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『救援』第444号 2006年4月10日発行
第1回口頭弁論に文春側代理人出廷せず ・・・浅野教授文春裁判

 「週刊文春」の事実無根の記事によって名誉を毀損されたとして、同志社大学の浅野健一教授が株式会社文藝春秋(東京都千代田区)などに対して損害賠償などを求めた訴訟の第一回口頭弁論が三月二十二日、京都地裁(中村哲裁判長)で開かれた。浅野氏の裁判を支援する市民、学生ら二十数人が傍聴し、法廷はほぼ満席となった。

 週刊文春は昨年十一月二十四日号で《「人権擁護派」浅野健一同志社大教授 「学内セクハラ」を被害者が告発!》と題した記事を掲載した。これに対し、浅野氏は同社と週刊文春の鈴木洋嗣編集長ら計四者に、一億一千万円の損害賠償支払い、及び同誌への謝罪広告掲載、全国紙広告欄での謝罪文掲載を求めている。

 この日の口頭弁論では、原告側は浅野氏と若松芳也、堀和幸、小原健司弁護士が出席したのに対し、文春側代理人の喜田村洋一、林陽子、藤原家康の三弁護士は全員欠席した。

 中村裁判長は、被告側が事前に提出していた答弁書を読み上げたことにする「陳述擬制」扱いとし、被告側に対して次回口頭弁論までに抗弁書を出すよう求めた。この後、第二回の口頭弁論を五月十日と決めただけで閉廷した。

 文春側答弁書(三月二十二日付)は、原告が文春記事によって損害を受けたとする指摘に対して「いずれも不知ないし争う」とした。また「記事には公共性・公益性がある」「記事の内容は真実。少なくとも真実と信じるについて相当の理由を有していた」と主張。求釈明では、A子さん・C子さんに関する記載に対する原告の指摘には争う構えをほとんど見せず、浅野氏がD氏に脅迫まがいのメールを送ったかどうかなどを質しているだけだ。

 D氏は男性であり、そもそも「セクハラ」は成立しない。また、答弁書が取り上げたメールや電話は〇五年六月前後の通信で、D氏がB教授の工作員として浅野氏を誹謗中傷し、複数の院生を脅迫していたことを浅野氏が注意したものだ。A子さん・D氏が同志社大学セクシュアル・ハラスメント防止に関する委員会(以下、セクハラ委)に申し立てをしたのは〇四年一月であり、従って、セクハラ委では調査対象に入っていない。

 さらに、アカハラを含むキャンパス・ハラスメントがあったかどうかを争点とするとしても、記事の大見出しで「学内セクハラを被害者が告発」としており、全体としての整合性がとれなくなる。

 原告代理人の三弁護士は、傍聴した支援者に対して、「被告側の答弁書はジャブ程度。四月末ごろまでに文春側の抗弁書が出る。それに対するこちらの反論など本格的な論戦は、第三回口頭弁論がある六、七月頃からになるだろう。多くの方々からアドバイスをいただきたい」と述べた。 

 民事裁判の場合、第一回期日は裁判所と原告だけで決めるため、欠席は認められる。しかし浅野氏は、「私に関することが大学内の委員会で審理されている事実に『公共性、公益性』があると主張する大出版社の代理人三人が全く姿を見せないというのは極めて無責任だと思う。社会的責任を感じないのかと考える」と述べた。

 今回の期日は二月初旬に決まっており、一人も出られないということはあり得ない。これも喜田村弁護士の作戦ではないかという見方もあるが、いずれにせよ原告側をなめきった態度であることは間違いない。

 傍聴に駆けつけた鹿砦社社長の松岡利康氏=名誉毀損刑事事件で公判中=は、「奇しくも私と浅野教授両方が裁判闘争を抱えることになったが、表現の自由という点で、共闘していきたい。浅野教授には是非とも頑張っていただきたい」と語った。

 
裁判報告集会を開催

 同日夜に開かれた、「浅野教授の文春裁判を支援する会」主催の報告集会では、「文春の意図は浅野さんの革新的な発言に対する言論封じだ。この裁判は、セクハラの事実がないという反証をきっちりすることと、文春側の政治的意図を暴露することの二本立てで進めることが大切と思う」「今回の事件には、大学の問題という側面がある。同じ大学の教授が文春という人権侵害メディアを使って、浅野教授を攻撃したことは明白だ。そのような教授が教育を行えるのかという問題、その教授が行ったことを問題にしない大学当局の問題もある」などの意見が出された。また、「支援する会」の山口正紀氏(「人権と報道・連絡会」世話人)は、以下のように記事を分析した。

 《記事に出てくる登場人物は全部で八人だが、全員匿名。とりわけ「同志社関係者」「教員」「ある教授」は、存在するかどうかさえわからない正体不明の人物たちだ。このような正体不明者に、記事のポイントとなる重要な「証言」をさせるのが文春の常套手段。記事の文脈を追うと、この正体不明の三人はB教授と同一人物である可能性が非常に高い。すると、記事全体の骨格をなしているのは、B教授の発言ということが見えてくる。ただ、この三人の発言をすべて「B教授はこう語った」と書くと、B教授の話で記事を作った構造がばれてしまうため、別の表現でごまかしたのだろう。B教授が「メディア研究の専門家」なら、自分の立場を明らかにせず相手を実名で非難する報道の仕方が、報道倫理に真っ向から反することがよく分かっているはず。B教授を中心にA子・Dがチームを作って浅野攻撃をし、それにF・Gらが加わったというのが、記事から見えてくる全体的な構図だ》

 浅野氏によると、同志社大学セクハラ委は、被申立人(浅野氏)の聴取(二回)を昨年十二月に終えた。セクハラ委は二回目の聴取記録調書を三月中旬に浅野氏に渡した。浅野氏に対する調査は新年度にも持ち越された。同志社大学教員であるA子さんとD氏はセクハラ委で得た情報を文春に提供した。ルール違反だ。二人による荒唐無稽な「申し立て」を二年三ヵ月以上も審理≠キるセクハラ委の責任も重大だ。委員会の認定内容が文春裁判に大きな影響を与えるだけに、セクハラ委で「シロ」を勝ち取ることが、裁判でも勝訴する大きな力となる。多くの人たちの支援をお願いしたい。

 《連絡先》【京都】〒六〇四―〇九七一 京都市中京区富小路通丸太町下ル富友ビル三階 堀和幸法律事務所「浅野教授の文春裁判を支援する会」
 on-sk@hotmail.co.jp  ファクス〇七五―二三一―五七五二

 (三津奈悟〈みつな・さとる〉)
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