」として、学内調査の実施と立命館大への抗議を求める要望書を送った。しかし、大学側は一〇月二九日と一一月二〇日付で、「ご意見として承っておく」としながら、学内において調査する必要のないものと思料する」などと不誠実な回答をした。
浅野教授は「セクハラ委員会で審理されているという事実が被申立人の実名と共にライバル校に漏れるというのは、大学であってはならない守秘義務違反。犯人を見つけて処罰すべきだ」と述べている。
また、文春裁判と関連して、月刊『創』九・一〇月合併号に掲載された津田正夫・立命館大学産業社会学部特任教授の寄稿《『創』八月号山口レポートへの反論》が、浅野教授への新たな人権侵害となっている問題(詳しくは「浅野支援会HP」http://support-asano.netを参照)をめぐり、浅野教授と山口正紀・浅野支援会事務局長が求めた訂正記事掲載について、「創」の篠田博之編集長が二人との会談で訂正謝罪に同意した。それに基づき、「創」一二月号(一四二〜一四四頁)に、山口氏の津田記事への反論文《「反論」に名を借りた新たな人権侵害》を載せた。山口氏の記事冒頭の《編集部より》は《この問題について編集部に認識不足があったことを認め、浅野氏にお詫びしたい》という謝罪と経過説明が掲載された。これは「津田反論」が人権侵害記事であったということを『創』編集部として公式に認めたものである。
また、篠田氏は同号の「編集室から」で「当方のこの問題への認識不足から浅野さんに迷惑をかけてしまったことをお詫びします」と書いた。山口反論は、津田寄稿の欺瞞性を事実に基づき徹底的に批判している。この問題をめぐっては、渡辺教授も「山口記事に対する反論文を掲載してほしい」と篠田編集長に再三要請していたことが分かっている。
立命館大は同月二七日、社会学研究科の五〇代の教授を、セクハラ行為を繰り返したとして諭旨解職処分にした。また、セクハラ行為をしたとして調査中だった別の六〇代の教授の依願退職を認めた、と発表した。津田教授はこの二人の実名を明らかにして、セクハラ被害者の学生のために闘わなければ、二重基準と言われるだろう。
また、浅野教授が九月二日、文春記事の「キーパーソン」である渡辺教授(東京五反田に事務所兼住宅あり)を相手取り、三八五〇万円の損害賠償を求める新たな訴訟を東京地裁に起こした件で、東京地裁(民事第七部、山崎勉裁判長)は一一月一九日付で、被告・渡辺教授側が出していた東京地裁から京都地裁への移送申立てを却下する決定を行った。
被告代理人の池上哲郎、拾井美香両弁護士は一一月五日に、同部へ「答弁書」を提出し、《被告(渡辺教授)が原告(浅野教授)に対し敵対意識を抱いたことはない》《同志社大学のセクハラ防止委員会に対する迅速な処理要求等といった公益目的を図るために、(文春に)資料・情報の提供を行った》《メディア学科の決定に基づく行動だった》などというめちゃくちゃな論理・学内規則違反・驚くべき虚偽を並べたてていたが、移送申立却下の決定は、渡辺教授側の主張をことごとく退けた。
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