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2009年2月控訴審結審報告
大阪高裁・松本裁判長が職権で和解勧告
文春訴訟・控訴審が結審、判決日を5月15日に設定、和解協議へ |
2009年2月20日 |
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●原告・被告が最終準備書面を提出し、控訴審が結審
浅野健一・同志社大学教授が「週刊文春」記事を名誉毀損で訴えた損害賠償訴訟の控訴審・第5回口頭弁論が2月13日(金)午前11時から、大阪高裁別館7階72号法廷(第9民事部、松本哲泓裁判長)で開かれ、これで控訴審の審理が結審しました。
この日、法廷には原告の浅野教授、代理人の若松芳也、堀和幸、小原健司、池田良太の弁護士4人、被告代理人の喜田村洋一弁護士が出廷。傍聴席には、浅野教授の支援者8人が駆けつけ、被告側では、文春記事の「Dさん」=中谷聡氏がただ一人顔を見せました。
冒頭、松本裁判長が前回12月の期日時点で届いていなかった同志社大学への裁判所の調査嘱託(同大セクハラ委員会に、C子による申立はあったか、あったとすれば委員会での処理状況、結論はどうであったかなど、本件関連の申立・処理状況の調査・回答を求めたもの)について、同大から「回答できない」との回答があった旨を報告。続いて、前回期日後に一審原告・被告双方が提出した書面・証拠の確認が行われました。
一審原告側が提出したのは、最終準備書面5とそれを補充する準備書面6、浅野教授の控訴審の第4次陳述書を含む甲第90~96号証。原告代理人の堀和幸弁護士は、準備書面6について、口頭で趣旨を補足説明しました。一方、被告側は最終準備書面と乙第59号証(立命館大学産業社会学部・岡田まり教授=同志社大学社会福祉学専攻出身=の第2陳述書)を提出しました。
証拠確認に続き、松本裁判長が「本件はこれで審理を終結したいと思います」と述べると、被告側代理人の喜田村弁護士は「準備書面6と原告第4次陳述書はまだ見ていないので、これで結審されるなら、陳述書は証拠採用しないでほしい」と注文。これに対し、裁判長は「陳述書の内容は一審原告の意見が主なので、意見や反論があれば、審理終結後でも書面を出してもらってもけっこうです」と述べ、喜田村弁護士は了承しました。
この後、松本裁判長はあらためて審理の終結を告げ、判決言い渡しの期日を「5月15日午後1時15分」と指定しましたが、裁判長は続けて「当裁判所としては、職権で和解を勧告したい。本件は意見の対立があり、双方の主張を考えると、和解には異論もあると思いますが、和解の意思があるかどうかも含め、和解協議の期日を決めたい。和解が不調に終わった場合は、5月15日に判決を言い渡すことになります」と述べました。
続いて和解協議の日程を調整した結果、第1回目期日は3月16日午後1時30分から、和解交渉は松本裁判長、白石研二裁判官(右陪席)の2人が担当することになりました。
この中で、浅野教授が和解協議の進め方について「裁判所から和解提案は出されるのですか」と質問しました。これに対し、松本裁判長は「今は具体的に提案を出す段階ではありません。まずは双方の意見をうかがって、和解を進めることが可能ならば、その方向を示したい。この種の事案の和解は、当事者本人の方が納得できるものでなければなりません。そういう和解ができるかどうか、探ろうということです」と説明しました。
具体的には、双方が3月16日の協議期日までに和解に関する基本的な方針を決め、裁判所が双方の意見を聞いたうえで、和解の方向を提示、それで双方が合意できれば和解、合意できなければ5月15日に判決、ということになります。
●弁論後、支援者への報告会
弁論終了後、弁護団は和解勧告に対する対応について、日をあらためて協議することにし、その日程を決めました。この中で、支援者から「この裁判は一審から控訴審まで双方の主張が全面的に対立しており、きょうの裁判所の和解提案は唐突な感じがしたが、これはどうとらえればよいのか」と質問が出されました。これについて、弁護団は「裁判所は最近、民事訴訟ではなるべく和解をという訴訟指揮が多い。それで、本件でもとにかく和解の可能性を探ってみようということだろう」と説明しました。
高裁には、「双方の控訴棄却」という「無難な判決」をいきなり出す選択肢もありましたが、そうせずに和解を勧告しました。その理由として、一審原告の敗訴部分(E子さんと中谷聡氏=Dさんの認定部分と、謝罪広告の掲載)について、何らかの見直しが必要と考えている可能性があります。E子ケースについて、津田正夫・立命館大学産業社会学部教授(元NHKディレクター)を証人尋問した結果と、原告側が提出した多くの書証を考慮し、「なんらかの和解案を示した上で、それがまとまればいいが、決裂すれば判決」という柔軟な考え方をとったとも考えられます。
この後、支援会は同別館1階サロンで報告会を開きました。
山口正紀・支援会事務局長が、この日の審理の概要を報告。裁判所の和解勧告については、「浅野さんと弁護団の努力で、一審判決のうち原告として控訴した部分について、控訴審で新たに重要な事実・問題点が示され、高裁として何らかの見直しが必要と考えたのではないか。被告側の喜田村弁護士は、一審でほぼ全面敗訴し、控訴したのに、控訴審では立証はほとんど何もやっていない。津田氏が証人尋問で事実に反することをいっぱい言ったことが、高裁の裁判官の目にもはっきりしたと思う。和解については、原告側として、記事はすべて虚偽だったことを確認し、その謝罪広告掲載を求める、というこの訴訟の基本的なラインをきっちり固めたうえで、裁判所の意向を確かめながら、今後の方向性を探ることが必要だと思う」と話しました。
また、浅野教授は「津田尋問で、E子に関する一審認定の誤り、特に『津田氏は渡辺教授とは違って中立・公正な立場の人間であり、E子さんも原告に敵意を持っておらずウソをつく必然性はない』という判断が全く誤っていることが明らかになったので、和解の場を提案したのではないか。津田証人尋問は成功だった。和解協議の過程で、高裁がどういう判決を書こうとしているかが分かってくると思う。和解協議では、裁判所に誠意を見せて協力していきたい」と話しました。
いずれにしても、控訴審の審理はこれで終結し、判決の日程も一応5月15日と決まりました。和解協議の結果については、方向が決まり次第、HPで報告します。支援者の皆様には引き続き、この裁判に注目していただくようお願いします。(支援会事務局)
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