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『救援』 2009年 4月号

 浅野健一・同志社大学教授が「週刊文春」記事を名誉毀損で訴えた損害賠償訴訟・控訴審の和解協議が三月十六日午後、大阪高裁で行われた。
 二月十三日の第五回口頭弁論で控訴審が結審したあと、裁判所が職権で和解を提案して開かれた協議だが、被告・文春側が裁判所の打診した和解案を拒否し、和解協議は打ち切られた。この結果、前回の期日指定どおり、五月十五日午後一時十五分から、大阪高裁別館七二号法廷で、控訴審判決が言い渡されることになった。
 和解協議は松本哲泓(てつおう)裁判長と白石研二裁判官(右陪席)の二人が担当した。
 最初に裁判所と原告側との協議が行われた。原告代理人は、「記事はすべて名誉棄損であり、謝罪広告の掲載、一審の維持、敗訴部分の見直しなどが認められないと和解できない」と伝えた。裁判所はこれに対し、全記事を虚偽としては被告が和解に応じる可能性は低い、控訴審で争った(「E子さん」部分と「Dさん」部分)事実関係について、真実性はある程度曖昧のままにして、文春が報道に踏み切ったことに問題があったと明らかにする形で和解できないかと打診した。
 続いて、文春側代理人の喜田村洋一弁護士が呼ばれ、裁判所と協議。その後、再び原告側が呼ばれ、松本裁判長は、「被告側としては一部でも記事が真実ではないことを認めるわけにいかないので賠償に応じるのも困難。和解文で記事の虚偽性を肯定するのも報道の生命線に反し譲れないという姿勢だった」と説明した。
その後、もう一度原告・被告双方が呼ばれ、松本裁判長は、双方の接点が見つからないと述べ、和解協議は打ち切られた。被告側と裁判所の詳しい協議内容はわからないが、結果的に被告・文春側が裁判所の提案を拒否したことになるので、裁判所の和解提案そのものが文春側として受け入れ難い厳しいものだったと推測できる。
 この結果、五月十五日午後一時十五分に大阪高裁別館七二号法廷で判決が言い渡されることになった。判決当日は、終了後、大阪の司法記者会で会見し、午後六時から京都弁護士会館地下ホールで控訴審判決報告集会を開く予定だ。
ゼミ学生らが要望書を提出
 浅野教授が「同志社大学キャンパス・ハラスメント防止に関する委員会」(石川健次郎委員長、当時は「セクシュアル・ハラスメント防止に関する委員会」で、以下「キャンパラ委」とする)で被申立人になっている事案についても大きな動きがあった。
 三井愛子氏と中谷聡氏(文春記事の「A子さん」と「Dさん」)が〇四年一月(実質的には渡辺武達教授が〇三年九月に持ち込んだ)に「浅野がハラスメントした」とキャンパラ委に虚偽の訴えを起こした件で、キャンパラ委は、調査はとうに終わって浅野教授は潔白だと分かっているにもかかわらず、文春裁判を理由に結論を先延ばしにしている。「被申立人」として、五年も放置していることは浅野教授への重大な人権侵害だとして浅野ゼミの現役学生・OBG計四十三名(三月二十六日現在)が立ち上がり、三月十七日に八田英二・同志社大学学長と石川健次郎・キャンパラ委委員長に、早く結論(申立人らの秘密保持規定違反などによる申し立ての却下=調査の打ち切りを含む)を出し、守秘義務を守らず学外に委員会情報を漏洩した申立人の元院生二人と渡辺武達教授らに厳正に対処すべきという要望書を、同志社大学倫理審査室(志子善武事務長)を通して提出した。浅野ゼミの学生およびOBGは、浅野教授の名誉回復はもちろんのこと、メディア学科の非正常な現状を正すことは大学の義務だという認識で一致している。
 これに対し、石川委員長は三月三十一日、「係争中の案件に関わる事柄であり、また大阪高裁での判決も予定されていることであり、その推移を見守る」と回答した。     
(三津奈悟)
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