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『救援』第450号 2006年10月10日発行
渡浅野教授文春裁判
原告側が「真実相当性」主張に反論
 「週刊文春」記事で名誉を毀損されたとして、浅野健一・同志社大学教授が文藝春秋などに損害賠償一億一千万円と謝罪広告を請求した訴訟の第四回口頭弁論が、九月十三日午後、京都地裁二〇八号法廷(中村哲裁判長)で開かれた。

 弁論では、原告・浅野教授の代理人が、被告・文春側の「記事は真実」との主張に対する求釈明の書面、被告側の証拠についての認否書類、証拠説明書を提出した。求釈明では、「文春記事の報道内容が真実で取材方法も適切だ」と主張している被告側書面への反論と、被告の主張の中で曖昧で意味不明な部分に対して被告側に回答を求めた。

 原告側は特に、記事の中で最もインパクトのある「C子」の部分と立命館大学の「E子」に関する記述について、文春記者が二人に直接取材をしておらず、渡辺武達・同志社大学社会学部メディア学科教授、三井愛子氏(同嘱託講師)、中谷聡氏(元・同嘱託講師)らの情報提供だけで記事を作成したとしていることについて、「真実と信ずるに足る相当の理由がない」と主張した。

 その上で、記事の問題点とその取材源の構図を示し、「被告らは、渡辺教授らの不当な動機に便乗し、その真偽を十分確認することもなく、安易にこれを信用し、本件記事を掲載したのであって、これを真実と信ずるに足る相当の理由がなかったことは明らかである」と結んだ。

 原告側はさらに、前回の文春側の書面で明らかになった取材源、特に渡辺教授への取材について、「いつ、どこで、どのような取材を行ったか」など取材過程の詳細を明らかにするよう被告側に求めた。

 書証認否書では、被告側の書類作成経緯においての不審な点などについて原告側が言及をしている。
証拠説明では、京都弁護士会会務報告書からの抜粋引用と同志社大学セクハラ委員会の内規などが提出された。弁護士会の報告書とは、「M・I」(三井愛子氏と推認される)が〇五年五月、京都弁護士会人権擁護委員会に「浅野教授からセクハラを受けた」などと救済申し立てをしたものの、それが調査不開始、つまり門前払い≠ナ終わっていることを記録した文書である。京都弁護士会人権擁護委員会もまともに取り扱わなかったほど、三井氏の訴えは荒唐無稽だという有力な証拠である。

 孤独な文春側代理人

 これら原告側が提出した書類について、裁判官は、喜田村洋一・文春側代理人に「原告側の求釈明の範囲で、答えられる範囲で答えていただきたい」と求めた。被告側からの回答は、十月十八日までに書面でなされることとなる。

 また、この日、裁判官が「被告側は、証人についてどう致しますか」と質したところ、喜田村代理人は「記者たちについてはすぐに出せるが、外部の第三者については、了解が必要」「私は東京から来ていますから」と答えた。

 裁判官は「第三者の了解を得られるかどうか、というのは時間もかかるだろうから、とりあえず予定だけでも良いから知らせてほしい。証人の候補者ということで、最終的なものでなくてもいい」と述べた。前回の口頭弁論のときも、被告側の答えは同じだった。前回から二ヵ月も経っているのにもかかわらず、だ。

 文春側には、この裁判に対しての熱意が見られない。口頭弁論は今回で四回目だが、文春の代理人で出廷したのは喜田村弁護士だけ。また、原告の支援者によると、文春編集部・法務部などから社員らしき人物が傍聴に来たことは一度もないという。

 渡辺教授のダブル・スタンダード

 第四回口頭弁論後の報告集会で、参加者の一人(ジャーナリスト)は「渡辺教授が証人として法廷に出てくるとすれば、彼は学者生命をかけて証言しなければならない。渡辺教授はこれまで、『メディア・リテラシー――情報を正しく読み解くための知恵』などの著作で、文春・新潮に代表される週刊誌ジャーナリズム≠フ人権侵害を厳しく批判してきた。その主張と、今回文春に学内文書まで渡し、文春の取材を受けて、自分は匿名・非難対象は実名で、一方的なことを喋ったことに、学問的整合性があるように証言しなければならないからだ。しかし、それは論理的には、どう頑張っても不可能だろう」と話した。

 また、浅野教授は「渡辺教授にポストなど様々な利益誘導を受けて、だまされて協力している人たちは、三井愛子・中谷聡両氏を含め、ある意味被害者とも考えられる。そういう意味でも、文春は早く記事を捏造と認め、私に謝罪し、裁判を終わらせてほしい」と語った。

 渡辺教授は「週刊新潮」(以下、新潮)〇五年七月十四日号で「同志社大『創価学会シンパ』教授の教材は『AVビデオ』」という記事を書かれて、同誌を相手取り損害賠償請求訴訟を起こしている。浅野教授の文春訴訟と同じ京都地裁だ。渡辺教授の新潮裁判の次回口頭弁論は十月十八日午後一時半からで、新潮の取材記者とデスクの証人尋問が行われる。

 また、渡辺教授は九月二十六日の聖教新聞の「メディアのページ」に、「文明の共存国際フォーラムに参加して」という「論文」を寄せている。渡辺教授は「自由で責任あるメディアを確立しよう」と提案して採用されたと述べて、次のように書いている。

 《「言論・表現の自由」は大切だが、「他人を悪意で傷つけたり虚偽報道をすることはメディアの自由ではない」ことを確認したかったからである》。

 文春を使って浅野教授を攻撃し、一方でこのような発言を恥ずかしげもなく堂々と言う。ダブルスタンダード(二重基準)とはまさにこういうことではないだろうか。

 次回は証人取調べの協議

 次回期日は十月二十五日(水)の午後四時半からと決まった。次回から、原告・被告双方が誰を証人として呼ぶのかなどの協議が始まる。また、陳述書の提出についても話し合われる。通常の法廷とは違って、裁判官と両代理人、原告らがラウンドテーブルを囲んで膝を突き合わせて話をする形となる。

 文春側が誰を証人申請するかで、文春の裁判に対する姿勢がわかるであろう。三井氏・中谷氏・渡辺教授の三人を証人として出してくるということになると、文春と渡辺教授らが一体となって、全面的に争う緊迫した裁判になろう。

 文春側が真実相当性を本気で争うのであれば、三人を出さなければならない。「三人の言ったことには信憑性がある」「それを聞いて書いた記事にも信憑性はある」という論理だ。しかし、逆に、この三人を証人にしない場合は、事実上「真実と信じるに足る相当な理由」の立証を放棄したことになるだろう。

 文春側が書面で「四人目の取材協力者」として実名を挙げた津田正夫・立命館大産業社会学部教授(文春記事の「F教授」)が証人になるかどうかも注目される。

 津田氏は元NHKディレクターで「市民メディア」を提唱している。多くのメディア研究者によると、渡辺教授は「週刊新潮」にAV上映のネタを持ち込んだのは浅野教授だと思い込み、研究者、学生や知人にメールや文書で「浅野教授が週刊新潮を使って私を狙い打ちした」と言いふらしている。津田教授も、自ら確認せずにそれを信じ込んで、文春取材に応じた可能性もある。

 文春代理人の喜田村弁護士が渡辺教授らを証人申請するかどうか。次回以降の裁判の行方が非常に注目される。次回期日は十月二十五日(水)の午後四時半から。ラウンドテーブルの場所は、当日書記官室で分かる。一般傍聴も可能。是非ご参加をお願いしたい。

(三津奈悟)
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