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■文春裁判速報・進捗
速 報 SUBJECT 掲載日
津田正夫・立命館大学教授を証人採用
――文春裁判・控訴審(大阪高裁)第3回口頭弁論
2008年11月11日

●同志社大学、立命館大学への調査嘱託を決定

 浅野健一教授が「週刊文春」記事を名誉毀損で訴えた損害賠償訴訟の控訴審・第3回口頭弁論が、10月30日午後4時から大阪高等裁判所(第9民事部ハロ係)別館72号法廷で開かれた。第1回口頭弁論後、控訴審裁判長が中路義彦判事から松本哲泓(てつおう)判事に交代し、初めての実質的な審理となった。
 72号法廷には浅野教授と代理人弁護士6人のうち、若松芳也、堀和幸、小原健司、池田良太の4人が出廷したほか、浅野教授の支援者8人が傍聴に駆けつけた。一方、文春側は代理人の喜田村洋一弁護士1人。第2回弁論で姿を見せた文春記事の「ネタ元」中谷聡氏、三井愛子氏、文春契約記者、法務担当者は1人も来なかった
 この日の審理は、原告側が証拠申出書で申請した証人5人の採用、同志社大学と立命館大学のセクハラ委員会に対する調査嘱託について、裁判所側がどのような判断を示すかが最大のポイントだった。近年、民事訴訟も「裁判迅速化」の流れで、控訴審は実質審理なしの「いきなり結審」も増えていることから、支援会では松本裁判長の訴訟指揮・判断を、今後の審理の行方を占うものとして注目していた。
 原告側が申請していた証人(カッコ内はその立証趣旨)は、①山田悦子さん(中谷氏への「アカハラ」の不存在を裏付ける証言)②森類臣さん(「E子さん」記述の虚偽を裏付ける証言)③津田正夫・立命館大学教授(E子への「セクハラ」行為は事実ではないこと)④鈴木直人・同志社大学セクハラ委員会元委員長(C子による委員会への申立はなく、正式案件となっていないこと)⑤生田勝義・立命館大学セクハラ委員会元委員長(E子による委員会に申立はなく、正式案件となっていないこと)の5人。
 また、調査嘱託は、同志社大学と立命館大学に対し、それぞれのセクハラ委員会における本件関連の申立・処理状況などの調査・回答を求めるもの。
 嘱託事項は、同志社大学には、①セクハラ委に、C子による申立はあったか②あったとすれば委員会での処理状況、結論はどうであったか、など8点。立命館大学には、①セクハラ委に、本件記事に記載されているE子による申立はあったか②あったとすれば、委員会での処理状況、結論などはどうであったか、の2点。
 これについて、松本裁判長は、①控訴審裁判所として、同志社大学と立命館大学のセクハラ委員会に対し、申立・事情聴取の有無について調査嘱託を行う②証人として津田正夫・立命館大学産業社会学部教授を採用する③他の証人は必要があると思えないので採用しない――との判断を示した。
 両大学への調査嘱託に関し、原告は多岐にわたる調査項目を挙げていたが、松本裁判長は「裁判所としては、セクハラ委への申立はあったか否か、あったとすれば誰からの申立なのか、事情聴取の有無、セクハラ委の組織概要など客観的側面だけを聞く。審理の内容、結論まで聞くつもりはない。原告側で調査項目を絞って修正案を出してほしい。それをもとに調査事項を決定する。もし出されないのであれば、裁判所として調査事項を考える」と述べた。これに対して原告代理人は、「調査項目を検討し、整理したい」と答えた。
 また、津田教授の証人尋問については、被告側の喜田村代理人が「一審でこちらから証人申請していたという経緯もあり、採用されるなら当方が主尋問をしたい」と述べた。裁判所はこれを認め、被告文春側の主尋問30分、原告側の反対尋問60分と決まった。
 喜田村弁護士は「津田教授の都合もあるので変更もあり得るということで期日を決めてほしい」と要望。この日はとりあえず、次回期日を12月2日(火)午後1時半とし、津田教授が証人として出廷できるかどうか、被告側で交渉したうえで裁判所に通知することになった。
 11月10日、高裁の担当書記官が11月10日に喜田村弁護士に確かめたところ、喜田村弁護士は「津田教授が予定された期日(12月2日午後1時半)に出廷する」と言明したという。これにより、次回期日は12月2日(火)午後1時半から大阪高等裁判所(第9民事部ハロ係)別館72号法廷に確定した。

●原告側が準備書面、意見書などを提出

 この日までに原告側は、文春の「実名セクハラ報道」が、匿名が一般的なマスメディアのセクハラ報道の中でいかに突出した異常なものであるかを指摘し、文春「実名セクハラ報道」には公共性も公益性もないと指摘したうえで、その被害回復には、損害賠償額の大幅引き上げと謝罪広告が不可欠と主張する準備書面(2)を新たに提出した。
 さらに、立命館大学大学院法務研究科の和田真一教授による鑑定的な意見書も提出した。意見書は「原判決が、原告に対する被告らによる重大な名誉毀損の成立を認めながら、謝罪広告を必要とするまで認めることはできないと判断していることは、原判決が名誉毀損であると認定した事実関係を前提としてもなお不当である」として、損害賠償だけでなく謝罪広告の掲載が名誉回復には絶対必要であると指摘、文春誌上だけでなく、文春の新聞宣伝広告にも謝罪広告を掲載する必要性を述べた。
 このほか、原告側は、浅野教授による控訴審第2陳述書、「E子さん」記述の虚偽をその場にいた関係者の一人として指摘した森類臣さんの陳述書、人権と報道・連絡会の大住良太さんがネット上の報道被害の実態を明らかにした陳述書、大分・聖嶽訴訟で文春に謝罪記事掲載を命令した判決を勝ち取った賀川真さん、松本サリン事件報道被害者・河野義行さん、甲山事件冤罪報道被害者・山田悦子さんの意見書を提出した。
 一方、文春側は、「C子さんから送られてきた三井愛子氏宛メールの写し」と称する「乙54号証」を提出した。C子さんが03年9月ごろ浅野教授を避けていたかのような文言が記されたものだが、これについて原告代理人は弁論冒頭、「内容・体裁ともにきわめて疑問が多い。これまでの審理で出さなかったものを、なぜ今ごろ提出するのか、不自然で不可解。捏造文書である疑いが濃厚だ」との見解を表明した。浅野教授も意見表明を求めたが、松本裁判長は「文書で出してください」と述べた。
 この「メール」なるもの(本文9行)は03年9月29日零時17分に送信されたというが、浅野教授によると、「メールの届いたという03年9月末、C子さんは渡辺氏、三井氏を怖がっていて、私とは連絡がいつでもできる状態だった。私とC子さんが普通に話をしているところを多くの院生が目撃している」という。「乙54号証」は弁論前日に突如提出されたもので、誰がメールのコピーなるものを喜田村弁護士に提出したかも不明。原告側はあらためて内容・文書形式などを調べ、反論していく方針。

●弁論終了後、支援者への報告集会

 審理は約20分で終わり、その後、裁判所内で報告集会が開かれた。
 代理人の小原健司弁護士が、この日の審理の概要・意味を説明。裁判所が証人として津田教授を採用し、その他を不採用として点について、「他の証人は陳述書などで十分と判断したのだろう」と述べ、「乙54号証」については「昨日入手したばかりなので、詳しくは書面で全面的に反論するが、このメールが存在したとは到底思えない」と話した。
 また、浅野教授は、この日の審理について、次のような感想を述べた。
《大阪高裁が、同志社大学キャンパス・ハラスメント防止に関する委員会(元セクハラ委員会)に対し、調査嘱託をすることを決めたのは評価できる。文春裁判を理由に「委員会としても不本意」と言いながら、「審議を中断」「静観」を決め込んでいる委員会は困惑するだろう。立命館大学セクハラ委員会に対しても、E子さんの件で調査嘱託を決めたには大きな前進だと思う。ただ、嘱託調査、津田教授の証人尋問が決まったといっても、それらがプラスに働くかマイナスになるかは、これからの闘いにかかっていると思う。裁判官の心証を、こちら側に引き付けるための努力を続けたい。同志社大学も立命館大学も記録は残しているはずだ。C子さんが申し立てをしたかどうかについて、「していない」という回答はできるだろう。鈴木直人セクハラ委員長(当時)は、若松代理人も同席した私への調査(聴取)の際、「浅野先生が被申立人になっているのは、三井、中谷両氏の事案だけ」と何度も公言している。裁判所の調査嘱託に強制力はないが、調査項目を絞っての依頼の場合、回答する社会的責任が大学にはあるだろう》
 この日の訴訟指揮だけでは、今後の審理がどの方向に進むか判断し難いが、少なくとも一審が「E子さん」ケースを「セクハラ」があったかのように認定した部分について、大阪高裁として、津田教授の証人尋問、大学の嘱託調査を通じて詳しく吟味する方針を示したものと言える。
 次回期日は12月2日(火)午後1時半から大阪高等裁判所(第9民事部ハロ係)別館72号法廷にて行われる。控訴審も山場を迎える。支援者の皆様の傍聴をお願いしたい。

(支援会事務局)
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