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『救援』 2008年11月号

 浅野健一・同志社大学教授が「週刊文春」記事を名誉毀損で訴えた損害賠償訴訟の控訴審・第三回口頭弁論が十月三十日、大阪高裁七二号法廷で開かれた。松本哲泓(てつおう)裁判長になって初めての審理で、原告側が申請した証人五人の採否、同志社大学と立命館大学のセクハラ委員会に対する調査嘱託について、裁判所側がどのような判断を示すかが注目された。
 原告側が申請していた証人は、・山田悦子氏・森類臣氏・津田正夫・立命館大学教授・鈴木直人・同志社大学セクハラ委員会元委員長・生田勝義・立命館大学セクハラ委員会元委員長の5人。また、調査嘱託は、同志社大学と立命館大学に対し、それぞれのセクハラ委員会における本件関連の申立・処理状況などの調査・回答を求めるもの。
 松本裁判長は、・同志社大学と立命館大学のセクハラ委員会に、申立・事情聴取の有無について調査嘱託を行う・証人として津田正夫・立命館大学教授を採用する・他の証人は採用しない――との判断を示した。
 津田教授の証人尋問については、被告側の喜田村洋一代理人が「採用されるなら当方が主尋問したい」と述べ、被告側の主尋問三十分、原告側の反対尋問六十分と決まった。次回期日を一二月二日午後一時半とし、津田教授が出廷できるかどうか、被告側から裁判所に通知することになった。
 この日までに原告側は、文春の「実名セクハラ報道」が報道界でいかに突出した異常なものであるか報道事例をもとに指摘し、文春記事には公共性も公益性もないとして、損害賠償額引き上げと謝罪広告が不可欠とする準備書面を提出した。
 また、立命館大学大学院・和田真一教授による意見書も提出。意見書は、損害賠償だけでなく謝罪広告の掲載が名誉回復には絶対必要であると指摘、文春誌上だけでなく、文春の新聞宣伝広告にも謝罪広告を掲載する必要性を述べた。
 このほか、原告側は、浅野教授の控訴審第二陳述書、「E子さん」記述の虚偽をその場にいた関係者として指摘する森類臣氏の陳述書、人権と報道・連絡会の大住良太氏がネット上の報道被害の実態を明らかにした陳述書、大分・聖嶽遺跡訴訟で文春に謝罪記事掲載を命じる判決を勝ち取った賀川真氏、松本サリン事件報道被害者・河野義行氏、甲山事件冤罪報道被害者・山田悦子氏の意見書を提出した。
 一方、文春側は、「C子さんから三井愛子氏に送られてきたメールの写し」(本文九行)と称する「乙五四号証」を提出した。C子さんが浅野教授を避けているかのような文言が記されたものだが、原告代理人は「内容・体裁ともに疑問が多い。これまでの審理でも出さなかったものを、なぜ今ごろ提出するのか」と述べた。
 弁論終了後、報告集会が開かれた。代理人の小原健司弁護士は、裁判所が証人として津田教授を採用し、その他を不採用とした点について、「他の証人は陳述書などで十分と判断したのだろう」と述べ、「乙五四証」については「詳しくは書面で全面的に反論するが、このメールが存在したとは到底思えない」と話した。
 浅野教授は「高裁が、同志社大学と立命館大学のセクハラ委員会に対して調査嘱託をすると決めたのは評価できる。ただ、嘱託調査、津田教授の証人尋問が決まったといっても、それらがプラスに働くかマイナスになるかは、これからの闘いにかかっている。裁判官の心証を、こちら側に引き付けるための努力を続けたい」と話した。
(三津奈悟)
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