渡辺武達・同志社大学社会学部メディア学科教授が「週刊新潮」〇五年七月一四日号記事「同志社大『創価学会シンパ』教授の教材は『AVビデオ』」をめぐり、新潮編集長らを訴えた訴訟で、大阪高裁は三月二七日、渡辺教授の請求を却下する逆転判決を下したが、渡辺教授は最高裁に上告した。
渡辺教授は判決後、記者クラブに「講義の社会的効果を考えない短絡的な判決だ。到底承服できず、即刻最高裁に上告したい」とのコメントを寄せていた。
新聞各紙は三月二十八日に二審判決を報じた。しかし一審勝訴を詳しくオンエアした毎日放送など近畿のテレビ局は全く報道しなかった。聖教新聞は渡辺教授の提訴、一審勝訴の際は、時事通信記事を使い詳しく報道していたのに、高裁判決記事は全く載せていない。聖教新聞は「本紙は宗教団体の機関紙なので、独自の判断で編集している。新潮が勝った場合は掲載しない」とコメントしている。
新潮が勝ったからではなく、〇五年五月に「トインビー博士が求めたもの〜池田会長との対談から」と題して、「人間に温かいまなざしを注ぎ続けた博士が、仏法者の池田名誉会長を対談相手に選んだ事実に先見の明を覚える」「私たちは、三十年後の今を明確に見通したこの一書に学び、両氏が目指した平和の世紀を共に築いていこう」などと講演してくれた渡辺氏だから報道しなかったのではないか。
大阪高裁は〇七年七月から一貫して「補償金・謝罪広告なし」で、新潮が書面で一部書き過ぎを認める和解案を示していたが、渡辺教授は自分の代理人のアドバイスも聞かず拒否していた。控訴審で、実際にビデオを見た学生ら三人の同志社大学の院生・学部生が陳述書を出していた。
新潮関係者は「元学生の一人が実名を出したことが大きい。裁判官がビデオを見た正直な心証の判決だと思う。AVの話だけでなく出産ビデオ上映の件を認定した点が重要だ。AVだけでなく、非正常な講義だということが明らかだ」と指摘した。
「この問題を裁判にする必要性があったのかどうか。こういう教授を雇っている同志社大学は非常に崇高な大学だと思った。最高裁が残っているが、憲法判断になるので実質的に終焉している」
渡辺教授は判決日の午前九時半、ネットの「渡辺ゼミ掲示板!!!」に、「判決前のお知らせ」をアップし、仮名にしながら同僚の浅野健一教授が新潮に垂れ込んだとデマ宣伝した後、敗訴について沈黙している。
渡辺教授は〇五年七月に新潮を提訴した際、京都司法記者クラブで会見した際、「みなさんで、自由に見て判断してほしい」と言って、問題の日本ビデオ倫理協会(小杉武理事長)の広報ビデオの複製を記者クラブに置いていった。男性記者たちがビデオを見たが、「これを教室で上映したらまずいだろう」という声が多かった。高裁の裁判官もビデオを見て判断したと思われる。
渡辺教授はビデ倫の広報ビデオだから、問題はないと強調してきたが、ビデオを教室で学生に見せるということをビデ倫は知らずに、ビデオを同志社大に渡していたことがこのほど分かった。
ビデ倫にビデオの提供を依頼したのは、渡辺教授が所長をしている「同志社大学メディア・コミュニケーション研究センター」の事務員(女性)だった。ビデ倫の酒井政雄事務局長代理によると、この事務員は同センターの名をかたって、「各国の報道倫理を調査研究しているので、広報ビデオをもらいたい」と電話と文書で依頼したという。渡辺教授自身は提訴後に初めて電話をかけ、「こういうことになりましたが、ビデ倫には迷惑をかけません」とだけ伝えた。酒井氏は「大学の講義の教材に使うとは全く知らかった。広報ビデオと言っても、あのビデオは、ものがものだけに、慎重に扱っている。大人の世界のものだから、大学の講義で上映するということは、全く予想もしていなかった」と話している。
月刊誌「サイゾー」六月号に渡辺教授にかかわる二ページの記事が載った。浅野教授の文春判決と渡辺教授のAV判決が真実なら、渡辺教授のメディア学教授としての「死活問題」ではないかと結んでいる。フリーライターが署名入りで書いている。
一方、浅野教授の文春訴訟の控訴審は七月三日午後三時から大阪高裁で第一回口頭弁論が行われる。大阪高裁第九民事部書記官によると、文春側の控訴理由書は六月三日現在でまだ出ていない。期限は四月十八日だった。裁判所から喜田村洋一弁護士にファクスで、早急に出すよう要請したが、それに対する返信もないという。浅野教授側の理由書だけが喜田村事務所にファクスされている。非常にアンフェアなことではないか。
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