浅野健一・同志社大学教授が「週刊文春」記事を名誉毀損で訴えた損害賠償請求訴訟の上告審が近づいている。七月中旬までに原告・被告双方が上告手続きを終えたが、その中で文春側が上告の一部を取り下げたことが明らかになった。
上告には「憲法違反」の該当を争う・狭義・の上告(=上告理由あり)と、真実性や相当性だけを争う・広義・の上告(=上告受理申立)があるが、文春は、控訴審判決に「憲法違反」を主張できる材料がなく、広義の上告のみに絞ったと思われる。しかし、本件の場合、事実認定は控訴審で終了しており、最高裁で見直される可能性はほとんどない。
文春は、控訴審で完全敗訴した際、「セクハラ行為の事実すら認めない今回の判決は驚がく以外の何ものでもない。直ちに上訴する」(毎日新聞)などとコメントしたが、それがメディア向けのポーズであったことを、「上告」取り下げで自ら暴露した。
最高裁の判断が注目されるが、それとは別に、無責任な文春の社会的責任及び、文春と結託して浅野教授の「研究者・ジャーナリスト生命」を抹殺しようと企んだ渡辺武達教授らの責任を追及する必要がある。また、渡辺教授グループの「暗躍」を黙認してきた同大当局に対しても、市民の批判を強めていく必要がある。
浅野教授担当講義のゲストとして同大に来校した河野義行さんが七月二日、浅野教授が六年間も「キャンパス・ハラスメント防止に関する委員会」(以下、CH委)の被申立人として放置されている件について、同大として早く公正な結論を出すよう要望書を八田英二学長宛に提出し、また口頭でも同様の要請をした。当初は、河野さんは学長との面談を希望していたが、学長が不在であり、柳井望・総務部庶務課長が代理として河野さんと面談し、要望書を受け取った。河野さんは「CH委が申立人ら(中谷聡氏・三井愛子氏・渡辺武達教授)の申立ての却下=調査の打ち切りが相当」「CH委のような独立性を持った大学機関の結論が、民事裁判の結果に左右されることは大学の自治を侵す問題」「同大の教育目標である自治自立に反する」などと要望した。
また、七月三日には、ニューヨーク市立大学経営大学院の霍見芳浩教授が同大に公開講演会のため来校し、CH委を所管する倫理審査室の田中憲次主事らに、河野さんと同趣旨の要望書を提出し、「今回のケースのように、申立人がCH委に無断で『浅野教授が学内CH委の被申立人になっている』という本来守秘されるべき事実(虚偽)を脚色して学外にリークし、この「事実」を浅野教授のクロの証しとして世間に喧伝した場合は、欧米なら学外の司法の判定とは無関係に、大学は申立人を大学教師としての公正と品格を欠くとして、最低でも譴責処分にする。しかし、同志社大は申立人を不問にしている。この事実が既に同大の名誉を傷つけている」と強く述べた。霍見教授は、同様の要望書を学長とCH委員長宛にも提出した。
同志社大学教職員組合の組合三役(越智礼子委員長ら四人)も六月五日、中山健二総務部長との三役折衝で、浅野教授の事案に関するCH委の「審議中断」問題について取り上げ、裁判を理由にした「静観」の理由を質した。
浅野教授の事案を六年経っても、「裁判で係争中」を理由にたなざらしにして、悪徳メディアを使って浅野教授を闇討ちした「浅野教授に敵対する渡辺教授グループ」(二審判決では〇四年発足と認定)の守秘義務違反、名誉毀損の言動を不問にしている同大学当局の責任が問われている。
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