浅野健一・同志社大学教授が「週刊文春」記事を名誉毀損で訴えた損害賠償訴訟の控訴審・第五回口頭弁論が二月十三日(金)午前十一時から、大阪高裁別館七階七二号法廷(第九民事部、松本哲泓裁判長)で開かれた。今回で控訴審の審理が結審した。傍聴には、浅野教授の支援者八人が駆けつけ、被告側では、中谷聡氏(文春記事中の「Dさん」)ただ一人顔を見せた。
松本裁判長からまず、同志社大学への調査嘱託について言及があり、同大から十二月二日付で「回答できない」との回答があったと述べた。
その後、双方が提出した書面・証拠の確認が行われた。一審原告側が提出したのは、準備書面(五と六)と浅野教授の第四次陳述書など、被告側は準備書面と乙第五九号証(立命館大学産業社会学部・岡田まり教授の第二陳述書)。岡田教授は、〇四年当時に立命館大学産業社会学部のセクハラ相談員であり、この陳述書で岡田教授は「大学の人事担当者が『申し立てはなかった』と答えたというのは歪曲です」などと書いている。
しかし、当時セクハラ相談室を所管した人事課は、文春記事掲載直後の浅野教授の質問に対して「浅野教授の事案は存在しない」と明確に答えている。人事課の担当者が浅野教授に言ったことを、なぜ岡田教授が「そんなことはない」などと否定できるのか意味が分からない。前回弁論に文春側証人として出廷した津田教授さえ「浅野教授の件は、セクハラ委員会に申し立てていない」などと証言している。
本裁判の背景には「週刊新潮」〇五年七月十四日号記事「同志社大『創価学会シンパ』教授の教材は『AVビデオ』」の存在がある。渡辺教授・津田教授は、この記事における情報提供者が浅野教授だと思い込み、文春を使って浅野教授攻撃を開始したのであるが、これは全くの「思い込み」に過ぎなかったことが今回完全に判明した。「週刊新潮」の早川清編集長が二月五日付で、一審原告代理人の「照会書」に対し、「(週刊新潮記事の)情報源についてはお答えできませんが、浅野教授とは一切無関係です」という回答書を寄せたのである。
結審後、松本裁判長は「職権で和解を勧告したい。和解の意思があるかどうかも含め、和解協議の期日を決めたい。和解が不調に終わった場合は、五月十五日に判決を言い渡す」と述べた。 和解協議の第一回目期日は三月十六日午後一時三十分で、松本裁判長と白石研二裁判官(右陪席)の二人が担当することになった。 浅野教授の「裁判所から和解提案は出されるのか」という質問に対し、松本裁判長は「まずは、双方の希望を聞きたい」「この種の事案の和解は、当事者本人の方が納得できるものでなければならない」と説明した。
弁論終了後、原告弁護団は和解勧告について「裁判所は最近、民事訴訟ではなるべく和解をという指揮が多い。本件でもとにかく和解の可能性を探ってみようということだろう」と支援者らに説明した。また、浅野教授は「津田尋問によって、『津田氏は渡辺教授とは違って中立・公正な立場の人間であり、E子も原告に敵意を持っておらずウソをつく必然性はない』という一審判断が全く誤っていることが明らかになったため、裁判所は和解の場を提案したのではないか。和解協議の過程で、高裁判決の概要も分かってくる。裁判所に誠意を見せて協力していきたい」と話した。また、浅野支援会の山口正紀事務局長は、「和解協議では、記事はすべて虚偽であり謝罪広告掲載を求める、という基本ラインを固めた上で、裁判所の意向を確かめながら、今後の方向性を探ることが必要だ」と話した。 |