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京都地裁が浅野教授の「地位保全仮処分」申立てを却下(5月13日)

 浅野健一・同志社大学大学院社会学研究科メディア学専攻博士課程教授が2013年12月27日、京都地裁に申し立てた「従業員地位保全等仮処分命令」について、京都地裁第6民事部(堀内照美裁判官)は5月13日付で「本件申立てを却下する」と決定、14日、浅野さんの代理人に決定書が交付された。

 この決定を不服とする場合、5月28日までに大阪高裁に即時抗告できたが、浅野さんは弁護団、支援会と協議の結果、仮処分申立の後の本年4月3日に起こした本裁判の「従業員地位確認等請求訴訟」に集中するため、即時抗告を見送った。

  この申立ては、「同志社大学大学院社会学研究科メディア学専攻教授として勤務していた債権者(浅野さん)が、定年が延長されなかったことは債務者(学校法人同志社)による債権者の解雇処分又は解雇に準ずる処分であり、この処分には合理的な理由がない」として、仮の地位保全と賃金の支払いを求めたもの(その後、浅野さんは本裁判の「従業員地位確認等請求訴訟」を京都地裁に起こしている)。

 申立てに対し、大学側は1月30日付答弁書で「被保全権利、保全の必要性のいずれも認められない」と却下を求めた。第1回審尋は2月3日に開かれ、大島眞一裁判官(3月末に転勤)が双方の書面提出を確認。浅野さんの代理人が2月26日、大学側の答弁書に対する反論書を出した。大学側は3月1日に新たな書面を提出、浅野さんの名誉を毀損した「メディア学専攻」作成文書(2013年10月30日)を正当な審議資料と主張し、浅野ゼミの学生たちが定年延長の要望書を出したことについて、「自分の雇用問題で学生を巻き込んだ」などと非難した。

 第2回審尋は3月2日に行われ、浅野さんは「新年度を間近に控えている」として早期決定を求めたが、大島裁判官は転勤を理由に「早期決定は無理」と述べ、3回目の審尋を4月に行うと決めた。この結果、浅野さんは4月から大学院と学部で講義・ゼミ指導を行うことが不可能となった。大島裁判官は「非常に難しい事案。そう簡単に結論を出せない」と述べたが、「新年度、教壇に立てるかどうか」を争う事態の深刻さは理解されなかったようだ。

 第3回審尋は4月11日に開かれ、大島裁判官に代わった堀内照美裁判官のもとで審理は終結、5月13日に「申立て却下」の決定が出された。

 浅野さんは申立てで、地位保全を求める理由として、①新年度開始までに地位を確認できなければ、学生らの研究に多大な支障を来す②定年が延長されないと院生、学生を指導することができなくなり、研究活動に損害、精神的苦痛が生じる③その結果、大学教授としての信頼、信用が著しく損なわれる――と主張した。

 京都地裁決定は、「賃金の支払い」について、これまでの賃金と退職金の支給予定などから「仮払いを必要とする事情があるとは認められない」とした。

 「仮の地位保全」については、①院生・学生らに生じる不都合が、債権者に生じる著しい損害又は急迫の危険を避けるための保全の必要性には当たらない②院生・学生を指導できなければ、債権者の研究が不可能になるとまでは認められない③定年を延長しないと信頼・信用が損なわれると主張するが、後日、本案訴訟の結果により、債権者の主張が認められるところとなれば、十分に回復可能――とした。
決定を読むと、浅野さんに対する定年延長妨害=事実上の解雇が、浅野さんはもちろん、浅野ゼミの院生・学生たちにどれほど重大な打撃を与えているかについて、非常に軽く見ているように思われる。あるいは、堀内裁判官は前任裁判官から引き継いだものの「すでに新学期が始まっているのだから、仮処分を命じても仕方がない」と考えたのか。

 ただ、決定の中に、「後日、本案訴訟の結果により、債権者の主張が認められるところとなれば」という記述がある。却下決定でこの種の記述は珍しい。浅野さんはこれを受けて「本訴で頑張ります」と決意を新たにしている。

 仮処分の審理は迅速に行われるが、半年近くも時間をかけたのは、同志社大学の浅野さんに対する定年延長拒否のやり方に大きな問題があると裁判所が認識しているとみることもできる。ある同志社大学の教員は「却下決定は、大学のやったことに関し、まったく内容に踏み込んでない。仮処分がそのようなものであることは知人の弁護士なども聞いている。仮処分の決定に関係なく、本訴で争わなければならないので、頑張ってください」と話している。

 本訴の次回期日は6月18日(水)午前10時から京都地裁208号法廷で開かれる。多くの支援者の傍聴・支援を訴えます。