「週刊文春」記事で名誉を毀損されたとして、浅野健一・同志社大学教授が文藝春秋などに損害賠償一億円などを請求している民事訴訟の第八回期日が、四月九日午後四時より、京都地裁ラウンド法廷(中村哲裁判長)で行われた。傍聴者は六人で、全員浅野教授の支援者だった。
裁判は、浅野教授代理人の若松芳也弁護士の質問から始まった。「被告(文春)側の出した書証甲35号証(三井愛子氏が出したメールのプリントアウト)の原本を見たい」と求めたところ、被告代理人・喜田村洋一弁護士は「メール原本は抹消(メールにある黒塗り)前のもの。証拠としてこちらが提出したのは、固有名詞を抹消した写しである。原本には固有名詞があり見せられない。渡辺武達氏の陳述書に資料として添付されていたメールも、同趣旨で見せられない。しかし、見たい部分だけ原告から特定して請求があれば、一応、開示を検討する」と答えた。さらに若松弁護士は「被告側は、こちらの求釈明に全然答えていない」と指摘。喜田村弁護士は「既に出した部分もある。期間的にまだ全部の検討はしていない。回答可能な範囲は回答する」と答えた。中村裁判長も「期日前に応答していただけるところは応答してほしい」と被告側に伝え、期限を六月十三日と指定した。
証人尋問について、裁判長は「裁判所にて合議した結果、以下のような方針を考えている。人証申請については、被告は三井さん・中谷(聡)さん・渡辺さん・石垣(篤志)さんの4人。津田(正夫)さんは、E子の部分に絡むが、渡辺さんに聞けば大体のところは推測できる。野原(仁)さんについては中心争点ではないので、今の時点では証人として呼ぶ必要性はあまりない。また、原告については、Iさん・浅野さんの二人。尋問は二回に分けて行う。まず、第一回目の証人尋問では、三井さん・中谷さん・渡辺さん・Iさんの尋問。四時間から四時間半くらいを予定している。証人は、主尋問三十分・反対尋問同程度としたらどうか。次に、石垣・浅野さんの本人尋問は第二回目。主尋問は、浅野さん一時間半、石垣さんは三十分くらいになる。反対尋問も同程度。浅野さんについては、本人が出してくれた陳述書で大体のところは理解できている。主尋問、反対尋問をそれぞれ一時間程度としたい」と述べた。
被告文春側が請求していた津田正夫・立命館大学教授と野原仁・岐阜大助教授の証人が認められなかったことについて、喜田村代理人は何も言わなかった。
原告の浅野教授が「私の尋問に一時間ずつ計二時間必要と言われるならば、渡辺氏も主尋問一時間、反対尋問一時間くらいは必要ではないか。渡辺氏が他の証人も指示下に置いているのは明らかではないか」と質問すると、裁判長は「(渡辺氏への尋問が)少しくらい伸びるのはよい。渡辺が(本件の)キーパーソン≠セということは既に陳述書に出ていて、理解できる」と述べた。
裁判長は、渡辺氏を渡辺≠ニ呼び捨てにし、(原告浅野教授の陳述書で)よく理解している≠ニいう言葉も二回使った。基本的に原告側の主張に沿って理解しているようだ。証人については、四人を同席させずに、尋問する時間に来てもらうことになった。中谷氏・三井氏は午前、渡辺氏・I氏は午後となった。最後に裁判長は「被告は六月十三日までに、原告側の求釈明について回答するように」と述べ「記事に関する真実性、真実相当性の証明は被告側が立証しなければならない」と喜田村代理人に通告した。
「E子」の訴えの背景
浅野支援会の調査によると、文春記事中の「E子さん」が津田教授に告白≠オたのは、E子が実際に浅野教授と会ってから一年後だったことが分かった。関係者の証言で明らかになった。「E子さん」は、三井氏らからの虚偽情報を妄信して、「私だけでなかった、と知って勇気を持って告発しよう」と考え、津田教授に話すことを決めたというのである。
浅野教授は、「E子さんが誰かはっきりしないが、津田教授のゼミの女性の学生からメールが来て、同志社大学学生(男性、当時)と彼女の友人も同席している状況で会った。電話で話したことが一回あると記憶しているが、セクハラ発言など断じてない」と一貫して主張している。
また、当時浅野教授とともに「E子さん」に会った男子学生も「浅野教授は、文春記事にあるような発言を絶対しないし、むしろ毛嫌いしている。E子の虚言・創作だと強く思う。三井氏ら渡辺教授たちに、何かしらの利益誘導をされて丸め込まれたのでは」と、コメントしている。一年後≠フ告発というのがいかにも不自然であるし、なぜ「E子さん」が面識もない三井氏らから情報提供を受けることができたのか、解明が必要だ。
さらに「浅野支援会HPは私の名誉を毀損している。管理者にやめるよう言ってくれ」などと、管理者の姓名を挙げて、浅野教授に迫った人物がいたことも分かった。渡辺教授らがかなり広範囲に、支援会HPの管理者について歪曲した宣伝をしていることも明らかになった。
九回・十回期日は七月
中谷氏・三井氏・渡辺氏・I氏四人の証人尋問を行う第九回期日は、七月十日(火)午前十時三十分から午後四時三〇分までとなり、石垣氏・浅野氏の本人尋問を行う第十回期日は七月三十一日(火)午後一時一五分から午後四時三〇分となった。両日とも京都地裁二〇八号法廷で行われる。渡辺教授が証人として発言する十日午後が一番の山場になるだろう。また七月十日夜(午後六時〜八時)、京都弁護士会館地下ホールで、報告集会が予定されている。
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