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『救援』 2009年 6月号

 浅野健一同志社大学社会学部メディア学科教授が「週刊文春」記事を名誉毀損で訴えた損害賠償訴訟の控訴審判決が、五月十五日午後一時十五分から大阪高裁別館七二号法廷(松本哲泓裁判長)で言い渡された。高裁は京都地裁判決を変更し、原告の主張を大幅に認め、被告・文春側に五百五十万円の支払いを命じる判決を言い渡した。
 判決は渡辺武達教授(浅野教授の同僚)による証拠の改竄を再び指摘し、一審判決が名誉毀損を認めなかった「E子へのセクハラ電話」記述について、「真実性」も「真実相当性」も完全に否定した。
 この二審の認定により、文春記事と「謀略グループ」によって浅野教授に着せられた「セクハラ教授」の濡れ衣は完全に拭い去られた。
 判決は一方で、「D(中谷聡氏)に対するアカハラの記載」については一審同様、名誉毀損とは認定しなかった。判決は中谷聡氏を渡辺グループの中で対メディア工作の重要人物と認定しておきながら、「記事ねつ造グループに加わってはいけない」と諭した浅野教授の言動を不当と判断しているが、これは矛盾している。
 また、判決は原告側が強く求めていた「名誉回復のための謝罪広告の掲載」は「他に名誉回復の手段がある」などとして認めなかった。このため、浅野教授側は五月二十七日、上告申立書を出した。
 一方、被告・文春の社長室も同日、メディアの取材に「上訴」を表明。喜田村弁護士が二十一日に上告。最高裁は事実認定に関する審理をしないので、文春の上告は受理されない公算が大きい。
 文春裁判は謝罪広告をめぐって引き続き最高裁で争われることになるが、〇六年一月の提訴以来三年四カ月に渡った浅野教授の闘いはセクハラ有無の争いでは全面勝利が確定した。
「E子記述」も名誉毀損とした控訴審判決
 二審判決は、原告側が「維持」を求めた一審判決の判断を踏襲した上で、被告が二審で新たに出した「C子」のメールについても、渡辺教授による改竄の可能性を指摘した。また、「E子文書」に関しても改竄の可能性を示唆し、「真実性・真実相当性」を完全に否定し、一審判決の認定を覆した。
 一審判決では渡辺教授が原告に「敵意に近い感情を持っていた」と認定したが、二審判決では渡辺・三井愛子・中谷聡・野原仁(渡辺教授門下生、岐阜大学准教授)各氏を一つの「グループ」として括り、〇四年以降、原告と敵対関係にあったと明確な構図を示し、津田正夫立命館大学産業社会学部教授(元NHKディレクター)を同グループへの「協力者」と認定した。
 判決は、M子が作成して送付したという「証明書」について、「津田教授のいうままに押印したことが窺われる」「E子が作成したかどうかを確認する客観的な証拠はない」「E子とM子が同一人物かどうかさえ確認できない」とし、証拠として採用できない旨を述べた。
 判決はまた、文春がE子に直接取材しなかったことに言及し、「E子の被害の報告は情報提供者である三井及び津田教授に送付されたという書面だけ」としたうえで、津田教授を信用できる人物かどうかに疑いの目を向け、津田教授からの取材が「原告と敵対関係にあった渡辺教授を通じての取材」と述べ、真実相当性も否定した。
 判決はまた、「(渡辺教授が)文春らの取材に協力することは、本件大学の信用を傷つける行為となるが、本件大学のセクハラ委員会が再調査を始めたという状況にありながら、文春への情報提供をしたのは、本件大学への不信感と原告への強い敵対意識を窺がわせる」と述べ、渡辺教授が浅野教授へ「敵対」していると九回も表現した。
 このほか、原告を除くメディア学科専任教員の姓名も3回判決文に出しており、教員たちが、浅野教授に一度も質すこともなく、浅野教授に「敵対」意識を持っている渡辺教授と連名で、原告、セクハラ委員会、学長に対して要請文を出したことに疑問を投げかけた。
 また、文春側は「原告が取材申し込みを拒否したこと」が真実性を裏付けると主張していたが、判決は「原告には被告らの取材に応じる義務は全くなかった」と一蹴した。 
 判決は結論として、文春の記事およびHP・広告は「違法」だとして、鈴木編集長らは「原告に対して不法行為責任を負う」と断じた。違法で不当な記事を真実との前提でネットに掲載している渡辺教授のHP「渡辺ゼミ掲示板!!!」、同志社ナビなどの責任も重い。
 判決後、浅野教授は弁護団と共に大阪と京都の司法記者クラブで会見を開き、「我々の主張をほぼすべて入れた判決で高く評価する」「渡辺、津田両教授にメディア学を教える資格はない。今すぐ教授をやめるべきだ」などと表明した。
 同大は昨年末、大麻所持で有罪(執行猶予付き)となった大学生を「(報道で)大学の名誉を傷つけた」との理由で退学処分にしている。高裁判決で、大学に不信感を持ち、大学の名誉を傷つけることを百も承知で人権侵害メディアに虚偽情報を持ち込んだと認定された渡辺教授とライバル校の立命館大学の津田教授。同大と立大が両教授に対してどういう措置をとるのかに注目したい。
(三津奈悟)
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