浅野健一・同志社大学社会学部メディア学科教授による「週刊文春」裁判の上告審で、原告浅野教授側は七月一七日、上告受理申立理由書を最高裁に提出した。理由書は文春への謝罪広告命令の必要性を訴えた。また、八月一三日に上告受理申立理由書補充書をはじめ、謝罪広告掲載による名誉回復を述べた立命館大学法科大学院・和田真一教授の意見書、ウェブ上における二次被害(文春記事の拡散)の最新報告書も提出した。 一方、文春代理人の喜田村洋一弁護士は七月十四日に上告受理申立理由書を提出した。理由書には「資料1」として、〇三年当時、津田正夫立命館大学産業社会学部教授のゼミ学生であったE子(浅野教授の同僚である渡辺武達教授の一審証言によると、関西の放送局に勤務)の陳述書が添付されている。また、「資料2」では、E子が当時、立命館大学内のセクハラ相談員に相談したことは事実だと、産業社会学部の佐藤春吉学部長、岡田まり教授以下、学部事務長(現、前)ら計五人が連名で書いた。しかし、控訴審ではE子部分について、真実性・真実相当性は完全否定されており、既に決着がついている。文春側の理由書は、渡辺氏と津田氏が下書きした上で、喜田村弁護士が書面化した可能性が高い。また、「セクハラ冤罪」に加担し続けるE子や岡田氏ら公人の社会的責任や、役職名を明示して文春側に協力した形となった立命館大教職員らの法的責任は免れないだろう。立命館大は法務・コンプライアンス室が中心になって連名文書について調査中で、「大学とは全く無関係の私的な言動」(藤田淳人同室次長)と原告に表明している。 浅野教授側は九月一七日、最高裁に「文春理由書は原判決の事実認定をいたずらに論難するもので、上告受理の要件に該当せず反論する価値なし」とし、文春側の「新証拠」が新たな捏造文書だと主張する答弁書を出した。
浅野教授が渡辺氏を提訴
浅野教授は九月二日、文春記事の「キーパーソン」である渡辺教授(東京五反田に事務所兼住宅あり)を相手取り、三八五〇万円の損害賠償を求める新たな訴訟を東京地裁に起こした。渡辺氏が虚偽事実を捏造して文春に情報提供したほか、浅野教授の名誉を毀損する行為を数年に渡って多数行ったというのが提訴理由で、渡辺氏自身の行った八項目の不法行為を挙げた。「渡辺グループ」(高裁は〇四年に結成と認定)は、文春裁判控訴審判決が記事の真実性・真実相当性を明確に否定したにもかかわらず、浅野教授の人権を侵害する行動を今も続けている。
第一回口頭弁論は一〇月二六日(月)午前一〇時一五分から、東京地裁六〇六号法廷で開かれる。原告代理人は弘中惇一郎弁護士ら七人。
浅野教授は提訴後、弘中弁護士らと共に司法記者クラブで会見し、「文春が非を認めず、謝罪訂正を行う見通しもない現状では、文春記事のネタ元である渡辺教授の法的責任を明らかにして、ネット上の不当な書き込みの削除なども求め、名誉回復をはかるしかないという判断から提訴した。渡辺教授と私の両方が同志社の教壇に立つことはできない」と表明した。
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